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「前にダンジョン・コアを発動させた人はどうなったの?」
セディはナナに聞かせたくないのか一瞬言葉を詰まらせた。
「……飲み込まれたそうです」
そっか……ダンジョン・コアを発動させるのはきっと最終ボスを倒した人。
だって、英雄と飛ばれる程の名誉だからね。
そういう人を飲み込むことで新しい強敵を生み出すのだろうな。
さらに最深部に到達するのが困難な迷宮を造る為のシステム。
さすが悪魔のお城だよ。
底意地の悪い。
という事は、マジで逃げないと死にそうね……
イチゴちゃんにコアを中心地に転送してもらえたら楽だけど、能力が発覚する事でイチゴちゃんが不利益をこうむるのは避けなければ……
「そういえば、スタンピードは大丈夫だった?」
「2度目だったからかはわかりませんが、迷宮以外ではほとんどが発生しなかったので一般人への被害は最小限に抑えられました」
「そっか……」
短期間で迷宮2つ分のエネルギーがオーバーフローしたのに、どういう事だろう?
うーん、うーん……異世界に行っちゃった?
迷宮遺物により異世界が複数ある事は想像がつく。
悪魔のお城がこの世界にだけ存在するとは思えない。
繋がっているのではないだろうか?
エネルギーは異世界の迷宮に流れ込んだと考えればスタンピードの規模が抑えられたのも辻褄が合う?
ああ、こういう話はグレアムに聞いて欲しいんだけど。
………………あ。
グレアムに連絡するの忘れてた。
いや、妖精界にいたから【文蝶】飛ばせなかったし!
迷宮攻略時にグレアムから攻撃されたからアデル達からはもう仲良くしちゃいけませんって言われてたし!
あれは演技だって言っても信じてくれなくて、妖精さんに頼んでまで【文蝶】を飛ばすのは何となく躊躇われたんだよ……
カリンちゃんにコアとオーブの形をした鉄の塊を出してもらい、3回投げてみたが全部かなり流された。
「私がバリア張って中心地に落ちるように促そうか?」
「「「「「「それだっ!!!」」」」」」
魔導飛行船が下降しながら加速した。
速度は時速100km。
開きっぱなしの乗降口の側でヒューバートとアデルがそれぞれコアとオーブに鍵を挿す。
投下ポイントまで、3…2…1…
「「せいっ!」」
鍵を回して急いで投げる。
バリアをロート状に展開し、中心地へ軌道修正。
ちゃんと吸血鬼の始祖がいる建物の真上に………ちょっとズレたけど許容範囲だろう!
コアとオーブがバリアの筒の部分で多少乱反射したが、すぐに落ち着き真下へ。
あと少しで地上に到達するかという時、コアとオーブがカッと光を放ち空中で止まった。
コアを覆っていた金属の輪っかが拡大回転しながらゆっくり開き、ピタリと静止した。
と、思ったら今度は勢いよく煙を吹き出した。
いや、あれはエネルギーの塊だ。
それはうねり、加速し、竜巻となった。
稲光も発生している。
魔導飛行船が引っ張られるようにガタガタと揺れた。
やっべ…っ! あれは巻き込まれる!
時速100kmで飛んでなきゃ一瞬で粉々だよ!
バリアは消しちゃってたけど、あっても瞬殺だっただろうよ!
竜巻が地上の何もかもを飲み込んでゆく。
なのに飲み込んだ物を空に巻き上げるのではなく、中心に吸い込んでいるようだ。
同時にオーブからも地面を這うように煙が噴き出していた。
竜巻に吸い上げられることもなく、中心から外にじわじわと広がっている。
空にも暗雲が立ち込めているが、それをひっくり返したように地上でもモヤが渦巻いている。
これが人工の現象だと……?
まるで世界の終末が始まったかのようだ。
これが、7日続くのか……
シロクマちゃん達がスーパーセルみたいな竜巻を見てテンション上がってる。
窓に張り付いて瞳をキラキラさせてるよ。
台風の日の小学生かな。
はいはい、記念撮影しとこうね。
あ、なんでめくれ上がった傘持って……
台風ごっこ?
ハイチーズ。
パシャリ。
「これは……居住区もいずれ巻き込まれそうですね。地上班に住民の退避を指示しましょう」
深刻な表情で【文蝶】を飛ばすセディ。
住民は約1万5000人もいるらしい。
コープランドは壁がなく貿易都市でもあったので災害前の人口はおよそ2万人だった。
被災した人だけでなく新しい迷宮都市に住めるかもしれないと期待してきた人が押し寄せて来て、大地震でかなり被害があったにもかかわらず人口がかなり回復していた。
冒険者もかなり移動してきたので居住区づくりは大きな事故もなく進められたらしい。
全部飲み込まれそうだが……
後の事は地上班に任せ、飛行船はしばらくの間遠巻きに竜巻の周りを旋回した後、ハーキュリーズ試験飛行場へと帰還した。
気疲れしたので用意してくれた部屋で休もうとしたのだが……
「実験しよう!」
ジュードの発言が鶴の一声となった。
「小型高速艇なら完成してるわよ、兄様!」
どこからともなくメリッサが現れサムズアップした。
「でも、ボール発射機は手が回らなかったから、人力でお願い」
「ボール発射機ー?」
「ピッチングマシンならー」
「もってるよー」
あれは何階層だったかしら?
宝箱を開けた時に中途半端に一部だけが見える状態だったから最初はスクラップかと思ったが、シロクマちゃん達が引っこ抜いたらピッチングマシンだった。
その時初めて迷宮の宝箱は箱より大きなモノも出てくるのだと知った。
マジックバックと似た性能なのかもしれない。
米俵はミチミチだったのに……
実験に興味がある一同は直線の長い道路に移動した。
まず、ピッチングマシンを地面に置いた状態でボールを飛ばす。
うん、普通に速いし遠くに飛ぶね。
次に、小型高速艇という魔導飛空艇の小型版、というか戦闘機だよね、コレ……
「スゴくない?小型化って難しいんでしょ?」
魔導飛行船を造ったばっかりで小型化の改良にも成功するなんて…!
「ふっふっふ、面白そうな実験をするって聞いて張り切っちゃったわ」
メリッサもか……
私は文系だったからちょっとよくわからないテンションだ。
小型高速艇は複座式。
後ろの座席にマシンを乗せて適当に縛り付ける。
いや、ちょっと、時速100kmで走るのにそんな雑に乗せて人間は立ち乗りですか!?
あ、一応命綱はあるのね。
みんなが自分がボールを投げたいとマシンに集まっている。
「言っとくけど、地面で見ている方が面白いよ?」
ジャンケンで負けた人がボール係となった。
結果、アデルの負け。
小型高速艇の操縦は専門のパイロットにお願いして、いざ実験開始!
パイロットがスピードを上げ、100kmに達した。
パイロットが合図する。
アデルがマシンにボールを込める。
ボールはみんなの目の前でポトリと落ちた。
うぉぉぉぉぉぉっ!!と歓声が上がる。
すげぇ!とか、本当に落ちた!とか口々に叫ぶ。
アデルから見たら普通にボールが飛んでいったようにしか見えない為、みんなの興奮に疑問しかない。
戻ってきたアデルは誰かボール係やれ!とプリプリしている。
自分だけ仲間外れにされた錯覚を覚えたのだ。
が、今見たモノは本当か!?とみんなもう1度見たくて挙手する人はいない。
もう1回ジャンケンをして決めた。
そして何度も何度も繰り返す大人達+3匹……
お次は走りながらすれ違いざまにボールをパスする実験も結果は聞いた通りでパス出来ない。
ここぞとばかりに『ノーコン』コールした。
いやいや、無理矢理角度つけてパスしたら実験にならないから。
素直にまっすぐパスしなさいな。
さらに運転もしてみたいと今度は操縦席も奪う。
自分でやってみないと納得しない子供な大人達はこの実験も繰り返した。
「私も見てみたかったです……」
小型高速艇のパイロットさんが喧騒から離れた隅っこで寂しそうにしていたので、キッズカメラで録画しておいた実験動画を見せてあげた。
瞳キラキラのおにぃさん。
では、スーパースローでもう1度。
パイロットさんは「この素晴らしい実験に関われたことを誇りに思います!」と、さわやかな笑顔で子供な大人達のお世話をしにいったのだった。
遊びつくした一同は、迷宮が完成するまで飛行場の迎賓館に泊めてもらう事になった。
セディはお仕事があるというので魔導飛行船でお城に帰っていった。
お城には飛行船の離発着場を造ったのだそう。
今は王族だけだけど、一般への普及も早そうだ。
そして1週間後。
早朝からコープランドへ向かった。
飛行船から降りて、ギリギリまで近づく。
迂闊にも近づいて犠牲になった人がいるらしい。
よって安全の為に人が近づけそうな場所にはバリアが張ってあるのだ。
それにしても、でっか!
相変わらずサイクロン状態。
モヤはドーム状に膨れ上がり、かなり濃いので中は窺えない。
「ところで、騎士とか軍人さんがいっぱいいるみたいだけど?」
「今日、迷宮も都市も出来る予定だからな。民衆が押し寄せてパニックにならないように警備の為に呼ばれてんだよ」とアデル。
あ~、なるほど。『群衆事故』ってヤツね。
既に完成予定の噂を聞き付けたのか、人が集まり始めている。
我先にと押し寄せたら確かに危ない。
1時間ほど見ていただろうか。
空気が変わったと思った。
竜巻が地面の方から消えてゆく。
スウっと、まるで天に上るように消えていった。
竜巻が消えた事で雲が晴れ、陽の光が差した。
地面のモヤも霧散し、全貌が見えた。
これは………
「崖だー!」
「断崖だー!」
「絶壁だー!
そう、まず目に飛び込んできたのは崖!
地面が隆起してテーブルマウンテンみたいになっている。
「どこから入るの!?」
100メートルくらいある!? 一般人は登れません!
って、シロクマちゃん達が崖をよじよじしてる!
「こちらに入口らしきものがあります!」
向こうで騎士さんが手を振って合図している。
アデルが次期領主である事は騎士の間では周知されているようだ。
登りたかったとぶーぶー言うシロクマちゃん達を連れて行ってみる。
確かに、立派な門があった。
「人数を揃えて外周をチェックしろ。他にも門があったらバリアで塞いでおけ」とアデル。
確かに、こんな風に門が開いていたら、誰かが勝手に入りそうね。
背後がガヤガヤしてきた。
結構な人数が傍まで集まってきたみたいだ。
「はっ」
騎士さんは手早く【文蝶】を飛ばした。
「よし、じゃあ、オレ達は中に入ってみるか。何が起こるかわからねぇ、迷宮だと思って行動しろよ」
「そうね。魔獣がいるかもしれないし」
「お前等は合図があるまで待機だ。が、いつでも出動できるように準備を怠るな」
アデルの言葉に騎士達が敬礼した。
アデルってばいっちょ前に指揮官やってるよ。
ほっぺもにもにしてきたガキんちょとは思えないねぇ。
立派に成長したわぁ。
いつもはアデルの方がオカンを発動していたが、今だけはナナがオカンになるのだった。
門をくぐる。
整備された洞窟の灯は炎ではなく、魔道具による光だった。
ほどなくして広い空間に出た。
そこにはまたしても門があった。
だが、それはどう見ても普通の門ではなく、エゼルちゃんにエルフの国に連れて行ってもらった時に使用した転移の門に似ている……
「これくぐったら転移しそうだね」
「そうだな。これで上に行くのだろう」とヒューバート。
私は万が一離れてしまわないようにシロクマちゃん達と手を繋いだ。
まあ、そんな心配は杞憂だった。
門の先は広場で、その先には公園のように整備された森が広がっていた。
後ろを振り向くと門があり、その先は断崖絶壁。
ただし、結界が張ってある。
落下防止がちゃんとついていてよかった。
事故だけじゃなく、事件も多発するところだった。
証拠隠滅し放題……恐ろしや、恐ろしや……
森を抜けると、今度は草原に出た。
そして、その先には街があった。
魔法都市……
一目見て、そんな言葉が頭に浮かんだ。
ゴシック調っぽい正統派の街並み。
ただし、そこかしこに便利が仕込まれている。
暗くなったら自動で明かりが灯る街灯。
上下水道や消火栓だけでなく、緊急放送などの通信など諸々が魔法で動いている。
そして一番の目玉は『浮島』だ。
大きな岩の上に建物が建っている。
それがいくつも浮いている。
ファンタジーのド定番の1つだよねぇ。
ワクワクする!
ラムネちゃんに【千里眼】で街全体をスキャンしてもらい、魔獣がいない事を確認。
その後、騎士団や錬金術師や建築関係の専門家などで徹底的に街を調べ、管理運営する為の資料作りにかなりの日数を費やし、春、やっと一般開放される事となった。
ただし、迷宮への出入りはまだ禁止されている。
よって、幼女+3匹はまだ未完成の街をフラフラと探検していた。
「よう、チビ」
街中でいきなり頭を掴まれた。
が、この声は知っているぞ。
気は進まないが、ギギギと首を回し相手を確認する。
「はぁい、またお会いしましたね、おにぃさん……」
やっぱり、『ルプス』の青髪さんがうんこ座りでメンチ切っていた……




