修学旅行準備
僕らが通う高校の修学旅行は、二年生の六月に行われる。
行先は修学旅行の定番の京都、奈良だ。
「ほらお前らー。さっさと班決めしろー」
「先生やるきなーい」
「そらお前......修学旅行中は、先生禁酒なんだぞ?! それがどれほどつらいか......」
担任の松原は酒癖が悪いと専らの噂だったが......まさか本当だったとは。
それよりも......。麗さん、人気だなぁ。
一緒の班になれたらなと思ったんだけど......。
......ん?麗さんこっち来てる?
「朔弥、班一緒ね! 他は美玖と......荒井でいっか」
「黒崎さん?! いくら彼氏だからとは言え、月城と落差つけすぎと違いません?!」
「......? 朔弥?」
「ハッ!! ごめん。ぼうっとしてた」
――麗さんが女子達を押しのけてまで僕の所に来てくれたのが嬉しいとは、流石に言えない。
だってほら。女子達の視線がこんなにも怖い。
でもいいんだ。なんと言われようと、僕は麗さんの"彼氏"だからね。
***
なぁんて、かっこよくいてみたものの、恐ろしいものは恐ろしいもので。
僕は今、学校の裏庭でクラスの女子に囲まれています。
......後ろにはガタイのいいお兄さんがいらっしゃる。
「なんで! なんでアンタみたいな、チビでちんちくりんが王子の彼氏なの?!」
「一体どんな手を使ったわけ?!」
どんな手、といわれましても。
麗さん曰く絡まれたところを助けたのがきっかけだったらしいからなぁ。
......てか、チビでちんちくりんは酷くないですか?
「ハァ。僕は別に麗さんに強要したわけじゃないですし。......むしろ愛されちゃってますから、僕」
「~~!! もういい!! あんた達やっちゃって!!」
「ほおん?こんなチビサンドバックにもならねえよ」
「......最終忠告デス。今すぐこの怖いお兄さんたちを止めないと痛い目見ますよ」
――これは僕の最後の優しさだ。
しかし、周りは皆笑うばかり。
仕方ない。これは正当防衛だ。
僕は姿勢を低くすると、お兄さん一人目に足払いをかけた。
そしてお兄さん二人目が殴りかかって来たので、腕を掴んで一本背負い。
お兄さん三人目は......逃げて行ったので放置!
「本当は喧嘩はダメとの教えですが、これは仕方ない。あぁ、貴方達」
「は、はい!!」
「もうこんな真似はよしてくださいね?危険ですから」
「はいぃ......」
「あ! それと! ......麗さんには秘密にしてくださいね? ああ見えて喧嘩すると悲しんでくれる心優しい人ですから」
僕は釘を刺すことを忘れずに、その場を去った。
......その場にいた女子達が「ギャップ萌え......」と呟いてたのには気づかなかった。
「さくやんも大変やねぇ」
「櫻井さん」
「うちは二人の味方だからねぇ」
そういうと、櫻井さんは僕に飴を手渡し、「麗様が待ってるよぉ」といって去って行った。
――実にかっこいい去り方だ。
ちょっと僕もしてみたい。




