第10話 美少女に睨まれるのは本意だが、一方的に恨みを買うのは本意ではない
「リクシスは彼女に何をしたんだろう?」
あれから、無言で部屋に案内するとエステルは立ち去ってしまった。
世話をするようにとレオニスに命じられていたのだが完全に放置するのはまずいのではなかろうか?
「それだけ、リクシスが恨みを買っていたってことなのかな?」
今の段階ではエステルも何も言葉を発していないので判断をすることができない。
『リクシスよ、オリハルコンたちが寂しがっているのじゃ』
エステルに聞くか悩んでいると、ナビゲーターが話しかけてきた。
「おっと、悪かった」
【眷属召喚】
次の瞬間、足元に二つの魔法陣が出現し二匹が召喚される。
『ブルルッ!』
『ピキ〜ッ!』
「二匹とも元気そうで何よりだな」
流石にモンスターを手懐けたことを説明すると色々面倒になるので、二匹には近くの森で待機してもらっていたのだ。
ちなみに、眷属召喚はネクロヴァーンのスクロールで覚えた魔法ではなく、二匹を従えた時に覚えたスキルということになる。
戦闘によって経験値を得たからか普通に幾つかのスキルも獲得できた。
「良い子にしてたか?」
俺が二匹を撫で回すと、二匹とも俺に身体を擦り付けて甘えてきた。
「とりあえず、今後について考えないといけないな。
俺はベッドに腰掛けて二匹をあやしながら考える。
「まず、アルテミシアの要望通りにロヴァンの侵攻を止める必要がある」
そもそもの原因はこのリクシスなのだし、巻き添えを食った彼女たちは不幸な被害者だ。
自分がロヴァンに戻ることで戦争が止まるのならその方が良い。
「問題は、今はやれることがないってことか?」
様々な国がちょっかいをかけてきているらしく、ただ俺がロヴァンに戻るだけでは解決しないらしい。
エテルニスが俺の生存を各国に呼びかけることになっているらしい。
ーーコンコンコンーー
「二匹とも、隠れろ!」
ノックが途切れるとともにドアが開きエステルが入室してくる。
オリハルコンとクロノスは俺の影へと飛び込んだ。ナイトメアロードが持つ特殊能力らしく影に潜むことができるようだ。
「食事をお持ちしました」
エステルは手に盆を持っており、そこには食事が用意されている。
パンとスープと水。仮にも王族に食わせる料理とはとても思えないのだが、厄介者の自覚があるので甘んじて受け入れることにする。
「ありがとう、腹ぺこだったから助かる」
俺がお礼を言うと、エステルは胡散臭そうな目で俺を睨んできた。
彼女の顔立ちは整っており、あと数年もすれば男が放っておかない美少女に成長しそうなので、俺は不覚にも背筋がゾクっとしてしまった。
「何を企んでいるのですか?」
エステルは俺が何かよからぬことを企んでいると思っているようだ。
「別に何も企んでいないんだけど?」
もしかして、彼女は俺の謁見の話を聞いていなかったのではないかと不安になる。
「俺が記憶を失ってることは知ってるよな?」
「それは嘘です! 全部演技に決まっています!」
俺は一体エステルに何をしたのだろう。尋常じゃない恨み方だ。
「私にあんなことをしておいて、記憶を失ったなんて言葉で誤魔化すんですか?」
「本当に覚えていないんだ。もし俺が何かしたのなら謝るし、罪を償えと言うのなら償おう。だから何をしたのか教えてくれないか?」
俺は完全に悪くはないのだが、ボディを受け継いでいる以上負債も背負わなければならない。果たしてエステルはなんと答えるのか……?
「あのような屈辱を説明しろと? 一体どこまで私を辱めれば済むと言うのですか?」
オーケーわかった。これ以上は彼女の怒りを注ぐだけになる。
『まったく、リクシスは最低じゃな』
(お前、もっとマシな身体に転生させろよな?)
ナビゲーターの煽りに青筋を立てていると、
ーーベシャーー
エステルが盆を叩きつけ出て行ってしまった。
「あー勿体無い」
俺はパンを拾い一口齧ると、
「面倒になりそうだな」
城での生活が快適にならなそうだと覚悟をするのだった。




