↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャングル・ファンブル・オペレーション ~俺はジャングルに全てを…~  作者: しゅう かいどう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/78

72.概要

 アニョウはタブレットに表示された作戦説明書を読み進めていく。

 持ち出しが許されないと分かっているからだ。

 次々と説明書をスクロールさせていく。

 すでに作戦の下準備は完了しており、あとは実行するばかりの状況であった。


 ―研究所近郊の集落から地下道を掘削済み。小型車ならば通行可能。電気自動車とトロッコ数両を連結済み。電気自動車は前後に連結。前進、後進時に方向転換不要。運転する車を乗り換えるだけか。これに乗って進軍し、退却すれば良いわけだ。

 侵入路はメインサーバールームの真下。坑道の天井を成形爆破で丸くくり抜き、そこから侵入。集落からあらかじめ伸ばしておいた通信ケーブルをサーバーへ接続。

 サーバーのデータ抽出は、コントロールに任せておけば良い訳か。ストライクバックがすることはないな。

 データ抽出中に隣室の培養室へ侵入。入口には、網膜、静脈、声紋センサーの鍵有り。

 待て待て。これはどうやって突破する。そんなもの登録されていない。

 それに登録者不明。お手上げじゃないか。

 SB0の実行が不可欠。

 SB0とは、ストライクバック0番。つまり俺のことだ。今回は少年兵だけの出撃ではなく、俺も前線に出るのか。

 最前線は、一年振りか。出撃するのは構わない。勘が鈍っていなければ良いが…。なぜ、俺を指名する?

 しかし、どうやって開ける。そこは何も書かれていないな。いったい俺に何をさせるつもりだ。分からん。


 まあいい。続きだ。中に人間が入れる試験管が並んでいる。どの個体でも良いので、奪取する。その折に繋がれている管やケーブルは外して問題なし。

 処置すべき事柄は無し。ふむ、人質保護と同じ手順でよいわけだな。

 軽量、小柄な個体がいいな。少年兵達が抱えやすいだろう。

 そして、そのままトロッコ列車に乗って脱出。

 脱出後に爆破。侵入口を閉鎖。坑道は爆破せず、別部隊が重機で埋める。なるほど、爆破で坑道を破壊すれば、地表に痕跡が現れる。

 落盤、地割れを起こさない為か。これなれば、地表から坑道を辿ることはできないだろう。

 いや、アメリカの軍事衛星ならば可能だろうか。だが、すぐに衛星が頭上の軌道を通るとは限らない。

 恐らくハーモニーは軍事衛星の通過時間も知っているのだろう。

 衛星通過直後ならば、猶予は多分にある。逃走の安全性は格段に上がるな。

 ドローンを飛ばすにしても、発覚、把握、報告、検討、命令、発進、現着だけでも一時間以上はかかるだろう。

 ドローンは軍事衛星よりも性能が悪い。せいぜい各種カメラで覗くのが精一杯か。熱や音を発しない電気自動車ならば、捕捉されにくいだろう。

 片道、乗り捨てするならば、短所の走行距離の短さや充電時間の長さは問題にならないと。


 それから、現場と坑道に残して良い物は、通信ケーブルのみか。

 通信ケーブルは予め可燃物質が染み込ませてあり、坑道入口から着火して灰にする。これは別動隊が実施か。

 空薬莢はP90に薬莢回収袋を装着のこと。

 しかし、弾痕ですぐにばれるな。P90は専用弾だぞ。これに意味があるのか?

 それならば、世界で最も普及しているAK-47を使えば済む。痕跡を幾ら残しても何の問題も無い。

 ストライクバックの連中には、様々な銃の使い方を叩き込んである。実戦でも問題なく使用できる。

 つまり、P90の弾痕をストライクバックが来たというメッセージにするつもりか。

 だが、即座にバレても困る。空薬莢が無ければ、死体や壁にめり込んだ変形した弾を摘出させ、調査する時間を稼ぐ。報復相手が判明する頃には遠くに逃げている。そういうことだろうか…。


 これで裏業界に名を売るつもりだな。

 P90を標準装備している民間軍事会社は恐らくないだろうからな。

 アメリカの研究所さえも襲撃可能。確かに宣伝文句としては最高だろう。

 世界最強の軍隊。世界の警察気取りの軍事国家だ。そこへ民間軍事会社が喧嘩を売って勝てるわけだ。

 顧客は金を払うだけでリスクを負わなくて良い。これは客がつくな。そして、ハーモニーが高額の成功報酬を請求しても何もおかしくはない。

 金を払いたくなければ、己自身で実行すればいいだけだ。

 アメリカは、国益を害する者を容赦しない。それが間違った情報でも排除する。一つの国を滅ぼしたが証拠は出てこなかったこともあった。

 他国の大統領を武力で誘拐もした。それすらニュースになったのは、最初だけだった。続報は一切でてこない。

 なぜ、どうして、どうなった。それらを知ることは叶わない。

 自由の国と謳っているが、それは権力者にとっての自由だ。まず大統領選挙が不平等だ。直接選挙に見える間接選挙。幾らでも票の書き換えは可能だ。

 大統領すら闇の内閣の操り人形だろう。

 それらは知恵の回る者ならば気が付いている。

 だが、世界の大半と国連は、その蛮行を正義として認めた。歴史がそれを物語っている。

 ゆえにニーズはあるだろう。


 ここまでの資材を全て現場に設置済みとは、つくづくハーモニーの実力には恐れ入る。

 ハーモニーは、ここまで考えてストライクバックを育成させたのだろうか。何とも長大な計画だ。

 となると、兵士の育成ができる人間を紛争地帯で探し、俺をスカウトしたのか。

 リトルがハーモニーの目となって候補者を探す。

 途中で若さゆえの経験不足を露呈していたが、あれも俺へのテストだったのかもしれない。

 癇癪を起した少年兵を御せるかのな。

 そして、俺はまんまとハーモニーの思惑通り、カンパニーでカラーズ中隊を作り、ストリートチルドレンが活用できることを証明してしまった。

 あれらの作戦は、俺がどこまでチンピラを兵士に教育できるか。少年少女を戦場に送り込むことに罪悪感を抱くかどうかの試験だ。

 そして、俺は少年少女を殺してしまったことに対して可哀そうなことをしたとは思うが、悪いことをしたとは一切感じていない。路上生活で苦しんで死ぬよりマシだったと思うくらいだ。

 逆に死傷率を下げる為の指導方法や活用方法を考えてしまった。

 ネービャのように少年少女の死を悼み、悲しみ、心を痛めることするしない。


 どうやら俺は記憶だけでなく、人間性もジャングルに落としてきたらしい。

 今なら何となく分かる。俺はどこかの国の軍人だった。それも特殊部隊員だ。隣で死んでいた人間は恐らく相棒だったのだろう。

 その相棒の顔も声も名前も思い出せない。記憶にない。あのジャングルに落としてきた。

 何かの作戦でジャングルに潜ったのだろう。だが、結果は致命的大失敗。つまり、ファンブルだ。ジャングル・ファンブル・オペレーション。

 それが俺の第二の人生の始まりとなったわけか。

 いったい、俺はジャングルに何をしに来たのだろうか。それとも何かを成したのだろうか。

 わからない。思い出すことはできない。―


「アニョウ君。作戦内容は分かったかね。」

 ボスの声でアニョウは思考の海から急激に浮上した。

「申し訳ない。少し深く考えていました。」

「では、質問があるならば、どうぞ。」

「ハーモニーは、いつからこの作戦を実行していたんだ?」

「ノーコメント。作戦実行に関係ないからね。」

「ふむ。では、なぜ俺が最前線に出る必要があるんだ?」

 アニョウがそう発言するとボスは目を大きく見開き、しばし固まった。

 そして、豪快に笑う。

「はははは。そうか、そうか。うむ、アニョウ君でも気づかないことがあるのか、なるほど。くははは。」

 アニョウは一応上司に当たる相手であるため、静かになるのを待った。

 大笑いをしているので、時間がかかるかと思われたが、次の瞬間にはまじめな表情に戻っていた。声色も普段通りだ。

 感情のコントロールが上手いのであろう。

 ただ、今回は予想外だった為に箍が緩んだのだろう。

「アニョウ君、答えは簡単だ。ストライクバックを構成しているのはどんな人間だい?」

「十歳前後の少年兵だが。」

「そこだよ。網膜は誤魔化せるだろうが、静脈と声紋は子供では鍵になり得ない。なぜならば、研究所には大人しかいないからね。」

「あっ。つまり子供の小さい手のサイズや、声の高い周波数は存在しない人物になり、エラーになるのか。」

「その通り。どうしても大人が一名、鍵役として必要だよ。戦闘もでき、ストライクバックの存在を知り、少年兵が命令を聞く人間となると?」

「俺だ。」

「そう。適任者は君しかいない。君が言葉通りのキーマンになる。」

「サーバーデーターの抽出と同時に俺の生体データを登録し、鍵を解除すれば培養室へと入れる。なるほど、そういうことか。」

「そこは君の想像に任せるよ。できるね。アニョウ君。」

 ボスの表情は微笑んでいるように見えるが目は笑っていない。疑問形ではなく、命令だった。

「了解、ボス。」

 アニョウは、タブレットを机に置き、敬礼をした。

 その姿を見たボスは満足げに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。