達也の告白
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北の森での活動が三週間目に入り、様々な職業のレベルが上った。
剣士はレベル18、薬師はレベル20、New道具職人レベル10、New鍛冶師レベル3、木工細工師レベル16、革細工師レベル8、New調理士レベル12と、道具と施設が充実した事で、新たな職業も解放されたのであった。
また、イノシシの狩猟も進み、ハンターの防具も増えた事で、数名が荷物持ちとして参加し始めている。
そんな感じで、作られる物も増えだし、新たな販売品の試作が始まった頃、マリー商会はリユート村に到着する。
◇◆◇
「タツヤさん、こんにちは」
「こんにちは、マリアンヌさん。 お久しぶりですね」
約ひと月ぶりのリユート村に、何時ものように挨拶を交わすマリーがいた。
ただ、今回に限っては真っ先に達也へと声を掛けるマリーである。
マリーのその顔は、真っ直ぐに達也に向いており、にこやかな笑顔であった。
「お久しぶりです。 お元気でしたか?」
「え? あ、はい。 何とか元気にやってますよ」
なんだ? ずいぶん上機嫌みたいだけど、いい事でもあったのかな?
「そうですか、それは良かったです。 私、タツヤさんが居な…… いえ、何かあったら大変と思って。 でも、お顔を拝見できて安心しました」
マリーは、何やらいい掛けて顔色を変えたが、口元をおさえた後言い直した顔は再び笑顔となり、ホッとした態度で達也に向き直る。
「はは、マリアンヌさんとの約束も果たさないといけませんし、まだこの村のやっかいになるつもりなので、安心して下さい」
そんな会話のなか、村長さんとドワイトさんが顔をだし、達也に語りかけてきた。
「タツヤ殿、貴方をやっかいと思う者は、この村には居りませんぞ。 いくらでも、ご滞在下さい」
「おう、やっかいどころか、村の稼ぎ頭なんだ。 滞在なんてまどろっこしいのをやめて、このまま住んじまえよ。 ガハハハハ!」
実際、達也の工房は大きく変わっており、その敷地には達也の家も建っているので、住んでいるともいえた。
「そうですね。 ここに住んで過ごすのもいいのですが、自分はしたい事があるので、ずっとここに住むかは難しいです」
俺には、神との契約がある。
それをやり遂げるかは別として、この世界で活動を広げ、実績をつくり、残してきた家族の役に立ちたいと思っている。
父さんは安月給の契約社員で、母さんも内職やパートタイムで働いてはいたが、二人の年収をあわせても、暮らし向きは良いものではなかった。
俺が、就職を選択した理由も、両親への恩返しと妹弟の生活支援をしたいが為であった。
高校無償化はされてはいても、その学校で使う筆記用具やノートまでは無償にはならないし、昼食や就学旅行もただではないのだ。
そんな俺の学生時代の思い出は、ろくな物はない。 その大半は貧乏であるからと、気を遣わせたり、それをからかう者もいて、悔しい事がたくさんあった。
それは、妹弟たちも同様であるので、少しでも改善しなければならないと思っている。
そんな家族へ仕送りが出来る。 もとの世界で死んでしまった以上、神との契約はやり残して来たことを、やり遂げるチャンスなのだ。
だから少しでも前に進み、実績を積んでいく事を考えての選択であった。
「非常に残念ですが、タツヤ殿の意思を尊重致します。 もし気が変わって、この村に住んで頂けるのでしたら、住民たちもそれを歓迎するでしょう」
「そうだな。 あんちゃんにはやるべき事があるんだよな。 それが終わったら、この村に来てくれる事を、オレたちは待っているぜ」
「えっ!? えーっ!!」
村長さんには、残してきた家族を探すと伝えてはある。
ドワイトさんも、その話を村長さんから聞いていたらしく、二人は俺の話しに同意して貰えていた。
だが、マリアンヌさんにとって、その話は知らぬ事であって、まだこの村に到着したばかりの彼女はその話しを聞かされ、衝撃のあまり声をあげてしまった。
「ちょっ、ちょっと待って下さい。 タツヤさんは、この村から居なくなるのですか?」
「ん? まあ、いずれですが、出て行く予定です。 家族たちを探すつもりですので」
俺の答えを聞いたマリアンヌさんは、驚きのあまりその場で固まり、暫くの間ぽかーんとしていた。
◇◆◇
マリーは、達也から聞かされた事で落ち込んでいた。
ここひと月の間、達也との商いの事を考えない日はなかった。
それは、今日再会する前であっても、そうだった。
なのに、達也がリユート村から居なくなると知って、破産するよりも重苦しい気分へとなってしまった。
達也が、すぐに居なくはならないというのは分かる。 だがこのままなら、自分の前から居なくなってしまうのは確実なのだと思った。
「なんとしても、タツヤさんとの関わりを強くしないとダメよ」
マリーは、達也からの注文されていた品物が、工房へと納入される光景を見つつ、何度も同じ呟きを囁いていた。
「あら? あれは何かしら……」
荷馬車から積荷の素材がなくなった直後、達也の工房近くにある施設が気になった。
何かしら? 炭よね? 随分とりっぱなサイズね。 なんに使うのかしら?
焼き窯の前に並べられた炭を眺め、マリーはその炭を手に取り、調べ始める。
これって木炭よね。 こんなに硬い木炭は初めて見るけど……
マリーはその炭を一つ持って、達也のいる場所へと向かう。
工房の前で、素材の置き場所を皆に指示していたので、訊ねる事にした。
「あの、タツヤさん。 この炭は何という炭ですか?」
「はい、なんでしょう? あ、それですか。 それは白炭といって、鍛冶用につくった炉に使う燃料です。 他にも使いみちがあるので、専用の窯も造ったんです」
「はくたん? 鍛冶用の炭ですか…… 石炭とかは、ないですもんね。 なるほど……」
「ここは森も近いですし、材料には事欠かないので、白炭を使おうかと思いました」
「ちなみに、他の使いみちとはどのような感じですか?」
「そうですね、部屋の除湿や消臭効果、飲水などの浄水効果や、土壌改良にも使えるとか聞いてますね」
マリーには、達也の説明をまったく理解出来なかった。
商い上、炭は燃料として使われるのが通常で、除湿や水の浄水などに使用すると、炭として使い物にならなくなってしまうからだ。
「はい? 燃料ですよね?」
「ええ、燃料ですが、この炭はいろんな利点があるんです。 えっとですね……」
マリーはこのあと、白炭について色々と説明を受けたが、達也の博識ぶりを改めて実感する事となった。
絶対に離れたりしないと、改めて想うマリーであった。




