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初めてアデルに会った時とそっくりな状況だった。

シロクマちゃん達もあの時と同じように青髪さんの腕を蹴り上げたのだが、相手の正体に気付いて全身の毛を逆立てた。


「おまえー!」

「樹海のー!」

「ちんぴらー!」


「おーおー、口悪ぃな。いっちょ前に威嚇か?」


3匹の怒りを全く意に介さない青髪さん。

一方、シロクマちゃん達も全く引かない。

いや、相手にされていないコトに余計にぶちキレている。

あー…どうしようかな、コレ……

こんな人目の多い場所で接触してくるなら、誘拐ではないのだろうし……


「つーか、お前等よくも俺達に無いコアを探させてくれたな、ぁあ!?」


「ぷっ、ざまぁ」


「んだと、ゴラぁっ!?」


「なんで小声なの?」


「そりゃ、てめぇ、煩くしたら注目されるだろうが」


「こんな大通りでしゃがんでる時点で大注目だよ」


青髪さんは舌打ちした。


「で? お前ら、何で生きてんだよ?」


「ひみつー」

「教えるワケー」

「ないよねー」


「やっぱ、トレントがお前らを逃がしたのか……」


(おかしいと思ったんだ。あの時、トレントは攻撃ではなくチビを取り返そうとしていたようだったからな)


「どうやったんだ? 第4皇子がお前に【文蝶】を飛ばしたが宛先不明で戻ってきたぞ」


「あー…そうなんだ……」


グレアムに連絡できないままずるずると今までやってきてしまった。

もう迷宮作っちゃったし、【文蝶】飛ばしてもいいかしら?


私が違う事を考えてほけっとしていたからか、青髪さんは『あ、コイツに聞いても無駄だ』って顔をした。

失敬な。


「そっちこそ、よく街に入れたね?」


まあ、隣国の商人に出店権利を出さないだけだから、青髪さんが何処の出身であろうと犯罪者じゃなけりゃ入国は出来るよね。

青髪さんが『ルプス』だとしても、表の身分は一般人だろうし。


「別にやましい事なんかねぇからな」


いやいやいや、こっちは殺されかけたんですけど!?

しかも『ルプス』って裏組織なんでしょ!?

お揃いの制服なんて来ちゃってさ!

…あら? 今日は黒服は来ていないけどプライベート?

んなワケないか。


「1人のようだけど、もしかしてわざわざ文句言いに来たの?」


「んな訳あるかっ。仕事だ、仕事。ちなみに他の奴らは自由行動中ってだけでその辺にいるぞ」


仲間ってあの時の5人かな?

だとしたら剃り込みさんもいるよねぇ。

鉢合わせたら蹴られるのでは!?

……仕事って私達を消しに来た!?

いや、だったらもう殺されてるわね。


「え、もしかして迷宮を攻略しに来たの?」


「そりゃそうだろ。あ、お前らの暗殺なんかじゃねぇから安心しな」


「……誘拐とか?」


「お前、マークは外されたぜ。何せ扱いにくいらしいからな」


「そう……」


狙われなくなったのはいいけど、それはつまり聖女の数が揃ったって事でしょ?

『コルウス』の計画が次の段階に入ったのでは……?

この国はどうなっているんだろう?

貴族の誰かは教会の手の者だろうけど、セディは秘密結社の存在も知っているし王族は無事だよね?

洗脳されてない?

危ない思想に染まってない?

賄賂渡されて鞍替えしてない?


私が普通に対応しているからかシロクマちゃん達は警戒を少し緩め、私の後ろに隠れて顔だけ出して青髪さんを睨んでいる。


「それだけか?」


「他に何か?」


「そりゃ、もっとこう…『この迷宮だけはやめてー』とかないのか? 嫌な顔の1つでもしてもらわねぇと張り合いねぇだろ。我慢すんな。ほら、カモ~ン」


「そんなん言うワケないでしょ。そもそも迷宮は人間のモノでもないし、街は出来たんだから満足してるのよねぇ」


ダンジョン・コアが全部揃わないと天国の門(地獄の門だと思うけど)が開かないのなら、『ルプス』がどこかを攻略している時にこっそり別の遠くの迷宮を踏破してコアを隠しちゃえば『コルウス』の目論見は潰えるしねぇ?

スタンピードの問題は考えないといけないけど……


「……は?」


「もともと、被災者の為に街を作るっていうから協力してたトコもあるし」


コアの収集があなた達の目的の1つであると知っている事は伏せておくよ。


「もういい? 明日は創立祭なんだから、騒ぎ起こさないでよね」


そう、やっと市民が全員移住できた為、新しい領主のお披露目パレードや憲章が読み上げられるなどの式典があり、最後は広場に出店が並び食と音楽と踊りでお祭り騒ぎをするという創立祭が行われるのだ。

だから、大通りや広場では関係者が忙しそうに準備に取り組んでいる。


わ、私達も勇者パーティーのメンバーだという事でパレードに出るのよぉぉぉ。

しかも、夜は宮殿で夜会が開かれるから出席しないといけないとか……

なんだかな~……


「待て待て、今のは新しい領主の考えか?」


もしかしてアデルが新しい領主だと知ってる?

何だかいろんな情報が駄々洩れだよね、この世界。


「知らないわよ。アデルとはずっと会ってないもん。じゃあね」



アデルは何の準備もなく急に迷宮都市の領主になった。

代官が派遣されて学んでいるとはいえ、何もかもが初めて尽くしで天手古舞よ。

災害前に働いていたこの土地の文官や騎士も被害に遭って数が減った。

他所から募集したりしたけど、寄せ集めの集団では連携などが上手くいかない。

そもそも、迷宮都市の独特の施設設備はまず使い方から手探り状態。

私も最初は使い方の把握に駆り出されたわ。

我、幼女ぞ……

まぁ、ファンタジーテクノロジーを手探りで解き明かすのは楽しかったけど……


だが、皆が使いこなせるワケではなく、それなのに迷宮誕生はド派手で日数もかかったので周辺諸国には完成前に知れ渡ってしまった。

だから、経済制裁や賠償などの対応という余計な仕事も同時進行せざるを得ない。

お陰でサイラスは当初の予定の護衛騎士ではなく、アデルの補佐をしている。

レスターは騎士団のトップ。

生き生きと団員をしごいているらしい。

実は2人ともお貴族様だったのよ。

たまにお上品さは垣間見えていたけど、アデルにもタメ口きいていたけど、ちっとも疑わなかったわぁ……

ちなみに、領主の宮殿は浮島の1つである。


私達はクラン『エピタフ』の支部(これも浮島)に部屋を貰えたから衣食住には困っていない。

世界中の支部からクランメンバーが少しずつ移ってきたので準備や当面の運営は彼らがやってくれているので心配はない。

ただ、新しいクラマスはまだ決まっていない。

やっぱり、人の上に立つにはひとかどの人でないと誰もついてこないから。


ヒューバートなら誰もが認めただろうけど、彼はこの新しい迷宮都市に新設する冒険者ギルドのギルドマスターになった。

彼もまた突然就任したので切り盛りに四苦八苦だ。


そうそう、『デルタ8』のギルドから受付にぃと買取にぃがこっちの新ギルドに来ちゃったのよ!

ヒューバートは2人にスパルタ教育されているとか。

ちなみに受付にぃの名前がエリオットで、買取にぃの名前がクラウスだ。

名前知らないって言ったらちょっと泣かれた。

ごめんて。


エゼルちゃんはもう働きたくないとエルフの国に帰ったらしい。

サボリ魔だったもんねぇ。

でも、主要人物が一遍にいなくなって大丈夫かと聞いたら、本部から人員が派遣されたらしい。

そういえば冒険者ギルドって世界規模の大組織だった。

人材は豊富だろう。


それから、パーティー『アルゴス』は解散した。

クラン本部をロイド達が受け持つことになったからだ。

クラマスはロイド。

サブクラマスは誰も立てていなかったけど、これを機にメイソンがなった。

ノエルも幹部だ。


そんなワケで、私だけする事がない。

迷宮はまだ解放されていないし、冒険者ギルドの依頼もまだ特にないし。

ので、幼女+3匹はプラプラしていたのだ。



「………ついて来ないでよ」


青髪さんがずっと後ろにいるんだけど。


「まあまあ、菓子でも買ってやるから」


案件だよ!

何考えてんのよ!?

私達に腹立ててたんじゃなかったの!?


「ほんとー?」

「やたー!」

「よっしゃー!」


こらこら、速攻で餌付けされとるがな。

私が相手の思惑が読めずに胡乱な目で沈黙していたらシロクマちゃん達がひゃっほいと小躍りしだした。

仕方ない。

シロクマちゃん達の為にお菓子をたかるか。


早速オープンカフェに入った。

シロクマちゃん達は遠慮なくケーキセットを注文した。

私も乗っかった。


「まずは自己紹介でもするか。俺はザック。探索者だ」


「私は……」


ここで自己紹介をすると、もれなくシロクマちゃん達が名乗るだろうと思ったが、追加のお菓子を注文するべくメニューを真剣に覗き込んでいたので安心して続けた。


「…ナナです。冒険者です。で? 何か聞きたい事があるんでしょ?」


「話しが早くて助かる。迷宮について聞きたいんだ」


ああ、街すら解放されていない時に調査したから流石にスパイはまだ居なかったか。


「そう言われても、明後日には解放されるからねぇ」


「そもそも、何でまだ解放されてねんだよ?」


「最初はね、どこに迷宮があるのかもわかんなかったんだよ」





それは初めて迷宮都市に入った時のコト……


「まずは向こうに見える一番高い建物を目指そう!」


あんなに目立つんだから重要度は高いだろう。

大通りを進みながら街を眺める。

まるで映画を見ているみたい。

生活の為の街というより魅せる為に作られた、でも偽物ではなくて……

語彙力が足りないわ。


みんな色々考えていたのだろう、口数少なく歩いて辿り着いた。

中心街は高層ビル群だった。

中でも一番高いビルはまるでエンパイアステートビルのよう。

中に入ると既視感があった。

これ、ターミナルだ。

この建物から浮島に行くのでは?


「そういえば、迷宮ってどこにあるのかな?」


「浮島じゃないか?」とアデル。


「そうなの? 普通に建物が見えてたけど……」


「まさか、入口探しから始めないといけないのか!?」


そこからがホント大変だったのよ。


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