表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第四話 七大魔族の権能とざぁこの末路

ゆっくりと目を開ける。

見慣れない天井。柔らかな感触。……ベッドの上?


「……ここは……」


上半身を少し起こしたところで、かすかな声がした。


「起きたのね」


横を向くと、ノクターリアがいた。

彼女は俺と同じベッドに寝転び、頬杖をつきながら、じっと俺を見つめていた。


「なっ……!」


飛び起きるように布団を蹴り払い、ベッドの端まで後ずさる。


「そう警戒しないで。

言ったでしょ。あなたを助けてあげるって。それに……その力のことも、知りたいんじゃない?」


その言葉に、胸の奥がざわついた。


あの力を使った時、怒りに呑まれ、全身から赤黒い炎が噴き出した。

そして激しい痛みと共に、意識が抜け落ちていく感覚に襲われた。


それを救ってくれたのは、この女――ノクターリアだった。


思わず視線を落とすと、右手の甲に赤い紋章が刻まれていた。


――俺は契約した。


その代償に、魂を差し出す約束と引き換えに。


「……お前の目的はなんだ。なぜ俺と、あんな契約を結んだ」


「興味があったからよ。憤怒の力を、その魂に宿しているあなたに」


「憤怒の力……?これは……いったいなんなんだ……」


「その力は――七大魔族が持つ権能のひとつ、“憤怒”。

そして、あなたの体を焦がしたあの炎は《憤怒の狂火》すべてを焼き尽くす怒りの炎よ。

まさか、私が二度も殺されるなんて思わなかったわ。

……ふふ……あのままなら、ほんとに危なかったかもね」


冗談めかした声に、背筋がぞわりとする。


そのとき俺は思い出した。――ステータスのスキル欄。

そこには確か《狂火》と刻まれていた。


「……ステータス・オープン」


目の前に光の板が現れる。

俺はノクターリアに向けて、それを見せつけるように言った。


「憤怒の狂火ってのは、このスキルのことか」


「……見えないわね。これは秘匿されてるのかしら」


彼女の視線が、職業欄の【癇癪持ち】に移る。


「これも……改変されている?」


俺が訝しげに見ていると、ノクターリアは手を伸ばし、光の板に触れた。

次の瞬間、【癇癪持ち】の文字がゆらりと揺らめく。


何か別の文字が浮かび上がろうとした。

だが、掴みきる前にかき消され、元の【癇癪持ち】に戻ってしまった。


ノクターリアの表情が険しくなる。


「七大魔族のうち、憤怒の力を持つ者は数百年前から行方不明なの。

……もしかすると、その失われた力に関係する“何者か”が、あなたの魂にこの力を仕込んだのかもしれない。しかも隠蔽まで施して」


「……なんだよそれ、誰かって……。結局俺は、何者なんだよ!? この力はなんなんだよ!!」


思わず声が荒くなる。

怒りと困惑がぐちゃぐちゃに混ざり、胸の奥が焼ける。


「……そこまでは分からないわ。……でも大丈夫。あなたには私がついているもの」


そう言って俺の手の甲に刻まれた紋章を指先でなぞった。


「憤怒の狂火は怒りを暴走させる。普通なら、自分ごと焼き尽くして終わり。

でも――あたしがサポートすれば暴走せず、その力を十全に扱える……そうすれば、あなたに勝てる者はいない。

……ねえ! 試しに使ってみない? あなた……仲間に見捨てられたんでしょ」


「!?……どうして、それを……」


「契約の時に、あなたの記憶が流れ込んできたのよ。

面白くもない連中ね。くだらない嘲笑と暴力ばかり……

だから――憤怒の力でやり返しましょう。

だってあなたは最強なんだから!」


胸の奥底で、またしても黒い炎が燃え上がる。

怒り、憎しみ――理性を突き破って、全身を焼き尽くそうとする。

思わず、手のひらから炎が零れ落ちそうになった、その時。


ベッドのシーツを押しのけて、ノクターリアが身を起こす。

彼女は迷うことなく俺の胸元に抱きつき、強く抱き留めた。


驚きに炎が止まる。


「ほら……私がいれば大丈夫……あなたはスキルをコントロール出来る。 契約の力を思い出して」


言葉と同時に、右腕の紋章が赤々と輝き出す。


ノクターリアはゆっくりと体を離し、手を差し伸べた。


「――さあ、行きましょう――キョウセイ――」


そして彼女は名乗ったことのない俺の名前を呼んだ。


手を取った瞬間、視界が歪んだ。

気付けば――そこはダンジョンの入り口。


広場には、クラス全員が一堂に会していた。

その中央、牙堂がふてぶてしく腕を組み、その前に桜井が詰め寄っている。


「どういうことよ牙堂くん! キョウセイくんのこと、見捨てたの!?」


「見捨てたんじゃねーよ!俺だって助けたかったんだ……だって仲間だもんな!」


取り巻きの連中に視線を送ると、奴らはニヤニヤと頷き合う。

白々しいその光景に、胸の奥の黒炎がじりじりと燻った。


「……あなた……馬鹿じゃないの?」


ノクターリアはそう言うとゆっくりと牙堂のそばへ歩み寄る。


クラス全員の視線が、一斉にこちらへ注がれる。

牙堂は俺を見ると驚愕に表情になり、睨みつけてきた。

桜井だけが必死に叫ぶ。


「キョウセイくん!」


その声を背に、ノクターリアは牙堂に、唇を吊り上げた。


「勘違いしないで。あんたみたいなざぁこに――私のキョウセイが負けるわけないでしょ」


「なんだと!? おい、誰だお前!」


「ねえ、キョウセイ。こんなやつ、さっさとやっちゃって」


「……てめえ……キョウセイ……いつからそんな偉くなったんだ……?」


俺は牙堂に向かって歩き出す。


「死ねやぁぁぁ!!」


牙堂が血走った目で叫び、拳を振り抜いてきた。

俺はその拳を片手で掴み、がっちりと受け止めた。


「へっ……!?」


牙堂の顔に驚きの表情を浮かべる。

――拳が牙堂のみぞおちにめり込んだ。


「がはっ……!」


牙堂は呻き声を上げ、膝をつく。


「……武器、使えよ。舐めてんのか?」


牙堂は悔しげに歯を食いしばり、後ろへ飛び退る。

その手に、巨大な斧を握る。


「もう手加減はしてやらねぇ!!」


血走った目で叫び、渾身の力で斧を振り下ろしてくる。


「きゃああっ!!」


クラスメイトたちから悲鳴が上がる。

しかしその斧の刃を俺は右手で受け止めた。


「な……おっ!? なっ!? おお!?おおおっ!!」


牙堂が必死に斧を引き戻そうとするが、びくともしない。


俺の掌に力を入れる。

ぎしり、と斧の刃にヒビが走った。


「なっ……なんだ!?キョウセイ……お前!?へ?……なに??…なにが!?」


牙堂の顔が、驚愕に歪む。

俺は一歩踏み込み、渾身の拳を牙堂の顔面に叩き込んだ。


「があっ!!?」


牙堂の体が吹き飛び、後方の木に叩きつけられる。


「……あ……? あ、ん……だ……!?」


殴られた衝撃で顔が歪み、牙堂はまともに言葉も出せず混乱していた。


俺は歩み寄り、その胸倉をがっしりと掴み上げた。


「ぐっ……離せ!」


牙堂は必死に暴れるが、手から抜け出せない。


「ごはぁ!」


拳が牙堂の顔面を打ち抜く。


「がはッ!!」


もう一度。


「うげぇ!!!」


さらにもう一度。


「ぼびぁぁ!……や、やめ……っ! ぐあっ!! た、たすけっ……ごぶぁ!!」


みるみる牙堂の顔が腫れ上がっていく。


心の奥が怒りに歪み、俺の体から赤黒い焔が噴き出した。

《憤怒の狂火》が、牙堂を焦がすかのように燃え盛る。


「や、やめおぉ……! しにたくにゃい……!こ、ころしゃないでぇぇ!!」


牙堂は恐怖に顔を歪め、醜く命乞いを始める。

俺は言葉を無視して拳を振るう。


「ぶ!!!あびゃはぁぁ!!」


牙堂の顔面に直撃し、その巨体が盛大に吹っ飛んだ。

背後の地面に叩きつけられ、白目を剥いて意識を失う。


ノクターリアが一歩前に出て、倒れ伏す牙堂を見下ろした。


「……ざぁこ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ