## 第一話 止まった駅
# 『生きることにつかれた』
## 第一話 止まった駅
「生きることに、疲れたな……」
雨が降っていた。
駅のホーム。
会社帰りの人たちは足早に通り過ぎていく。
誰も俺――
**藤崎悠人、三十二歳。**
そんな俺に気づかない。
朝起きて。
仕事へ行って。
怒られて。
帰って。
寝る。
また朝が来る。
そんな毎日を何年も繰り返していた。
夢もない。
恋人もいない。
友達とも連絡を取らなくなった。
「何のために生きてるんだろうな……」
ぽつりとつぶやく。
もちろん答える人はいない。
その時だった。
「なら、休めばいいじゃないですか」
突然、隣から声がした。
見ると。
ベンチに一人の少女が座っていた。
白いワンピース。
不思議なほど穏やかな笑顔。
年齢は十七、十八くらいだろうか。
「休む?」
「はい」
少女は当たり前のようにうなずく。
「疲れた人は休むんです」
「そんな簡単な話じゃない」
悠人は苦笑した。
「仕事もある。生活もある」
「でも、心が壊れたらもっと大変ですよ」
少女は空を見上げた。
雨はまだ降っている。
「人はね、頑張ることは教わるけど、休むことは教わらないんです」
その言葉が。
なぜだか胸に刺さった。
悠人は黙った。
少女は続ける。
「私はね」
「うん?」
「疲れた人を探してるんです」
「は?」
「だって疲れてる人は、自分の大切なものを忘れてるから」
意味が分からない。
だが。
不思議と嫌ではなかった。
少女は立ち上がった。
「明日もここに来ます」
「え?」
「来ても来なくても自由です」
少女は微笑む。
「でも、一つだけ」
「何だ?」
「今日、生きるのをやめなかった自分を褒めてください」
そう言って。
彼女は雨の中へ消えていった。
悠人は呆然と立ち尽くす。
変な人だった。
本当に変な人だった。
だが。
家へ帰る途中。
ふと気づく。
今日一日。
誰にも言われなかった言葉を。
あの少女だけが言ってくれた。
――生きていていいんだと。
その夜。
悠人は久しぶりに少しだけ泣いた。
苦しくて泣いたんじゃない。
少しだけ。
救われた気がして泣いたのだった。
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### 次回予告
**第二話 「君が忘れたもの」**
毎日駅に現れる謎の少女。
彼女は悠人に問いかける。
「最後に笑ったのは、いつですか?」
疲れた心が少しずつ動き始める――。




