行商人現る
今日は商人が来るという事で、村はどことなくそわそわしていた。
達也は、村に居付いてから半月しか経っていないので、それなりに楽しみではあるが、いつも通りに過ごしながら到着を待っていた。
朝は薬品の補充と、午前中は建材を作って、午後には村からでた廃棄物の処理をする予定である。
廃棄物は勿論、襲撃によって壊された物が大半であるし、中には使い潰した道具もあって、それらの中には鉄を含む廃品もあるのだ。
これら放置することは、達也としても見逃せない事なので、村長に回収の許可を願うと二つ返事で許可が下りたので、利用させて貰うこととなった。
村にとっては、廃材の処理は売れるものは売って、残りは燃やすか放置しかなく、大概は消費されないままであったからである。
その中から金属の回収と、素材と燃料にする達也は、まさに打って付けの人材といえた。
こうして、達也は念願の鉄を手に入れることが出来たのであった。
◇◆◇
「ふう、こんなところかな」
俺は、新たな武器を手に入れた。
テレレレッテ、レッテレー♪
金床とハンマー!
ん、『そっちかよ!』というツッコミ、ありがとうございます。
だが、これは大事な事なのです。
今迄使っていたのは、石の台とハンマーなので、ちゃんとした金床とハンマーは、鍛冶をするなら重要なアイテムなのです。
お陰様で、鍛冶レシピの中に鉄製装備が並び、無事解放されたのでしたー! パチパチパチパチー……
と、茶番はこれぐらいにして、次なる武器を作るとなると、材料となる鉄が心許ない。 なので、ここは商人さんが来てからにしようと思う。
◇◆◇
午後に入り、達也が廃材を薪にしたり、瓦礫を素材に変え煉瓦をつくり始める。
翌日には使う為、けっこうな量を毎日つくっていた。
泥と灰、瓦礫から回収した素材を揃えて、スキルで煉瓦の下地へと変えていく。
それを乾燥させる棚に並べていると、村人たちの声が聞こえてくる。
どうやら商人が到着したとのことで、残る煉瓦を手早く並べて、俺も様子を見に行くことにした。
商人の馬車は、村の広場に停められ、村人たちに囲まれていた。
しばらくの間、様子を眺めていると、村長と話しをしている女性に気付いた。
なにやら親しく話しているので、村長の知り合いかと思っていると、その女性が村長とこちらにやって来た。
女性は髪を調えながら身嗜みを整え、軽く衣服の埃をはらい、村長の後からついて来ている。
村長は軽く挨拶をしたあと、その女性の紹介を始める。
「タツヤ殿、商人殿がやって来たので、紹介します。 ささ、マリー殿こちらへ」
村長が前を開けて、俺の前にその女性を促した。
女性は黙礼しながら、膝を曲げて軽く頭を下げる。
この時、この女性が商人であると分かって、俺もあわてて一礼する。
「タツヤ殿、こちらがマリー商会のマリアンヌ殿だ」
村長が商人の紹介をすると、女性はにっこりと微笑み話し始める。
「初めまして、わたくし『マリー商会』のマリアンヌと申します。 こんな格好で失礼ですが、貴方と知りあえた事を嬉しく思います。 以後、お見知りおきを」
「あ、はい。 達也と申します。 よろしくお願いします」
俺が、戸惑いつつ自己紹介を終え頭を下げると、女性はクスクスと笑いだした。
「あら、本当に礼儀正しいのね。 あなた、合格よ」
「はい?」
なにを合格になったのか解らず、疑問に思い聞き返したのだが、さらに女性は笑いだした。
「マリー殿、もう良いのではありませんかな」
「そ、そうね。 失礼しました。 こんな辺境の行商人に、礼をしてくれるなんて、中々ないことなの。 笑ったりして、ごめんなさいね」
女性、もといマリアンヌはにっこりと微笑みながら、手を差し伸べ握手を交わした。
◇◆◇
結局、疑問も解消しないまま、俺はもとの作業に戻った。
広場はしばらく騒がしかったが、それもすぐに収まり、商人ちは村長宅へ招かれていった。
素材作成(石材系)のスキルで乾燥させた煉瓦の下地を、焼くための窯に移していると、後ろから声を掛けられる。
「あら、もう煉瓦を焼くのですか?」
「え? ええ、まあ……」
振り向くと、マリアンヌが窯場の入口から入ってくるのが見えた。
聞かれたことに返事をしたが、変な空気になってしまい、俺は黙々と作業を続ける。
「ふむ、これが煉瓦ですか」
マリアンヌは、今朝がた焼き上げた煉瓦を手に取り確かめている。
「初めてみる建材ですわね。 これが貴方の仕事ですか」
マリアンヌは煉瓦を元場所に戻すと、呟いた。 俺はその呟きに、少し考えて反論する。
「これが私の仕事かといわれると、これは仕事ではないですね。 これが必要とさているので、作っているだけです」
マリアンヌは、煉瓦の完成度と言い分の違いに、意味が分からないとキョトンとした。
「……。 えっ? どういうことですの? これが仕事ではないのですか?」
「はい、仕事かと聞かれるのでしたら、違いますから」
マリアンヌはさらに変な表情へと変わり、しばらく考えはじめる。
何となく間があいたので、俺は作業を完了させ、スキルによって煉瓦を焼き始めた。
「えっ!? ちょっとまって、早くありませんの?」
窯の中に並んだ薪が、次々に着火しあっという間に熱がまわっていく。
窯場の温度もそれに従い、気温も熱気へと変わっていった。
スキルの発動中は、完成までは煉瓦を焼き続けるしかない。
煉瓦の下地が詰った窯に手をかざし、集中している俺の態度は頂けないものだが、マリアンヌも黙って作業を見守る様子であった。
煉瓦の焼ける窯の前は、スキルを使っている俺でもかなり熱い。 当然、マリアンヌでさえも近くに寄れば熱いのだろうが、その気配は俺の背後にあり、離れる様子はない。
轟々と燃え盛る窯の中は真っ赤に染まり、その火を眺め続けることは危険であり、かといってスキルをキャンセルする事は出来ないので、はっきり言って邪魔であった。
スキル発動から30分、ようやく煉瓦が焼き上がり、スキルが解除されると、俺の背後で人が倒れる音が聞こえた。
俺は焦り振り返ると、マリアンヌは仰向けで倒れている。
俺は声を張上げ助けを呼び、彼女を抱き上げ窯場を離れた。
その後の騒動は大変だった。 軽い熱中症と旅の疲れにより立ちくらみが起きたらしく、すぐに意識はもどり、水分と食事をとって回復したのであった。
彼女曰く、『興味が勝って、水分をとってなかった事に気づかず、お騒がせして申し訳ない』との事だった。
今週は…… 更新出来たらします。
ない時は、8日の更新となります。




