北の森で
森での活動を再開した俺の手には、一本の剣が握られている。
アイアンソード、鉄製の両刃の剣である。
瓦礫や不用品から回収した鉄で作った、武骨な両手剣はやや小さい。 これは森の中でも取り回しが良いようにと、拵えたものだ。
けして、材料が足りなかった訳ではないとだけは言っておこう。
少し短い両手剣を背負い、森の奥へと進む。
職業は剣士を選択し、目的地を目指す。
そこは村の北側の森、人がめったに寄り付かない場所であった。
その森になぜ人が寄り付かないのかは、森の主、大イノシシがいるからである。
そんな森になぜ行くのか、必要な素材がそこにあるからだ。
イノシシたちの繁殖地、そこには多くの素材がある。
キノコや苔、薬草の多くがその地に生えていると聞いている。
俺の薬師のレベルは8を超えたあたりで、新しく作れる薬品がなくなり、現在のレベルは12で止まっている。
もう何を作っても、薬師の経験値が入らなくなっている状態なのだ。
村の貢献度を上げたい俺には、新たな素材と薬品が必要である。
必要な素材が、そこにあるというのなら、危険を承知の上で探しにいく必要があったからだ。
その話を聞いたハンター達も、協力をしたいと願い出ていたが、村の警備も重要なので断り、単独行動の方がなれてる俺なので、無理はしないと約束して森へと向かった。
「お! さっそく発見」
森に入って10分しない内に、上質の薬草を発見する。
回復薬もそうだが、上質の素材を使うことで回復量が変わるので、この上質の薬草はたくさん欲しいものである。
とりあえず半分ほどは残し、次回も採集出来るようにと先へと進むことにした。
そして、数カ所で上質の薬草を発見し、同様に半分は残して移動していく。
「幸先いいぞ。 思ったより、浅い場所で採れるのは助かるな」
俺は、上質の薬草を求めて森の浅い場所で素材を漁った。
小一時間で、上質の薬草や毒消し草を回収し、インベントリにしまい、次なる目的の素材を求めて、森の奥へと進む。
その後、二時間弱の探索で、目的の素材は回収ができた。
途中、イノシシのフゴフゴとなく声が聞こえ、じっと息をひそめてやり過ごすことで遭遇を回避した。
今回の目的は採集なので、狩りは次の機会にしようと、そのまま立ち去る事にした。
その狩りの為にも、下準備は必要なので、その日は村へと引き返した。
◇◆◇
俺が村に到着すると、ドワイトさんが出迎えてくれる。
「あんちゃん、おかえり。 どうだった、成果は?」
「ただいま戻りました。 だいぶ採れましたね。 目的も達成出来ましたし」
ドワイトさんに麻袋を見せて、今日の成果の報告をする。
「やっぱ、すげぇな。 オレらも頑張んねえとな」
袋の中身を確認したドワイトさんは、仲間たちに視線を移すと、ハンター達は苦笑いを浮かべていた。
俺は、ドワイトさんに出迎えの礼を言い、他のハンター達とも挨拶を交わしてから、自分の工房へと帰った。
◇◆◇
翌日、森で採集をした素材を並べて、レシピにある薬の材料を揃えて、調合を繰り返した。
回復薬と解毒薬は補充分をつくり、新しくHP回復ポーションとMP回復ポーションを作った。
回復薬と解毒薬は村用で、HPとMP回復ポーションは緊急時の為につくり、販売にまわすかは未定である。
マリアンヌさんに確認してからでもいいし、村で使えるなら、それはそれで構わないと思う。
貢献度が上がるなら、多めに作るのも有りだなと思った。
あとは狩りで使えるかは分からないが、毒キノコから作る薬品もあるので、そちらも作ってみる。
毒薬と麻痺毒、催涙ガスと煙幕とか、薬品か分からない物もあるが、作れるならつくっていく方針だ。
なにせ薬師の先には、錬金術師への派生があるので、可能な限り作り続けるつもりである。
「錬金術師かぁ、『ハ〇〇ン』とかに成れるんかな? なつかしいな」
小学生の時に借りた漫画を思いだして、戦う錬金術師に興味をもったことは言うまでもない事であった。
一通りの薬品をつくり、いつもの通りの生産を終えて、午後には村の生産品の手伝いをして過ごした。
一日の作業も終わるころ、村長さんがドワイトさん達を連れて、俺に訊ねてきた。
「タツヤ殿、明日も北の森に行くのですか?」
「ええ、そのつもりですが何か?」
「ドワイトから聞いたのですが、上質の薬草がたくさん採れたとかで、出来ればハンターたちを同行させて頂きたいと思いまして」
「ふむ、良いですよ。 薬草なら森の浅いところでも採れましたし、問題はないと思います」
俺の同意に一行は喜んだ。
実際にいった事がない村長はともかく、ハンター達は森の危険を知っているので、覚悟の上で同行を願い出ているはずだ。
「ドワイトさんは、それでいいのですか?」
「ああ、問題はない。 オレは何度も行ったことはあるが、こいつらはまだ経験がない。 だから出来るだけ経験をさせたいんだ。 よろしく頼む」
普段気さくなドワイトさんだが、口調からその本気が滲み出ていて、理由も納得できるものだった。
「分かりました。 では明日の朝、北門に集まった人だけ連れて行きますね」
「了解した。 人選はしっかりとするので、よろしく頼む」
ドワイトさんは、俺の言葉をちゃんと理解してくれたらしく、覚悟のある人をよこしてくれると確信した。




