ゴブリンたちの異変
今週も、よろしくお願いします。
鉱物資源を確保すべく、リユート村は動き出した。
俺は自身の装備を整え、ダンジョンを探して旅立つ。
工房は一時的に閉鎖にはなるが、鉱物資源が少ないのだから仕方がない。
今回の旅は、一週間ほどの予定であり、以前いた東の森からダンジョンの特定を目指す事にした。
ある日の早朝、大量の食料やアイテムをインベントリに収め、俺は村の東門から出発する事にした。
「それじゃあ、行ってきます。 後のことは、よろしくお願いしますね」
「はい、お任せ下さい。 タツヤさんも、どうかご無事でお帰り下さい」
俺の旅立ちを見送る為に、マリーさんを始め、村の皆が集まっている。
「ははは、いい加減あんちゃんを放してやれよ。 マリーは心配性だなあ」
「マリー殿、タツヤ殿も困っておいでですぞ」
「「「はははは……」」」
このやり取りは既に5回目であり、俺が離れようとすると、マリーさんが回り込み行く手を遮る行動を繰り返していた。
「だ、だって一週間も会えなくなるんですもの。 もう少しだけお側に……」
「あ、あのですね、マリアンヌさんには、お店と買取り所をお任せしたいので…… ちゃ、ちゃんと帰って来ますから」
泣きそうな表情で縋るマリーは、達也の袖を掴み放さない。
そんな彼女に説得の言葉を掛けるのだが、俯くと同時にその手を放した。
「絶対ですよ。 絶対、帰って来て下さいね」
「ははは! いい歳をしてても、マリーは乙女だったんだな」
「ドワイト、それを言ってはいかんぞ。 マリー殿は、これでも立派な淑女であるのだからな」
そんなこんなで、俺は無事に旅立つのだが、マリーさんがここまでの態度を示すとは思わぬ事であった。
去り際で、皆からからかわれるマリーさんは可愛かったが、ちょっと可愛そうにも感じた。
まあ商売の話をしてしてても、その好意には気付いてはいたが、年上の彼女とどう接すれば良いかは難しく、また商会の会頭という立場があるのもあってか、お互いに距離があった事も、こうなった要因かも知れない。
難しいな、俺にここまで好意を示してくれた女性は初めてだし、貧乏人の俺には縁のなかった話である。
◇◆◇
リユート村を出発した俺は、ダンジョンを探す為に、職業を盗賊へと設定する。
盗賊は、いわゆる斥候職であるが、狩人のレベルを上げている関係で【鷹の目】というスキルが使用可能となっていた。
【鷹の目】探知系レアスキル。
複数の職業で、探知系のスキルを経験した者だけが、獲得可能となる隠しスキル。
半径200メートルの気配を察知し、俯瞰による索敵を可能とさせる複合技。
また100メートル以内の敵には、投擲による攻撃の成功率が上昇する。
狩人の【気配察知】と、盗賊の【索敵】スキルのレベルが一定値たまった状態で発現したらしい。
スキルのレベル表記はないので、またあやつの手抜きによる可能性は高いが、性能は折り紙付きの様なので、文句は言うまい。
この索敵能力であれば、まず敵に遅れを取ることもなく、ダンジョンを探すことも可能だろうと予想した。
それに、今回のもうひとつ目的には、例のデカぶつゴブリンの所在も把握したいというのもあった。
恐らくだが、東の森からくるゴブリンの親玉であろうヤツが、ボス的な存在であるのは間違いないと踏んでいる。
そして、その配下であろうゴブリンたちが、定期的にリユート村へと流れて来るのも気になっていた。
もし、今後のリユート村の驚異となるのであれば、討伐するのも視野に含め、行きがけの駄賃に間引くことも必要かと考えている。
「よっしゃ! いっちょう行ってみますかね!」
以前みた、イノシシとヤツの戦いを思いだし身震いするも、あの時とは違い装備やレベルもあがり万全であると、己に活をいれて歩きだした。
◇◆◇
リユート村を出発してから、一日経過したころゴブリン達のテリトリーに到着した。
以前に活動してた河原へ、リユート村から半日という時間で到達し、そこで再度天幕を張りキャンプ地とした。
そして、その翌日から奴らのテリトリーに向かい、ゴブリン達の様子を確認する。
そこはかつて達也がレベル上げを繰り返し、ゴブリンたちとの死闘をした場所であり、巨躯のゴブリンを見かけた場所でもある。
だがそこは以前とは違い、まるで支配者が変わったが如く、ゴブリンとは違う巨躯のモンスターが群れを従えていた。
結論からいうと、ゴブリン達のテリトリーは一変しており、イノシシ顔の巨人がゴブリンたちを従えていたのである。
「おいおい、マジかよ。 あのデカぶつはどうした。 もしかして倒されたとか?」
俺は森の木に登り、鷹の目を使って、可能な限りの情報収集を開始する。




