修学旅行最終日
いよいよ、修学旅行最終日。
生徒たちは皆帰りたくないという思いが強く出ている。
「おはよう、麗さん」
「おはよう、朔弥」
いつも通り僕らは朝の挨拶を交わす。
なんてことない、いつも通りの日常。
その舞台が修学旅行であるというだけ。
「さ、おまえらー。飯サッサと食って、帰り支度しろよー」
......情緒もへったくれもないな、この教師。
まぁ、酒が飲めずに健康的な日常を送ったのであろう。
荷物をまとめバスに乗り込む。
行き先は"映画村"。
男子のほとんどが楽しみにしていた場所だ。
「うひょー!! 着いたぜ、映画村!!」
「荒井ー、落ち着けー」
「早く! 早く行こうぜ!!」
そうして映画村へと足を踏み入れる。
すると、世界が一変したかのような時代劇のセットに皆感動した。
「あ、あれ荒井好きそうじゃない?」
僕が指さしたのは忍者のアトラクション。
"子供に人気!!"と書かれている。
「誰が子供じゃい!!」
と、言いつつ、ちゃっかりハマり込んでいた。
少し離れたところには縁日が並んでいた。
「だ、団子!!」
「ちょ、朔弥!! あまり食べ過ぎないでよ!!」
麗さんは止めるが甘味が僕を呼んでいる!!
こればかりは譲れない!!
こうして、僕らは映画村を堪能したのだった。
***
京都駅。帰りの新幹線に乗り込む。
僕らはどこか裏寂しさを覚えたまま座席に座る。
行きの新幹線とは全く空気が違う。
「終わっちゃったね、修学旅行」
「麗さん。家に帰るまでが修学旅行だよ?」
「......それを言うなら遠足でしょ」
麗さんのツッコミはこんな時でもキレッキレだ。
僕は自分用に買った生八つ橋を開け食べ始める。
新幹線の中の空気が、「お前まだ食うの?」と物語っていた。
「あ、まさか皆僕の生八つ橋を狙って......」
「みんな自分で買ってるわ!!」
「あ、そうだよね」
そんなことを言っていると新幹線が動き始めた。
楽しかった京都ともお別れ、か。
そう考えると寂しい気分になった。
「朔弥」
「ん? どうしたの? 麗さん」
「粉。ついてる」
そういうと、麗さんは僕の口を細い指で拭った。
......まるで王子様みたいだ。
「ん。取れた」
「ありがとう」
「お前らなぁ......ナチュラルにイチャつくなよなぁ」
荒井がいちゃもんをつけてきたので僕はそれを買うことにした。
「どうだ。"王子様"な彼女がいて羨ましいだろう」
「......そこは"お姫様"じゃねーのな」
荒井は人の揚げ足を取るのが好きだなぁ。
「麗さんは、"王子様"で"お姫様"なんだよ」
「......どういうことだよ」
「麗さんの"お姫様"な部分は、僕だけが知っていればそれでいい」
そう言うと荒井は「寝る」といって眠りについた。
「朔弥」
「うん?」
「......終わっちゃうね、修学旅行」
麗さんにしては珍しく寂しげだ。
「なんかあっという間だったね。......でも」
「うん?」
「今度は二人で来ようって言ったでしょ?」
「......そうだったね」
麗さんは僕の言葉に安心したように微笑んだ。
そして、そのまま僕の肩に頭を預け、静かに寝息を立て始めた。
僕はそんな麗さんの寝顔を見つめながら、そっと笑う。
――修学旅行は終わった。
だけど。
僕らの京都旅行は、きっとこれからだ。




