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ジャングル・ファンブル・オペレーション ~俺はジャングルに全てを…~  作者: しゅう かいどう


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50.勝利

 アニョウは木の洞に隠れ、少年達の接近を息を殺して待ち構える。

 円環の包囲網は、アニョウが仕掛けた罠により二つの集団へと集約し、背後から接近し十字砲火をかける様子であった。

 全てアニョウの思惑通りだ。敵は全周包囲では同士討ちになることにようやく気づく。

 合流を途中で実施するだろうが、そのタイミングと場所を罠の位置によってアニョウに無理やり合わせられた。

 少年達は気づいていない。自分達の意思で集合し、十字砲火の陣を形成していると思い込んでいる。

 少年達の集団は、アニョウに気づくことなく、ゆっくりと通り過ぎた。

 今、アニョウの目の前には無防備な背中をさらけ出した少年達が展開していた。

 アニョウは、年長者へと照準を合わす。

 こういうものは、指揮官から倒すものと相場は決まっている。リーダーシップを発揮する者がいなければ、軍隊ではなく、ただの烏合の衆に過ぎない。

 アニョウは、P90の引き金を引く。セレクターはフルオートだ。そのまま右側へと照準をスライドさせ、マガジンを撃ち切り、洞にさっさと身を隠す。

 五十発のゴム弾は、少年達の背中で弾け、十数人に激痛を与え、地面に転がす。

 ほんの数秒の出来事。少年達は、棒立ちで周囲を見渡す。どこから撃たれたかも分からないようだ。

 地面に転がされた少年の一人が激痛に耐える為、思わずグリップを強く握った。同時に引き金も引く。周囲にゴム弾がバラまかれ、さらに負傷者が増える。

 それがパニックの引き金となった。

 それぞれが、勝手気ままにP90を撃ち始める。マガジン交換を終えたアニョウの上空をゴム弾が通過し、味方をも巻き込む。

 そこからパニックは更に広がる。疑心暗鬼になった少年達は、怪しげな草むらや呻き声が聞こえた所へと銃撃を加える。

 統制は無い。それぞれが敵を定め、銃撃を加える。

 酷い同士討ちが始まる。

 撃たれたら撃ち返す。そんな悪循環が発生し、次々と少年達はゴム弾の激痛に倒れ伏し、地面で痙攣をする。

 アニョウは、流れ弾を貰わぬ様に洞にしっかり身を隠すだけだ。互いに敵として認識し、味方を消耗していく。


 ものの数分で銃撃は止んだ。周囲から足音は消え、激痛に耐える唸り声と体を悶えさせて草をこする音がジャングルに響いた。

 ―頃合いか。―

 アニョウは慎重に周囲の状況に気を配る。ジャングルの地面に倒れる少年達が数十人。皆、四肢をピクピクとさせており、痛みによる痙攣に身を任せていた。

 アニョウはサッと少年達を見渡す。立っている者は居ない。数的にどこかに隠れていることもなさそうであった。

 アニョウは気絶しているのかピクリとも動かない背の高い少年に近づくとP90のゴム弾を無造作に叩きこんだ。

「いてて!死体撃ちは止めろ!卑怯だぞ!」

 少年は叫んだ。

「死んだふりをするからだ。そんな小奇麗な格好で地面に倒れる奴はいない。周囲を見れば分かる。」

 少年は周囲を見ると皆の服が土埃とゴム弾の破砕痕で汚れていることに気が付いた。

「あっ!くそ!そういうことか!」

「お前もだ。」

 アニョウは体格の良い少年へ一連射を叩き込む。

「あだだだだ!参った!降参!降参だ!」

 体格の良い少年が降参した瞬間、透明の大型シールドに身を隠したネービャがジャングルの中から姿を現し、宣言をした。

「摸擬戦終了。全員の戦死を確認。勝者、アニョウ。」

「という訳だ。摸擬戦の場合、審判による終了宣言がある。それまでは敵が生きていると想定して動くものだ。」

 アニョウは、死んだふりをして逆襲をしようとした少年二人へ声をかける。

「あと、ガッツだけは認めてやる。戦場では最後まであきらめるな。摸擬戦でなかったら、生き残れたかもしれんな。発想は良いが、現実を知れ。綺麗な格好な死体なんて戦場には存在せん。」

「押忍。勉強になったっす。」

「了解。次は負けん。」

 二人は、ゴム弾の直撃を喰らったにもかかわらず、平然としていた。他の少年達が痛みによる痙攣を起こしているにもかかわらずだ。

 ―この二人、見込みがありそうだな。鍛えるのも面白そうだ。―

 そんな考えがアニョウの脳裏によぎった。


 アニョウは、ネービャの案内で教官室へと戻った。

 エアコンの効いた部屋は、外の過酷な熱気と湿気がなく、全身にかいていた汗がスーと引いていく。

 出されたよく冷えたミネラルウォーターを飲みながら、アニョウはネービャに聞いた。

「ガキどもをジャングルに放置して良かったのか。」

「大丈夫だ。下っ端が見張りをやっている。その内、元気になった奴が仲間を担いで帰ってくるさ。それで連帯感が生まれる。ただし…。」

「俺は共通の敵…。面倒だな。」

「しかし、一網打尽、お見事。さすが、リトルが先生と呼ぶだけのことはあるな。」

「リトルを知っているのか?」

「おう!ここの格闘教官をしているぜ。まあ、ボスの仕事の合間にしか来ないから不定期だがな。それでもガキどもに人気はある。」

「ほう、意外だな。あいつのことだから、殴る蹴る投げるを一方的にしているものだと思っていた。」

「いや、その認識でいい。ただ、ガキにとって乳のでかい可愛いお姉さんと戯れられる訳だ。どさくさまぎれにどこを触ろうが怒られない。

 何せ、リトル自身がそんな些細なことを気にしてない。」

『リトルに羞恥心は無い。』

 アニョウとネービャの声が重なる。互いにニヤリと笑い、視線を交わす。互いの距離感が縮まった様だ。

「で、子供達はそれを逆手にとって、楽しんでいる訳か。若いな。」

「アニョウは、リトルとねんごろになったのかい。長期間一緒に居たのだろう。ガキどもが聞いたら、さらに敵意を燃やすぜ。」

「いいや。アイツから女を感じない。それに嫁さんも一緒に居た。それで手を出す様な不義はしない。」

「アニョウはかみさん持ちか?意外だな。傭兵稼業で独身だと思っていたぞ。」

 ―嫁と言っても書類上のことだが、説明は不要だろう。―

「そりゃ、かみさんと一緒じゃ浮気はできねえな。ご愁傷様。あんな良い女に触れられねえなんて可哀そうによ。」

「四肢は筋肉が発達しているが、柔軟性に富んでおり、胸は非常に柔らかいぞ。」

「アニョウ、なんで手前が知っているんだ。」

「俺の格闘の先生だからな。嫌でも体と体が接触する。それに互いの唇が首筋や胸に当たることも日常茶飯事だぞ。」

「何だその羨ましい状況は。俺はここで女日照りにあっているというのに。悔しい。」

「少女に手を出していないのか?ここの少女なら街娼に立っている年齢だろ。」

「俺はアリコンじゃねえんだわ。十代前半のガキ相手に立たねえよ。アニョウはいける口か?」

「命令や必要があれば、いける。無論、自分から食べる気は無い。」

「それを言えば、俺も同じか。ボスが痛めつけろと言えば、やるしかないからな。」

 ネービャはミネラルウォーターを一口飲むと砕けた雰囲気を振り払い、真剣な目でアニョウの上から下を嘗め回す様に見た。

「俺は男に興味はないぞ。」

「ちげえよ。俺も男に興味ねえよ。」

「よし、決めた。ボスの提案を飲むことにした。」

「何の話だ。俺に分かる様に言ってくれ。」

「教官採用試験、合格おめでとう。今からアニョウはここの教官だ。戦術と戦略を主にガキどもに叩き込んでくれ。」

「人に教える程の学は無い。」

「兵隊を育ててくれたらいいんだよ。ここは兵隊育成学校だよ。できるだろ?」

「我流で良ければ、一人前の兵士に鍛え上げることはできる。途中で死者が出るだろうが良いのか。」

「問題ない。補充は幾らでも可能だ。この国は、ストリートチルドレンで溢れてる。調達は簡単だ。

 だが、できれば死ぬ前にクビにして欲しいがな。他の部署に回す。」

「他の部署?」

「運び屋、盾屋、運転手、鉄砲玉。まあ、何かしら仕事はあるって話よ。」

「盾屋と鉄砲玉は、いやな感じがするな。」

「盾屋は鋼板入りのアタッシュケースで護衛者を危険から守る仕事だな。言葉通り、自分自身を盾にする。攻撃は考えない。ひたすら守る。

 鉄砲玉は、想像通りだ。」

「そんな話を聞かされたら、全員を兵士に育てる義務を感じるぞ。」

「そこはアニョウに任せるさ。じゃあ、明日からよろしくな。アニョウ先生。」

 ネービャは右手を差し出す。アニョウは躊躇いながら握り返す。

 契約は成立した。アニョウは、ここで少年達を一人前の兵士に鍛えることになった。

 恐らく、カンパニーの思惑通りなのだろう。

 アニョウの得意分野で力を発揮させる。理に適っていることはアニョウ自身が感じていた。

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