職業とは……
キャンプ地を出発した俺は、オークとゴブリン達が待ち受ける地へと向かった。
敵地には、一時間しない程で到着し、戦いを前にして瞑想に耽る。
わずか数分の間で、移動による疲れもなくなり、俺は覚醒する。
「うん、感じる。 魔術を使う人たちは、こんな感じに見えて居るのか……」
俺は深く暗い森の中で、目を凝らして辺りを覗う。
ぼんやりと何かを発し続ける木々や草、処々から流れ出る妖しい雰囲気を肌から感じ、自身の感覚が過敏に反応する。
なんと表現すべきか悩むが、これが魔法使いがもつ『魔力感知』という職能か。
この世のあらゆる場所と、生命には何かしらのエネルギーが流れており、それがこの世界を支えている『力』と云われている。
そして、その『マナ、魔力、魔素』と様々ないい方があれど、この世界を駆け巡る『力』を蝕む存在が、この世に蔓延る『魔獣』と云われた、モンスターたちである。
「なるほど、これが魔界といわれる所以なのか」
ぴりぴりと肌を蝕む感覚は、頭を切り替えればあまり気にならないとはいえ、けして良いものではないと認識できる。
ハンター達であっても、一度この森に入れば不快を感じ、弱き者であれば、たちどころに精神を病むと云われている場所である。
まあ、俺が来たときもあまり良い場所とは感じなかったが、ここまで汚染が進んでいると分かれば、皆が心配する気持ちも分かる気がする。
「よし、無理はしない。 だが、ここからが戦いの始まりだ」
俺は改めて、この世界での生き方を認識し、与えられた力を以て生き抜こうと覚悟した。
◇◆◇
ゴブリンたちのテリトリーで、火の手があがる。
『ギャアァ、ゴアァ』という、何度も悲鳴が森の中を木霊した。
俺は、魔力感知で索敵をしつつ、ゴブリンやオークたちを焼き払っていく。
数が多ければ、催涙ガスや手榴弾を使い、数が少ない時にはボウガンで撃ち抜き、反撃を受けよう時には容赦なく、魔法で焼き払った。
倒した後は勿論、魔石を回収して、残る遺体をまとめて焼却する。
なんでも残された遺体は、他の動植物にも影響を及ぼしているらしく、年々モンスターのテリトリーが増えていくとの事である。
最初は、火炎瓶でも燃やしていたが、どうしても燃やし尽くせない様子であった。
だが魔法を使い焼いてみたところ、あっけなく焼却に成功する。
そうか、魔力の炎であれば燃やし尽くせるのか、という結論を得てからは、火炎瓶の使い道はなくなっていった。
そんな戦いを続け、あっという間にレベルが上昇。 持ち込んだアイテムは、回復系を除きすでに無くなっている。
前島 達也(23)
HP 198/198
MP 235/235
職業 魔法使いLv18
技能 杖術Lv2
魔法 攻撃魔術Lv6、弱体化魔術Lv2、防護魔術Lv2
使用可能魔法 ファイア、ファイアボール、ファイアウォール、ウォーターショット、アクアウォール、ストーンバレット、ストーンウォール、ポイズンミスト、ダークミスト
魔法使いの戦い方にも慣れ、防御や弱体系の魔法も獲得し、ソロでも問題なくオークやゴブリンの集団を、あしらうまでに成長を遂げた。
付け加えていうと、戦闘時の立ち回りは戦士系の経験を活かしているのもあり、回避や隠密行動においても、狩人や盗賊などの斥候系技能も地味に役立ち、これまでに成長させてきたステータスが、多数の敵をも物ともしない力で圧倒しせしめた。
「魔法使いが、木々の合間を飛びまわるとか、おかしいよ。 殴ろうとして近寄ったのに、逆に殴られ焼かれるとか、たまらんだろう。 うん、ないな。 もう魔法使いではないよ、これは……」
チートな魔法使い、そんな感じのフレーズに居たたまれず、頭を横にふり思わず呟いた。
職業とはなんぞ? チートスキルという話は、学生時代の仲間内には聞いてはいたが、自分が育てた能力を使い、不正と断罪されるのであれば、この世界で生き抜くことは難しいと思う。
神に与えられた俺の力が、この世界の人達からして、異質なのは分かる。
チートスキルではない、職業で培ったステータスと経験は、己が努力して得た能力ともいえるのではと思うも、結果がこれである。
だが、これは生存を賭けた戦いである以上、チートな魔法使いでもありなのだと、俺はそう思うことにした。
「これが魔法使いだと問われれば、俺でも否定するがな! はっはっは」
開き直ると同時に、集めてきた死体の山をファイアウォールで囲い、すべてを焼き払った。
その後は、アイテムの補充や収穫物もたまってるのもあり、キャンプ地の荷物を整理したのちに、リユート村へと帰還する。




