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アイテム無限利用のチートを授かった俺が、なぜか最強の魔獣やスライムを従え世界を支配することになった件  作者: まるせい


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第14話 登場初期は優秀な人物に思わせておいて中身ポンコツは愛されキャラだと思う

「取り敢えず、食ってくれてよかったよ」


 エステルの部屋を出ると俺はホッと息を吐いた。


「あのままだといつ倒れるかわからなかったからな」


 彼女は俺のことでも心労を背負っていたようで、放っておけばストレスで倒れてしまいそうだった。なので、あのクッキーを差し出したのだが……。


「それにしても、犯人は誰なんだ?」


 クッキーを作りながら料理人に話し掛けて情報を収集したのだが、王族の料理は複数人の宮廷料理人が作っているようだ。


 基本的な食事の時間は決められており、すべての王族が同じものを食べるらしいのだが、今回、俺とステラは食事の時間に遅れてしまったので違う料理が出されている。


 犯人がいるとして宮廷料理人なのかそれ以外なのかは今のところ判断が付かず、毒を盛ったやつは自分が特定されないとわかっているのか表情を変化させていないときている。


(もしかして最初から俺を狙っていた可能性もあるか?)


 俺が彼女の肉料理をもらったのはエステルが手をつけていなかったからだ。

 手渡す際に「あまり得意ではありませんので」と言っていることから考えて、あのまま一人で食事をしていたら残していた可能性が高い。


 毒殺すると言うからには犯人も当然エステルの嗜好くらい調べているだろうし、わざわざ手をつけなさそうな料理に毒を盛る必要はないのだ。


 よって、犯人は俺に恨みを持つ人物。もしくは俺を暗殺することで罪をエステルに着せようとした人物という線が濃厚になる。


「ますます犯人の範囲が広がったじゃないかっ!」


 頭がいっそうこんがらがって来て地団駄を踏んでいると……。


「おや、リクシス様ではありませんか?」


「アルテミシアか?」


 振り返ると豪華なローブに身を包んだアルテミシアが立っている。

 彼女が宮廷魔導師筆頭というのは本人から聞いていたのだが、こうして高価そうな装飾を身につけていると改めて美人さんなんだなーと感想が思い浮かぶ。


「どうかされたのですか?」


「実は暗殺されかけてな……」なんて口が裂けても言えない。

 言えばこいつは当然犯人を探り始めるだろうし、俺が気付いていることを犯人に知られてしまうのは困るからだ。


 狙いが俺だけなら構わないのだが、エステルを貶めるのが目的だった場合、防ぐのが難しくなる。


「そうだ、俺が作ったクッキー食ってみろよ」


 そう言って懐から取り出したクッキーを彼女にも食わせてみる。


「正直な意見を言ってくれていいぞ」


「まずいです。素人料理にしてももう少しやりようがあると思います。こんなの貴族に出そうものなら打首ですね」


「そこまで正直に言えとは言ってねえよ!」


 俺が作ったと言ってあるだろ!

 多少の苦言は聞き入れるつもりだが加減しろよ! 傷つくぞっ!


「申し訳ありません、私素直なのがウリなので……」


「よくそれで宮廷魔導師筆頭が勤まるな?」


 もっとも、その素直さがあったから警戒せずに打ち解けてこうしてここまでついて来たわけだ。もし何考えてるかわからない策謀キャラならアビスエンドで朽ち果てていたことになる。


「お前は、暗殺とは無縁そうだよなー?」


 アルテミシアの肩を叩くと、


「それはもう! 寝る時は結界を張ってますからね。暗殺者が送り込まれても平気です」


 即座に暗殺を実行する側の思考にならないあたり完全に白だわ、こいつ。


「それにしても、このクッキークソまずいですが」


「もう一回言ったら殴るぞ?」


「食べてから身体の調子が良くなってますね。何か混ぜ物してますよね?」


 流石は宮廷魔導師だけある。このクッキーの秘密に気付いたようだ。


「これには『聖樹の雫』が混ぜてある」


 俺がドヤ顔でそう告げると、アルテミシアは俺の肩を強く掴んできた。


「何てもったいないことしてるんですかっ!」


「お、おい。落ち着けって!」


 周囲の者が俺たちを見ている。


「これが落ち着いていられますかっ!『聖樹の雫』とは、錬金術の素材の最高峰。エリクサーを完成させるのに必要な材料ですが、ほとんど手に入らないので市場に出たら奪い合いが起きるんです! そんな材料をクッキー作りに使うなんて正気とは思えません!」


 酷い言われようだが、アルテミシアは俺が「使用したアイテムを無限に使用できる」ことを知らない。

 俺にしてみれば『聖樹の雫』は無限に使えるアイテムの一つでしかないのだが、一般常識に照らし合わせるとエリクサーすら作れるアイテムを無駄に消費するなということのようだ。


「そういえば、ザックスや私にも飲ませてくださいましたね? あの時は緊急事態だからかと思ったのですが、リクシス様はもしかすると結構な量の聖樹の雫をお持ちなのではないでしょうか?」


 彼女は地頭が良いので俺が無頓着に聖樹の雫を使えることに思い至ったらしい。


「まあ、そこそこの量は使えるけど……」


「壺一つ分くらいいけますか?」


「そ、そのくらいなら……」


「樽一つ分は?」


「……そのくらいなら?」


 彼女の目が血走っていて怖い。逃げようにも食い込むぐらい強く肩を握られているので逃げられない。


「では……」


「あー。待った待った!」


 次は何に入るか考えているアルテミシアに待ったをかけた。


「まだるっこしいのはやめよう。確かに俺はかなりの量の聖樹の雫を保有しているが、探られるのは面白くない」


「申し訳ありません」


 俺がピシャリというと、彼女はシュンとした表情で引き下がる。

 年上の美人のはずなのに可愛く見えるのは、前世での俺の年齢が彼女より上だったからなのだろうか?


「欲しいというのなら分けてやるからさ」


「ほ、本当ですか!? リクシス様!」


「ただし、条件がある!」


「うっ……金銭的なところであればある程度支払えるのですが、宮廷魔導師筆頭とはいえそこまで給金があるわけではなく……勿論貯金はあるのですが、良い魔導具があると買ってしまうのでそれ程なくて……」


「いや、金は腐るほど持ってるからいらない」


 ネクロヴァーンの遺産よりも優秀な魔導具や宝石類なら考えなくもないのだが、アルテミシアが持っているとは思えない。


「ですが、他に差し出せるものとなると……もしかしてっ!?」


 彼女は何かに気付くと自分の身体を守る仕草をした。


「確かに、命を救っていただいた恩をどう返そうかと考えていましたし、リクシス様は外見だけならドストライクの美少年。私としても抱かれるのはやぶさかではありません……ですが、せめてムードというものを用意していただけたらと」


 頬を赤めくねくねと身体を揺らすアルテミシアを残念そうな目で見る。


「いや、身体も要求してないからっ!」


「では何を差し出せと?」


「聖樹の雫でエリクサー作れるんだろ? 作れるやつを紹介して欲しいんだよ」


「そんなことでいいのですか!?」


 彼女は俺の腕を掴むと、


「さあ行きましょう! すぐに行きましょう!」


 上機嫌で歩き出した。

 俺の腕がアルテミシアの胸に触れているのだが、あまりにも強引な動きに嬉しさを感じる暇がない。


「ふふふ、聖樹の雫をお酒に混ぜると味が良くなるんですよね。一度試してみたいと思ってたんです……」


 既に手に入れた後のことを考え煩悩を垂れ流すアルテミシアをよそに、


「それ、試すとき俺も混ぜろよ?」


 俺は良いことを聞いたと思うのだった。

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