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## 第四話 君は誰なんだ

# 『生きることにつかれた』


## 第四話 君は誰なんだ


「君は、一体何者なんだ?」


電車が去ったあと。


悠人は思わず口にしていた。


少女は少し驚いた顔をした。


そして。


困ったように笑う。


「どうしてそう思ったんですか?」


「さっき……」


悠人は言葉を探す。


言えばおかしいと思われるかもしれない。


だが。


確かに見たのだ。


電車の窓に。


少女の姿だけが映っていなかった。


「いや……気のせいかもしれない」


少女は何も言わなかった。


ただ静かに夜空を見上げる。


その横顔は。


どこか寂しそうだった。


---


「ねえ、悠人さん」


少女がぽつりと呟く。


「人は死んだらどうなると思いますか?」


突然の質問だった。


「さあな」


悠人は苦笑する。


「誰にも分からないだろ」


「そうですね」


少女はうなずく。


「でも私は――」


そこで言葉を止めた。


まるで続きを言ってはいけないかのように。


---


数日後。


悠人は少しずつ変わっていた。


仕事帰りに本を読む。


休日に散歩する。


昔の友人へ連絡してみる。


どれも小さなことだ。


だが。


確かに前へ進んでいた。


そして気づく。


少女に会う時間が、


一日の中で一番楽しみになっていることに。


---


ある日。


駅へ向かう途中。


悠人は花屋の前で足を止めた。


そこには。


白い花束が並んでいた。


ふと。


少女のことを思い出す。


「似合いそうだな」


そう思った。


自分でも理由は分からない。


ただ。


彼女に渡したくなった。


---


ホームに着く。


少女はいつもの場所にいた。


「こんばんは」


「こんばんは」


悠人は花束を差し出した。


「え?」


少女が目を丸くする。


「別に深い意味はない」


悠人は照れくさそうに言う。


「いつも話聞いてもらってるし」


少女は花束を見つめた。


そして。


なぜか泣きそうな顔になった。


「どうした?」


「……私」


少女は震える声で言った。


「花をもらうの、初めてなんです」


その目から。


ぽろりと涙が落ちる。


---


「ありがとう」


少女は何度もそう言った。


まるで。


ずっと欲しかったものをもらった子供のように。


悠人は不思議だった。


こんなことで泣くなんて。


だが。


彼女の涙はとても綺麗だった。


---


その帰り道。


悠人はあるものを見つける。


駅の片隅。


古い掲示板。


そこに貼られた色あせた写真。


二十年近く前のものらしい。


地域のイベントの写真だった。


そこに写っていた少女を見て。


悠人は息を呑む。


「……え?」


写真の中。


笑顔で花束を持つ少女。


それは。


今ホームにいる彼女と、


まったく同じ顔だった。


年齢も。


姿も。


何一つ変わっていない。


---


写真の下には名前が書かれていた。


**『天野 美咲 享年十七歳』**


そして。


その文字を見た瞬間。


悠人の全身から血の気が引いた。


享年――。


亡くなった年齢。


つまり。


彼女は二十年前に。


すでに――。


---


### 次回


## 第五話 会いたかった


二十年前に亡くなっていた少女。


それでも毎日現れる理由とは。


そして美咲が抱え続けていた、


たった一つの後悔が明かされる――。


涙の真実が、静かに動き始める。


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