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敵が来てしまったようだ……
山の上を魔導飛行船で飛んでいたとはいえ、頂上の真上を飛行していたワケではないのに魔法で落とされた。
つまり、100メートル以上離れていても魔法の威力が落ちていないのだ。
超越している。
まさか、転生者……?
「ラムネちゃん、人数はわかる?」
「んとねー……5人パーティーが4組ー」
多いな!
早く飛行船を修理してみんなを逃がさないと!
いや、でも、こうなったら……
私はアデルを連れてヒューバートに走り寄った。
シロクマちゃん達も何かを察して集まってきた。
「ヒューバート、もう飛行船をアイテムボックスに収納してみんなをイチゴちゃんに転送してもらう?」
ひそひそと相談する。
「それはダメだ。乗組員達は王家寄りの人間だ。【転送魔法】は知られないようにしろ」とアデル。
「そうだな。アイツ等だって軍人だ。戦場に出るという心構えはある。いざとなったら戦いも辞さないハズだ」とヒューバート。
でも、メイドさんもいたよ?
かろうじてエンジニアはそうだとしても、流石に彼女達は軍人じゃないでしょ?
「他人の事までお前が抱え込む必要はない。それはオレの役目だ」とアデル。
そうだね。下手に手を出して手に負えない事態に陥ったら迷惑かけちゃう。
私が頷くとアデルは声を張った。
「ジュード、追手が来た! オレ等が足止めする!皆を飛行船に乗せろ! 準備出来次第離陸!最高高度まで上昇!」
「はい!……えっ? あなた方は!?」
「勇者パーティーなめんなよ!」
アデルが大声で指示したので、全員が動き出した。
私は早く航行できるように修理しなきゃ……!
「あれー?敵さん四方に分かれたー」とラムネちゃん。
「包囲戦のつもりか……?」とアデル。
「まあいい、こっちには好都合だ。修理完了まで時間稼ぎをするぞ」とヒューバート。
あわよくば全員集合する前に各個撃破だ。
丁度、飛行船の船体は修理し終わった。
これで浮遊石を使って負荷がかかっても船体が瓦解する事はない。
あとは機関部まわり。
飛行船に乗り込み、機関室に入るとジュードがついて来た。
「浮遊石は僕がやっといた」とジュード。
「ありがと。助かる」
「何言ってんの。それはこっちのセリフ。キミ凄いね。うちで働かない?」
「辞退」
「え~、そんなコト言わずにさ~。週休2日、三食昼寝付きに加えておやつも付けるよ~」
「スローライフ希望だもん」
あ、コラ、シロクマちゃん達ってば。
おやつに反応しないの。
「まあまあ、うちお給料いいよ~」
「お金には困ってない」
「むー、手強い」
「ジュード」
「うん、なになに? 気が変わった?」
「邪魔。あっち行って」
しょぼーんなジュード。
シロクマちゃん達がジュードの前に整列した。
「Tー」
「Pー」
「Oー」
追い打ちをかける3匹。
ナナは誰にもやらぬー、なのだった。
ジュードは諦めて機関室を出て行った。
動力部分は20分程で修理が終わった。
これで飛べる。
薄っすらと戦闘音が聞こえていて気が気じゃなかった。
後は細々した個所に【リペア(修復)】をかけて私達も加勢しよう。
対人戦、出来るかな……?
「もしかして、終わった?」とジュードが現れた。
「一応、飛べるよ。今、バリアを修理しているところ」
「わお、本当にエンチャントを壊す事なく修復出来るんだね!」
「そんでコレ。単純に私が使えるのバリアの中で最上級の【インペネ(不可侵領域)】を護符化した物。あげる。魔力を注げば注ぐほど強力になるから、魔力自慢さんに使用してもらってね」
とりま3枚渡す。
これは飛行船全体を覆うワケではなく一枚の盾みたいなモノ。
手動でそっちの方向に向けて発動しないといけないので、ちょっと不便なのだが、既存のバリアより強力なのだ。
「実は、飛行船のバリアと干渉しちゃうからどっちか1つしか使えないのだけど……」
「それでも凄いよ! ありがとう!」
その時、浮遊感を覚えた。
「うそー!」
「もしかしてー?」
「飛んでるー!?」
「ジュードのあほーっ! アデル達がまだ乗ってないんじゃないのー!?」
「アデライト様に頼まれたんだよ……自分達は残るから、代わりにキミ達を王太子殿下の元で保護してもらってくれってね……」
「何、それ……」
え、何で? なんでそんなコト言うの、アデル……
私達、仲間じゃなかったの?
一緒に命懸けて迷宮攻略したじゃん……
何で今更仲間外れにするの……?
「……シロクマちゃん達」
「あいー」
「もちー」
「おけー」
言葉にしなくても伝わったようで、みんなで頷き合った。
「わかった。修理の続きやるから出てって」
ジュードはまだ何か言いたそうにしていたが、外部からの攻撃を受けて指揮をする為にブリッジへ駆けつけて行った。
「よし、急いで修理するから、そしたら下に転送してね?」
「まかしときー」とイチゴちゃん。
「アデルにー」
「一言ー」
「物申すー」
右手を振り上げる3匹。
お怒りですね。
私もです。
何故か魔法は弱かったみたいで、墜落はしなくて済みそうだ。
もしかして、あの凄い魔法を放てる人は限られていて、今ココに来ていない?
取り敢えず急いでバリアを修復し、起動する。
もうちょっと、もうちょっと……
よし、終わった!
この船はもう大丈夫。
あとは大人達に任せよう。
私が全部やんなくていいんだ。
アデルもそう言ってたし。
「じゃあ、行こうか」
一応、置手紙代わりにドアにメモを張り付けてから地上に降りた。
『アデル達のところに行きます byナナ』
この張り紙を見てジュードの悲鳴が聞こえるまであと15分……
木の上で潜伏している幼女+3匹。
怒りに任せて飛び出してきたが、人を殴った事もないので二の足を踏んでいるのだ。
「取り敢えず、アデル達を見つけないとね」
「んとねー、あっちにいるよー」
ラムネちゃんの【千里眼】の有効範囲内にいるようだ。
「でも、そっちに敵さんもいるー」
おーまいがー。
どうしよう……
えっと、アデル達のところに行かれるのはよろしくないよね?
敵が増えるって事だもん。
なら、今の内に排除すればいいんだろうけど、人を攻撃するのはちょっと……
あ、眠ってもらえばいいじゃん。
それがいい。そうしましょう。
【ブラインド(暗闇)】で私達の姿を見られないようにし、
【サイレンス(沈黙)】で仲間に合図を送れないようにし、
【スリープ(睡眠)】で行動不能にした。
あー、もうだいぶ魔力が減ったなぁ。
「私が言うのも何だけど、状態異常対策しようよ……」
全員黒を基調とした聖職者っぽい服装。
明らかに教会関係者だよね?
この世界の教会も、僧兵とか聖騎士みたいな武力を持ってるんだね。
私が呆れている間に、シロクマちゃん達がロープで縛る。
後ろ手にするのは定番だが、片足ずつ隣の人と結ぶのは何で?
「樹海で全く動けなくするのはー」
「さすがにやり過ぎだからねー」
「二人三脚でお家に帰ってもらおうー」
樹海で魔物に出会ったら腕を封じられた二人三脚だと充分命の危機だと思うけど……
「自業自得ー」
「因果応報ー」
「目には目をー」
あー、うん、シビアで過激なシロクマちゃん達らしいわぁ。
「よし、みんなのところに行こう」
「「「らじゃー」」」
そして木の上から遠目でアデル達の姿を確認する。
どうやら、もう決着はついているようだ。
駆け寄ると、苦笑された。
「まあ、お前等が大人しく言う事聞くとは思わなかったけどよ」
アデルにデコピンされた。
いちゃい。
んもう!
「怒ってるのは私の方なんだからね!」
シロクマちゃん達もアデルに猫パンチを繰り出す。
避けないアデル。
悪いと思っているのか、全く効いていないのか……
「あー、悪かったって」
アデルは3匹の頭をポンポンする。
「私、そんなに足手まとい……?」
「っ!? 違う、そうじゃねぇ!」
「だったら、もう2度と仲間外れにしないで……」
「ああ、わかったよ」
「言質とったからね!」
ニンマリする口元を止められなかった。
「……罠かよ。恐ろしいコ!」
アデルと漫才していると、ヒューバートがラムネちゃんに他に敵はいないか聞いていた。
「んとねー……」
固まってしまったラムネちゃん。
「どうした?」
訊ねたヒューバートだったが、答えはすぐに分かった。
「さすが勇者パーティーだな。A級パーティーと同等程度じゃあ、歯が立たねぇ」
既に背後に居たのだった。
またもや黒服集団。
だけど、さっきの集団とは雰囲気が違う……
服が聖職者っぽいのは変わらないんだけど、全員ちょっとずつデザインが違っていて特別感がある。
実力も特別なのがお約束なんだろうけど、今は遠慮したいです!
「コアを渡してもらおうか?」
リーダーらしき男性がメイス片手に圧をかけてくる。が……
「「「「断る!」」」」
アデルだけじゃなく、シロクマちゃん達までビシっと宣言した。
「なら、力づくでも奪うが、死んでも文句言うなよ」
突如始まった戦闘。
私はすぐに木の陰に隠れてしまった。
格闘は苦手ですぅ!
こっそり【スリープ(睡眠)】かけてみたけど、残念ながら効かなかった。
うん、まあ、対策しているのが正解だけども。
あれ?アデル達、押されてない?
ちょっと、やめて……それ以上は死んじゃうよ!
飛び出す事も出来ずに、蹲る。
体も心も固まってしまった。
静かになった時、立っていたのは黒服だけだった。
アデル達は倒れている。
でも、意識はある。
【エリアヒール(範囲回復)】をかければ……
「出ておいで。ああ、回復魔法なんて使っちゃダメだよ。このコがどうなっても知らないよ?」
男の手には、ぐったりしたカリンちゃんが首の後ろを摘ままれぶら下げられていた……
無力な自分に涙が出てきた。
「キミがコアを持ってるんだろう? アイテムボックス持ちだもんねぇ?」
明らかにこっちに向かって喋ってる。
居場所、バレバレかぁ。
「カリンちゃんを放して」
姿を見せる。
「コアと交換な?」
「みんなにも、もう手を出さないで」
「コアさえ手に入れば別に用はねぇよ」
悔しい。
私達が死ぬ思いで頑張って、頑張って、頑張って手に入れた物を暴力で奪おうとするなんて!
どいつもこいつも頭おかしいんじゃないの!?
これがこの世界のやり方か!
「……わかった」
私はコアを取り出した。
おも……
両手で抱え、前に突き出す。
そしてすぐに手を離した。
ゴトリと地面に落ちる…ことなく、それは宙に浮いていた。
黒服の1人が受け取ろうと近寄ったが警戒して足を止めた。
私も数歩下がった。
だって、ムカついたんだもん。
タダでくれてやるもんか。
私は筒状のバリアでコアを包んだのだった。
そして心の中でつぶやいた。
『【ファイアボム(炎の爆弾)】』
ダンジョン・コアは打ち上げられ、綺麗な放物線を描いて樹海に消えた。




