↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/80

77


2ヶ月後、ナナ達は人間界に戻った。

といっても、妖精界では6日だったけど。

すっかり寒くなっていた。

てか、人間界では年が明けていたんだけど!

タイムスリップした気分だよ!

なんかすっかり事後処理がされていたしね!


整えたのはもちろん怒髪天なセディを中心とした王侯貴族達。

緑の魔女にコアを貸し出す事は仕方ないと考えていた。

ならば、2ヶ月の間、コープランドの被災者達に絶望させない為の措置が必要だ。

なにせ、彼らは新迷宮都市での生活を夢見て崩壊した街に留まっているのだから。

待ち望んでいた商品が発売延期になりました!日にちは決まってません!と言われた時の気持ちはとても切ないものね。


それに、貿易都市だったコープランドが破壊され、物流は滞った。

それなのに港の再建はされておらず、この地が新迷宮都市の最有力候補地だと言っているようなもの。

これからも何もしないままでは、この地は捨てられた、もしくは逆に何かがあると誰もが思うだろう。

セディ達が行ったのは街づくりだった。




今回、ノア王国に喧嘩を売ってきた周辺諸国には様々な制裁を用意した。

直接的な戦闘はなかったとしても、スタンピードが発生するとわかっているのに国境に戦力を割かざるを得なかった賠償はキッチリと頂く。


・バカ高い関税。

今後、パンデミックが起きようとタミフルのように無償の提供は一切行わないと言われれば飲むしかない周辺諸国。


・輸出入制限。

迷宮がないノア王国は魔石は他国から輸入していたが、完全に取引を停止した。

しばらくは国内で品不足と価格の高騰などが発生するだろうが、2ヶ月と期間がわかっているので耐えられる。


・周辺諸国からの様々な商会の引き揚げ。

関税が上がった為、貿易の旨味はなくなったのでノア王国意外の商会も多数が規模を縮小したり引き揚げたりした。

特にノア王国では空の移動が見込まれるため、より遠くへ販路を伸ばせるのでわざわざ経済制裁を受けている国で商売する意味を見出せないので国の方針に従う商会は多かった。

まあ、自国が脅されたという不快感と怒りが商売人根性を上回ったのもあるが。


それだけではなく、新迷宮誕生後も手を緩めない。


・新迷宮都市で商売が出来る権利は与えない。

他国の商会を買い上げて偽装したとしても審査で落とされる。

ノア王国に限らず、どの国も昔から周辺諸国に対し大量の『草』を放っている。

『草』は現地に潜伏し、命令がなければずっと現地人のフリをし続ける情報専門のスパイ。

中でもノア王国の草は優秀だ。

自分達の代で役目が回ってきたと張り切っている。


・新素材の輸出制限。

ギルドの素材売買で制限をかけるし、例え裏取引などでギルドの目をすり抜けても城門での荷物検査で没収される。

いくら【鑑定】スキルで警戒してもマジックバッグやアイテムボックスでの持ち出しは防げない部分もあるだろうが、ひと月の出入国の回数を制限するので締め付けにはなる。


そして各国のギルドにも手を回してあった。

依頼主が周辺諸国の場合、新迷宮の素材の採取に対する税が5割なのだ。

つまり、冒険者は受けたがらないし、依頼主も報酬を余計に払わなければならない。

依頼主は通常、冒険者に支払う報酬の1割を依頼料として別途冒険者ギルドに支払っている。

わかりやすく日本円で説明すると、ギルドに張り出された依頼表に報酬が10万円と書かれていた場合、依頼主は別途1万円の支払いが生じる。

つまり、報酬が半分になるリスクを冒してまで冒険者に依頼を受けてもらうには報酬を20万にする必要がある。

さらにギルドに依頼料として1割の2万円も上乗せされるので、倍の経費が掛かるのだ。



つまり、新迷宮誕生後のバブルから徹底的に排除される事となっている。

周辺諸国が自ら賠償を持参し、和平条約を申し出、締結するまでそれらは続く。

150年前にオーランド帝国に攻め入られた時、経済制裁を課してきた周辺諸国。

次はない。

当時のノア王国はそう誓った。

それ以来、対策を怠った事はない。

そして、その『次』とは今だった。





「へー、セディってば見かけによらず過激だねぇ」


ああ、紅茶が美味しい。


「まあ、将来の国王だ。それくらいでないと務まらないさ」とアデル。


そういう認識なのか。

まあ、王様も大変だよね。



「ちょっと、いつまで人ん家で駄弁ってんのよ。居座るんならコア寄こしなさいよ」


緑の魔女さんがお怒りだ。

まあね、魔女さん家のリビングを11人で占領しちゃってるもんね。

お茶もいただいてるし。

猫メイドさんは賑やかなのは嫌いじゃないらしく、ニコニコでお菓子を出してくれる。


「まあま、魔女さんも座って」


「私の家だってば」


「そうだ、またシロクマちゃんになりたいな?」


「相変わらず変なコね。却下よ」


「けちー。じゃあ、コアの秘密、何かわかった?」


「バカおっしゃい。たかが2ヶ月で解明出来るワケないでしょう」


「それもそうか」


「でも、コアを参考にしてこんな物ができたわよ。試作品だけど」


魔女さんが見せてくれたのはクリスタルオーブだった。


「魔物避けよ」


「何がどうしてそうなった?」


ダンジョン・コアと魔物避けって何の関係が?


「企業秘密」


いや、製法を聞いているんじゃないんだけど……


「それ、失敗じゃないか? クマ共がまったく反応してねぇ」とアデル。


「そりゃ、そのコ達は神獣だから」と緑の魔女さん。


「「「「「……は?」」」」」


みんなに注目されたシロクマちゃん達はしゅぴっと椅子に立ってポーズをとった。


「「「いえーい」」」


アデルが1匹抱え上げた。


「お前等が神獣……?」


じーっと顔を覗き込む。


「このゆるい顔のクマが、神獣……?」


ガーンと3匹とも同じ表情でショックを受けた。


「魔女さんもわかってたんだね? 私は最近エゼルちゃんに聞いてビックリしたよ。でも、こんなにかわいいんだもん、たとえ天使って言われても信じるわ」


「んもうー」

「ナナってばー」

「親バカなんだからー」


満更ではない3匹はてれてれくねくねした。





アデルに【文蝶】が飛んできた。


「準備が整ったそうだ。コープランドに向けて出発するぞ」


色々お世話になったお礼にシロクマちゃん達にお菓子を出してもらった。

今度は普通のクッキー缶。

妖精さん達にクッキーばかり強請られて、3匹の間でちょっとしたブームになっているようだ。


パッケージがアルファベットだったので、またもや迷宮遺物だと勘違いされた。

ん?どうやら神様がお取り寄せ機能を使ってシロクマちゃん達のアイテムボックスに補充してくれているらしいから『異界品』である事には変わりないのか。




イチゴちゃんに転送してもらったのは王都の側の森の中。

馬を2頭用意してもらったのだ。

馬車に繋ぎいざ出発。

翌日、『ハーキュリーズ試験飛行場』に到着した。


「アデル!」


なんとセディが居た。


「ああ、よかった。やっと無事な姿を見ることが出来た……!」


「そう言いつつ抱きしめるのはクマ公なんだな」とアデル。


そう、セディが一番に抱きしめたのはカリンちゃんだった。


「よしよし、よく無事で戻ってきましたね。偉い偉い」


シロクマちゃんを抱えたままアデルの頭を撫でるセディ。

ガキじゃねぇよ。と言いつつも振り払わないアデル。


「ナナもお帰り」


「はい。ただいまです」




積もる話は山程あるが、まずは魔導飛行船に乗り込む。

コープランドまで3時間のフライトだ。


「申し訳ありませんでした」


顔を合わせるなり頭を下げるジュード。


「無事に王城までお連れするのが私共の役目にもかかわらず皆様に守ってもらい自分達だけで帰還するなど不徳の極み……!」


「顔を上げろ、ジュード。迷宮都市から脱出できたのはお前達のお陰だし、魔導飛行船が敵の手に渡る事もなかったんだ。色々あったとはいえ、作戦は成功だ」


「ナナさんにも、多大なるお力添えをいただき、心より感謝申し上げます」


「そんな、畏まらないで。それに、大袈裟だよ」


お茶を運んできたメイドさん達にもお礼を言われた。


「あの時は、みんなが自分が出来る事を精一杯やった。だから成功したんだよ」



それからダンジョン・コアの話しになった。


「ナナがコアをぶっ飛ばしてくれたおかげで、『コルウス』の連中は今も樹海を彷徨っている事でしょう」


うぉぅ、セディの笑みが黒い、黒いよ!

言外に『いい気味』とか『ざまぁ』って聞こえるよ!



「妖精界のお話を聞かせてくれませんか?」とセディ。


アデルから報告があったが、書ききれなかったこぼれ話をご所望のようだ。


『私達のコト?』


ナナのフードの中からちっちゃい妖精さんが飛び出してきた。


「ええ~っ!? ついて来てたの~っ!?」


「本当に……存在したんですね……」


呆然とナナの頭に乗っている妖精を見つめるセディ。


『私のコトが見えるの? 』


ナナ達は招かれたから妖精が見えるようになったが、何もしていない状態で見えるセディは素質があるのだろう。


「ええ。とても可愛らしい妖精さん。私はセドリックと申します。セディと呼んでください」


『あら、あなたちょっと素敵ね』


妖精さんはセディを気に入ったらしく、彼の肩に留まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。