変わり始める者たち
今週も、よろしくお願いします。
システムのバージョン1.02への更新は、リユート村の状況を一変させた。
そして、俺の計画もまた、いちから組み直すはめになってしまった。
「よーし、準備はいいか?」
「おう、いつでも行けるぞー」
「「「おおー!」」」
いま、数名のハンター達がチームを為して、森に向かって村から出発した。
この光景は、最近の村では日常と成りつつある。
前回の騒動により、俺の事を心配した村人たち。 そんな、彼らの日常に関する、ダンジョンの解放の知らせを放置する事もできず、村長さんとドワイトさんに打ち明ける事となった。
はっきり言って、すっげえ気まずい状況ではあったが、そこはそれ邪神とはいえ、この世界の神様なので、神のお告げがあったと言う事でごまかす事に成功したのであった。
そして、その神から突然のお告げにより、村中が大騒ぎとなり今に至る。
もう、あれから三カ月が過ぎた。
当初は、ダンジョンの発生という凶報にパニック状態になるも、村長さんやドワイトさんの指導により回避できた。
だが、そこからの『神の御使い説』はヤバかった。
何故、達也に神のお告げが降りたのか。
村の英雄は、やはり『神の御使い』ではないのか。
他にも、今までに無い技術を体現し、様々な恩恵(薬や食品、レシピ)を齎した人物故に、信仰に近い想いが『神の御子』として崇める人たちが続出した。
色々と自重をしなかった事が、ここに来て煩わしさをもたらす結果となってしまった。
このまま目的を達成すれば、村を出て行く予定も変えなければならない。
最悪、村を捨てる選択もあり得る。
それでは、今までの行為が無駄となり、せっかくの評価は悪評にしかならないだろう。
ひいては仕送りにも影響するかもしれない行為ゆえに、避けたいという思う自分が、それを後押しする。
そんな俺の胸中を察してか、村長さんとドワイトさんは、村人たちを宥める事に尽力してくれた。
俺の齎したものは徐々にだが、村人たちにも扱えるようになっているではないか。
また、ハンター達も成長し、北の森でイノシシを倒し、狩猟も成功しつつあるではないかと、実際を例に取り、なんとか村人たちを宥める事に成功した。
俺は、また村長さんとドワイトさんに借りができたなと思いつつ、ほっと胸をなでおろすのであった。
◇◆◇
この数カ月は、本当に忙しかった。
マリアンヌさんにもダンジョン対策の相談をしたり、ハンターの増員と鍛冶師、または薬師や錬金術師やらの紹介を頼んでみた。
本当は、僧侶や回復が見込める人を紹介して欲しかったのだが、どうやらその手の人達は大きな町で囲われて居るらしく、本人の同意があっても移動が禁止されているとの話であった。
なので現在の俺の職業は、狩人兼、盗賊兼、薬師兼、鍛冶師兼、錬金術師兼、僧侶という超絶ブラック企業戦士として働く事となった。
冗談はさておき、俺は自分の仕事をしよう。
朝一の仕事は鍛冶から始め、ハンターたちの武具の販売から修繕などを請負う。
マリアンヌさんからの紹介で、ここ二カ月で村のハンターは増えつつあった。
明るくなるかならないかくらいの時間帯から、ハンター達は俺の工房へとやってくる。
彼らは毎日森へと向かい活動をするので、その武具のメンテナンスは俺が請負っていた。
そして、必要とあらば回復の為のポーションを買ったり、保存食の補充をしたりするのである。
まあ、リユート村のお店が朝開いてないというのもあり、俺は基本的に早起きなので、早朝から活動するハンター達の相手をする事にした。
森での成果を工房に持ち込み、対価を手にする買取所も工房の隣りに開設されているので、ほぼ毎日ハンター達の世話をやく状況になっている。
怪我をしていれば回復をするし、肉が取れれば燻製なども請負っているし、薬草を持込めば回復アイテムへと加工も請負っていたりと、中々に忙しい毎日である。
なので、うちの工房は朝から晩まで、ハンターたちが出入りを繰り返す活動拠点となりつつあった。
「あんちゃん、いま帰ったぞ!」
「あ、お帰りなさい。 どうでした、今日の狩りは?」
お昼も終わり、午後の仕事に取り掛かろうといった時に、ゴロゴロと荷車をひく音と、馴染みのある親父さんの声に呼び止められた。
リユート村のハンター達のリーダー、ドワイトさんである。
「おう、今日もバッチリだったぜ。 ガハハハ」
「これはまた、立派なイノシシですね。 良い素材になりそうだ」
荷車の上には、立派な牙を生やした大イノシシが乗せられており、血抜き以外はそのままの状態を保っていた。
「はっはっは、そうだろそうだろ。 これもあんちゃんが拵えた薬のお陰だ。 あんがとな!」
「いえいえ、ドワイトさんとハンターさん達のお陰ですよ。 新鮮な肉や内蔵を、こうして入手出来ているのですから」
すっかり現役ハンターとして活動を再開したドワイトさんは嬉しそう笑い、イノシシの身体を叩きつつ感謝のこもった礼を返してくれた。
そう、こうやって定期的に納品されるイノシシの心臓や肝臓は、本来ならば現地で処分されるのが当たり前で、村まで運ぶには時間との勝負であり、中々に入手が困難なものである。
だが、俺がなる薬師では扱える代物ではないし、必要とされるレシピがない物でもあった。
しかし、それはあくまで薬師の事であり、その先にある錬金術師であれば扱える素材となった。
錬金術師のもつスキル『抽出』と『錬成』は、素材のもつ薬効や成分を取り出し、それらを結合させる能力であり、それらを液体や物体として変換させるのが、錬金術師の仕事であった。
錬金術で作れる物は、様々である。
薬品や素材、金属や液体、化合物と爆薬といった具合いで、現代の技術や知識があれば作れない物はないのでは? という位の、膨大なレシピが存在していた。
はっきり言うと『チートやん!』と、錬金術師の解放後に叫んでいたのは、言うまでもない程であった。
その錬金術レシピのひとつに、リフレッシュ薬なるものを見つけ、ドワイトさんにその薬を試して貰ったところ、体中を蝕んでいた痛みや悪い症状を改善し、その翌日には元気はつらつとばかりに森へと向かい、イノシシを一頭担いで持ち帰ってくるという珍事が発生した。
リフレッシュ薬(疲労回復薬)
身体の不調や精神不良を一新し、その身体を活性化させ、精神を調える薬品。
イノシシの臓物は、そのリフレッシュ薬の主な成分を多く含み、北の森でたくさんの栄養を摂取した事で、上質な素材へと変質した物でもあった。
その後は、ドワイトさんは現役に復帰し、ハンター達を引き連れては、北の森でイノシシを狩って村へと持ち帰り、その内蔵をも提供してくれるまでになった。
そのお陰で、村中の人達にもリフレッシュ薬が出回り、今ではお年寄りたちも、明るく元気に過ごせるようになって、村は活気づいていた。
「おお! これはまた立派なもんじゃのう。 ドワイトでかしたぞ。 儂らも、まだまだ頑張れるからのう! その調子で頼んだぞ!」
「おう! クソじじい共も、頑張れる範囲で長生きしろよ! ガハハハ」
お年寄りたちは杖を振り上げ笑いあい、それに返すドワイトさんの激励は村中に木霊する。
爺さん婆さん、おっさんや若者たちがイノシシを取囲み、笑い声で溢れる光景。 俺はそれを眺めて事態を傍観する。
俺は、この村が大好きである。
全員ではないが、悪態をつかれても、お互いにそれぞれを理解し、笑い声で話しあえる光景は、何時までも見ていたいと思わせる魅力に溢れていた。
「ハイハイハイ! そろそろ解体するわよ! お手伝いする人以外は帰ってちょうだい!」
そして、そこに現れる女性は現場を取り仕切り、イノシシの解体作業へと取り掛かるのであった。
気付けば三千文字でした。(笑
肺炎ではないですが、風邪だったらしく体が痛いです。
皆さんも、体調管理につとめお気を付け下さい。




