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アイテム無限利用のチートを授かった俺が、なぜか最強の魔獣やスライムを従え世界を支配することになった件  作者: まるせい


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第13話 疲れた王女に差し入れをした。勿論毒は盛っていないが違うものは盛っている

「ステラ、こっちの申請はすべて却下しておいてください。不正なので」


 書類に「否」の判子を押すとエステルは侍女へと書類を渡す。


「こちらの予算案も計画内容の割に費用がかかりすぎています。計算し直すように言ってきてください」


「はい、かしこまりました。姫様」


 侍女のステラは紙を受け取ると部屋を出ていってしまった。


 先程から俺は働くエステルを監視している。

 ネクロヴァーンから授かった魔法『インビシブル』は指定した対象を一時間透明にしてくれる効果があるので、俺は自分の身体を透明にすると彼女に張り付いている最中だった。


(それにしても、飽きもせずによく働き続けるものだな)


 元の世界と常識が違うのでなんとも言えないが、こちらの世界の人間は娯楽を楽しむということをしないのだろうか?


 訓練場で訓練をしていた新兵といい、子どもを遊ばせるという発想がなさそうなのが気になる。


(そりゃ精神的自立も早くなるってもんか?)


 早く一人前にならなければならないので、皆必死に学ぶのだろう。どちらが幸せかというと、俺は断然元の世界のやり方を推したいと思っている。


 結果、甘える人間が増えてる気はするが、平和な方が良いに決まっている。


「こんな状況だと言うのに、この国の貴族は自分の富を増やすことばかり考えているなんて……」


 誰もいなくなったからか、エステルはボソリと愚痴を漏らし始めた。


『敗戦濃厚なこの国の貴族は今のうちに他国に媚を売って援助を引き出したり、賄賂を贈って敗戦後の地位を確保しようとしたりしておるのじゃ』


 結果、彼女がチェックする書類に不備を紛れ込ませているということらしい。


「オリハルコン、少し護衛を頼めるか?」


『ピキッ?』


 黙々と仕事をする彼女を見て、俺はオリハルコンに小声で話しかける。


「暗殺者がきたら拘束して動けなくしろ。他にも彼女に危害を加える素振りが見えたら排除するように」


『ピキピキ!』


 オリハルコンは「わかった」とばかりに飛び跳ねるとエステルの近くまで移動した。

 透明化の魔法を重ねがけしたのでしばらくは大丈夫だろう。


 俺は、彼女のそばを離れるととある物を準備しにいくのだった。




 ★


 ーーコンコンコンーー


「入りなさい」


 ステラが戻ってきたのだと思い許可を出すと、


「よっ!」


 入ってきたのはリクシス王子でした。


「はぁ」


 私は溜息を吐くと書類に書き込みを加えます。


「そろそろお茶の時間だろ。相手をしてくれよ」


 彼は人懐っこい笑みを浮かべると私をお茶に誘ってきました。相変わらず何を考えているのかわかりません。


「そんな暇はないです。誰かさんが呑気に記憶喪失になっている間に起きた問題のせいで、我が国は大変なことになっているのですからね」


 これだけ嫌味を言えばこちらの気持ちを理解できるはず。私は彼を見ると、


「まあそうかもしれないけどさ、せっかくクッキー焼いたんだから食べてくれよ」


 ところがリクシス王子はまるで私の嫌味など聞こえなかったかのように笑顔を見せたのです。


「…………」


 相手が何を考えているのかわかりませんが、リクシス王子は国賓。あまり無碍にするのは得策ではありません。


 私が仕事の手を止め席に着くと彼は紅茶を淹れました。


(美味しくないです)


 侍女のステラが淹れたのよりも渋くて熱いです。量もカップから溢れそうで重たいですし不満しかありません。


「うん。中々美味い紅茶だな」


 茶葉の価値を台無しにしているにもかかわらず、彼は満足そうに紅茶を飲んでいます。


「クッキーも食べてみてくれよ」


 私は彼の言葉に手を動かすことをせずにいると……。


「ああ、そうか」


 彼は先にクッキーを食べ始めました。


「大丈夫だ。毒は入れてないから」


 ドキリとします。私がみていたのは、普段見る焼き菓子と違って不恰好な形をしていたからです。


「……いただきます」


 それを今更言ったところで訂正にはなりません。私はクッキーを一つ食べると……。


「凄く……まずいです」


 一体、どう作ればこのようにまずいクッキーを作ることができるのでしょうか?


「ははは、やっぱりそうか。手持ちの材料で作ってみたんだけどプロには敵わないなぁ」


「もしかして、手作りなのですか!?」


「そうだけど?」


「一国の王子が料理するなんて……」


 ましてやそれを他国の王女に振る舞うなんてあり得ません。


「そんなことは知らないさ」


 ですが、彼は堂々とした態度で私にハッキリ言いました。


「俺は自分がやりたいと思ったことをやる。後悔はしたくないからな」


 その言葉がなぜか胸を打ちました。


「そうやって勝手な振る舞いをするから、国に迷惑をかけるのでしょう?」


「確かにそうだな」


 リクシス王子は頬をかくと困った顔をしました。

 その姿に私は戸惑いを覚えました。


 どうみてもこれまで知っている彼の姿と一致しないのです。


(まさか、本当に記憶喪失なのですか?)


 疑いの目で見るも、彼の態度に変化はなくとても馬鹿らしくなってきます。


「貴方が今やりたいことって何ですか?」


 どうして今頃になって私の前に現れたのか?

 エテルニスにどのような謀略を仕掛けるつもりなのか?


 彼の思惑次第では……。


 懐に忍ばせている護身用の短剣を抜く必要がある。


「今やりたいことはエステルとこうしてお茶をすることだな。何せ俺はお前のことをよく知らない」


 彼は屈託のない笑みを浮かべるとそう言いました。


 ーーコンコンコンーー


「あら、姫様。お茶の最中でしたか?」


 部屋に入ってくるとステラが驚いた様子で私をみます。

 テーブルには紅茶が二つとクッキー。対面にはリクシス王子がいて予想外だったのでしょう。


「じゃあ、あまり邪魔してもよくないから俺は行くよ」


 ステラが戻るなり立ち上がると彼は出ていってしまいました。


 まさか本当に私と話しがしたくて、クッキーを焼いてきたのでしょうか?


「紅茶淹れ直しましょうか?」


「いいえ、結構よ」


 ステラに断ってクッキーを一枚齧ります。

 甘くもなくパサついており口の中でボロボロと崩れます。


「だけど……」


 何だか疲労が抜けていくような気がします。


「信じられるわけないのに……」


 私は胸に手を当てるとそう呟くのでした。

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