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## 第二話 君が忘れたもの

# 『生きることにつかれた』


## 第二話 君が忘れたもの


翌日。


悠人は仕事を終えたあと、


気づけば駅のホームへ向かっていた。


「俺、何やってるんだろうな……」


自分でも笑ってしまう。


会ったばかりの少女に会いに行くなんて。


だが。


心のどこかで期待していた。


そして。


昨日と同じベンチ。


少女は本当にいた。


「来ましたね」


まるで分かっていたかのように笑う。


「来るつもりはなかったんだけどな」


「来たじゃないですか」


「それはそうだけど」


少女はくすっと笑った。


その笑顔を見ていると。


少しだけ肩の力が抜ける。


「今日は何の話だ?」


悠人が聞く。


すると少女は突然尋ねた。


「最後に笑ったのはいつですか?」


「え?」


「心から笑ったのは」


悠人は答えられなかった。


昨日のように。


言葉が出ない。


一年前?


三年前?


もっと前かもしれない。


「覚えてないな」


正直に答える。


少女は責めなかった。


ただ静かにうなずく。


「じゃあ、最後に夢を語ったのは?」


「それも覚えてない」


「好きなことは?」


「ない」


「やりたいことは?」


「ない」


質問は続く。


そして。


悠人は気づいた。


自分が何も持っていないことに。


いや。


持っていたのに。


全部置いてきたのだ。


---


「俺さ」


ぽつりと話し始める。


「昔は教師になりたかったんだ」


少女は黙って聞く。


「子供が好きだったから」


「素敵ですね」


「でも無理だった」


試験に落ちた。


家計も苦しかった。


気づけば別の仕事についていた。


最初は『いつか再挑戦する』と思っていた。


だが。


一年。


二年。


五年。


十年。


いつの間にか諦めていた。


「夢なんて叶わないだろ」


悠人は笑った。


自嘲するように。


しかし少女は首を振る。


「違います」


「何が?」


「夢が叶わなかったんじゃありません」


少女はまっすぐ見つめる。


「夢を見るのをやめただけです」


その言葉に。


胸が痛んだ。


図星だった。


あまりにも。


---


帰り道。


悠人は公園の前を通った。


夕暮れ。


子供たちが走り回っている。


先生らしき若者が笑っていた。


その光景を見た瞬間。


胸の奥で何かが揺れた。


忘れたと思っていた。


諦めたと思っていた。


でも。


本当は違った。


まだ少しだけ。


心のどこかで残っていたのだ。


教師になりたいという夢が。


---


その夜。


悠人は押し入れを開けた。


奥から古い箱を取り出す。


中には大学時代のノート。


教育学の本。


そして。


夢を書いた紙。


そこには震える字でこう書いてあった。


**「誰かの希望になれる先生になる」**


悠人はしばらく見つめた。


そして。


静かに笑った。


本当に久しぶりに。


少しだけ。


ほんの少しだけ。


笑うことができた。


---


### 次回


## 第三話 小さな一歩


「今からでも遅くないと思いますよ」


少女の言葉に背中を押される悠人。


しかし現実は甘くない。


年齢、仕事、不安――。


それでも彼は、止まっていた人生を動かすため、一歩を踏み出そうとする。


そして少女の正体にも少しずつ迫っていく――。

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