借り物競争
九月某日。
雲一つない晴天。
絶好の体育祭日和である。
運がいいことに、僕も麗さんも同じ赤団である。
「麗さん。頑張ろうね」
「......意外だな。朔弥が体育祭に乗り気なの。去年は雨で中止だったし、中学の時はサボってただろう?」
「......僕の黒歴史をほじくり出さないで」
僕らの学校のメイン競技は"借り物競争"だ。
もちろん、人気者の麗さんはエントリーされている。
僕は足の速さを買われて、団対抗リレーに駆り出される予定だ。
それにしてもこの学校は変わっている、普通メイン競技といえば"団対抗リレー"だろう?
それが"借り物競争"。
先輩たちは、「借り物競争では目立ってなんぼじゃー!!」と力が入っている。
あまり麗さんに無理はさせたくないなぁ。
そんなことを考えていると、借り物競争の時間となった。
「それじゃ、朔弥。行ってくんね!」
「ん。いってらっしゃい。何かあったら頼ってね?」
「モチ!!」
借り物競争の生徒達が集合して、走順に並び始めた。
......麗さんはラストか。
学校側の陰謀を感じる。
「位置についてー、よーいドン!!」
最初の走者が走り出した。
皆お題に苦戦しているようだ。
あ、あの人教頭のヅラが借り物かぁ......
どっちもご愁傷様。
そして、二走、三走と行くうちに、とうとう麗さんの番。
ラスト走者になった。
スタートのピストルが鳴ると、みんな一斉に飛び出す。
そしてお題の紙を広げていく。
......あれ?麗さんがこっちに走ってくる。
もしかして、僕の出番?
「麗さ「美玖!! 一緒に来て!!」」
「ほいな~」
麗さんは櫻井さんを呼ぶと、なんと姫抱きをして走り去っていった。
僕は、荒井から「ドンマイ!」といい笑顔でいわれたので、頭を握りつぶそうとしてやった。
「赤団一位~!! お題は......『女子生徒をお姫様抱っこ』!! クリアでーす!!」
......はなから僕はお呼びでない感じであった。
そうこうしているうちに麗さん達借り物競争勢が戻ってきた。
「......麗さん、カッコよかったよ」
「あんがと! その割には不貞腐れてるじゃん」
「......べっつにー。僕リレーの集合だから行ってくる」
「あ、うん。」
こうなったらこの苛立ちをリレーにぶつけてやる!!
「位置についてー、よーいドン!!」
僕は最終走者なので、皆の様子を見ていた。
が、遅い。実に遅い!!
なんと赤団が最下位。
もうやる気のない奴らばっかり!!
そして僕にバトンが渡る。
僕は全力疾走で他の団をごぼう抜きしていく。
それでも、二位の団にはなかなか届かない。
――そんな時だった。
「朔弥―!! 頑張れー!!」
麗さんだ。麗さんの声援が聞こえる。
これは期待に応えなければ......!!
僕は加速装置がついたかのようにスピードアップして、二位の走者を抜き去りゴールした。
「一位! 赤団!! いやぁ、凄い追い上げでしたね!! 決め手は?」
実況をしていた情報委員がインタビューに出てきたので、僕はすかさずこう答えた。
「愛の力です!!」
そして麗さんに向けてピースをすると、麗さんは顔を真っ赤にしてその場にしゃがみ込んだ。
フィナーレは僕と踊ってもらいますからね!!




