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出来立てほやほやの魔導飛行船はまさにファンタジー。

エンジン音も揺れもなく飛んでいる……

眼下の迷宮都市の周辺には第2皇子の軍隊が陣を張っていた。

思ったより大人数だった。

絶対ぶんどるマン……

飛行船は攻撃を警戒して高度300メートルくらいを飛行していた。


「酷いじゃないですかぁっ! 僕だけ避難所に置いてきぼりなんて!」


「ごめんて……」


実はさっきから背後でハーキュリーズ試験飛行場の副所長であるジュード・フューリーがくどくど×2アデルに恨み言をぶちまけていた。


「あの後紙切れ1枚手に入れるのにどんだけ奔走したか想像できます!?」


地震だけでなく火事も起きていたから、建物は崩壊して色々な物が灰となっただろうなぁ。

しかも龍神が雨を降らせたので無事だった紙もすぐに使えなくなり、【文蝶】で連絡を取りたい人が山程いる中、そりゃあ紙切れ1枚が値千金となっただろう。

ほんとゴメン……


ジュードがアデルに怒涛の如く言葉を浴びせているので、先程からシロクマちゃん達が声を掛けたくても遠慮して足元をうろちょろしている。

自分達も怒られるのだと思って尻込みしているのだ。

だが、ついに服の裾を引っ張った。


「ジュード、ごめんー」

「お船返すのー」

「忘れてたのー」


色々お世話になったし迷惑もかけたのでお詫びとお礼に菓子折りを1つづつ差し出す3匹。

私もシロクマちゃん達の後ろで頭を下げた。


「あ、いや、河では津波が起きて船が全滅したんだ。逆に保管していてくれて助かったよ。ありがとう。そしてもう少しだけ預かっていてくれると嬉しいな」


1匹ずつ頭を撫で、菓子折はちゃっかり受け取るジュード。

甘いもの好きか。

最後に私の頭も撫でて、ジュードは一気にクールダウンした。


助かったー、とアデルがこそこそ後ろに下がる。

ずっと『チビ共頑張って声をかけろ』と、内心応援していたアデルだった。


「メリッサは無事?」


「ああ、すっかり元気になって一緒にこの魔導飛行船を造ってくれたよ」


よかったぁ。

私の所為で怪我をさせたから気になってたんだ。


「君の所為じゃない。君もメリッサも被害者なんだ、いいね?」


納得は出来ないけど、私がもだもだしてたらジュード達の負担になるからこの場は頷いた。


「よし、じゃあ、コレ開けてもいいかい? 一緒に食べよう」


シロクマちゃん達がガッツポーズした。

私もちっちゃく『よっしゃ!』した。


エントランスから2階のラウンジに移動する。

メイドさんがお茶を入れてくれた。


ジュードに付いている護衛は前とは別人だった。

前任の所長は様々な責任を取らされ解任されたらしい。

そして今はジュードが所長であると。

だから、ジャンジャンバリバリ飛行船造りに没頭できたのだろう。


「改めて、迷宮攻略おめでとうございます」とジュード。


「ありがとうございます」とアデル。


「まずは王城へ向かい、報告を致しましょう」


王城まで約6時間。

17時頃到着らしい。

馬車だと【巨大迷宮】から城塞都市『ワンダーウォール』まで1週間。

さらに王都までは護衛依頼の時に寄り道して3日かかったのに、空の道は馬鹿みたいに速い。

到着したら式典が行われ、夜には晩餐会が開かれるという。

そしてまた別の日に迷宮を誕生させる式典を行うと……


「戦争はどうなったの?」


「連絡が来ていないから、まだ開戦はしていない」とアデル。


「スタンピードは?」


「それは各地で対処してもらうしかないな。応援要請があればこの魔導飛空艇で駆け付けよう」


必要な事だったとはいえ、自分達の行動の所為で各所に迷惑をかけたことは事実。

要請があれば、私だって駆け付けたい。


シロクマちゃん達が、お菓子を急いで頬張っている。

ふふっ、おやつは逃したくないけど、早く飛行船内を探検したいのね。

食べながら歩き回らないのはエライわ。

時々『おいちー』っと和んでいるのかわいい。


食べ終わった3匹はシュタっと整列すると、くるりと一回転したと思ったらお着替えしていた。

探検隊と言えばコレ!『サファリルック』だ。

いつも通り、下は履かない……


「ではこれよりー」

「未知のお船のー」

「探検に行ってまいりますー」


「はい、いってらっしゃい」


シロクマちゃん達は「もふもふ探検隊ー、もふもふ探検隊ー」と歌いながら1階に向かった。

かわいいのでカメラを構えると、キリっとした表情でカメラ目線をくれた。

ナイスショット頂きました。




ラウンジでまったりしていると、段々迷宮攻略した実感が湧いてきた。

色々あったなぁ。

それはもう、色々と……

仲間が1人も欠けなかったのは幸運だった。

ここが異世界だとしても、死は前世と同じ。

テイムしたシロクマちゃん達との絆を断ち切るのも死と同じ。

本当に、幸運だった。

あ、そういえば最初に『LUK(幸運)』上げてたんだったわ。

幸運先生ありがとう!


それでも、別れもあった。

蒼天……チビちゃん……

力を貸してくれてありがとう。

お陰で、私達とうとう迷宮を踏破したよ。



「ナナ、コアを見せてやってくれ」


アデルに言われ、ほいっとアイテムボックスから出す。

テーブルの上にゴトリと現れた丸い物体をジュードは抱え上げ、色んな角度から舐め回すように観察した。


「なるほどなるほど、周囲の金属が結界の役割を果たし、コアが内包するエネルギーを抑え込んでいるのか……だとしたら、解放する為の鍵が必要……」


その時、飛行船後部で爆発があった。

内側から? まさか外側!?

バリアは作動していなかったの?


はっ! シロクマちゃん達は今どこに!?


館内放送がかかった。

『外部から攻撃あり。機関破損の為、バリア起動出来ず。第二波に備えたし』


「くそっ、山の所為で飛行船の高度が足りなかったか!」とジュード。


飛行船からも迎撃を開始した。

【巨大迷宮】外壁に現れる追尾型の砲台を真似た物が設置されているという。

どうやら山の頂上で待ち伏せされていたらしい。

確かに、ハーキュリーズ試験飛行場に誘拐犯が出入りしていたから何を造ろうとしていたのかも教会にはバレていただろう。

でも、最新兵器ともいえる魔導飛行船を急襲する戦力があったとは……



第二波着弾。

飛行船が傾いた。

徐々に高度が落ちている。

墜落する……!


意外にも飛行船はすぐに落ちる事なく、10kmくらい滑空し続け樹海に落ちた。

初飛行の魔導飛行船はボロボロになってしまった……


いたたたた……すごい衝撃の所為で床を転がった。


「大丈夫か?」


「うん、ありがと…」


アデルに助け起こされてハタとなった。


「シロクマちゃん達! どこー!?」


「あいー」

「ここー」

「ぶじー」


よかった!

操縦室に居たけど、最初の攻撃の時に既にこのラウンジを目指していたらしい。

が、墜落の衝撃で廊下でゴロゴロ転がって目を回してしまった。

大きなケガはない。

安心したらまたハタとなった。


「ダンジョン・コアどこー!?」


「ここだよー」


ジュードが転がりつつもしっかり抱き込んでいた。

失くす前に収納する。


「さて、追手には3時間ほどで追いつかれるだろうし、樹海の中に敵が潜伏していたらもっと短くなる。急いでここから離れたいのだが……」


アデルは辺りを見渡した。

そこにはエンジニアやメイドさん達が集まり出していた。

つまり、ジュードの護衛達と数人の兵士(砲手)と力を合わせ、戦闘に向いていない人々を数十人も守りながら樹海を抜け出さなければならない。

王城まで数百キロメートル。

オーランド帝国さえ抜けていない。

万事休す。


何はともあれ、ケガ人を集めナナが癒した。

幸い死者は出なかった。



「私が飛行船を【リペア(修復)】で直そうか?」


「出来るのか!?」


私の肩を掴み揺すってくるジュード。


「破片を集めてくれたら魔力も足りると思う……」


「そうなのか!……でも、いくつものエンチャントやら様々な術式がかけられているんだよね……」


空を飛ぶというのは人類の夢。

簡単なはずがない。

でも……


「あー、多分大丈夫。エンチャント消す事なく直せるから」


数が多いなら時間がかかる。

追手が駆け付けてくる前に終えられるかは五分五分だ。


「一般人を連れて樹海を歩くより現実的だな。よし、手分けして集めるぞ!」



1階は半分潰れてしまっているので、ガラスの割れた窓から外に出た。

樹海だが、船体が木々を薙ぎ倒したので陽の光が差している。

固まった溶岩の上に出来た森なので、木々の根が地面の上をうねうねしている。

苔も多い。

土がなくても木々が育つ証拠だ。



アデルが指揮を執る。


「敵は追手だけじゃない。魔物にも気を付けろ!」


今は音と衝撃で逃げ出したであろう動物や魔物も、パニックが治まったらナワバリの様子を見に来るだろう。


「破片持ってきたらいいー?」

「部品持ってきたらいいー?」

「イノシシ狩ってきたらいいー?」


「イノシシはいらないかなー?」


ジョークだったのだろう、いらないと言われても気にした様子もなく、大きな破片を3匹で協力してせっせと運んできた。


シロクマちゃん達のヤル気に触発され、みんなも自分が出来る事をやり出した。

メイドさん達は船室の片付け。

料理人はランチ作り。

エンジニアや操縦士達は持ち場の機器の修理点検。

ジュードの護衛や砲手達はアデル達と破片集め。



ナナは修復箇所の多さに白目剥いていた。

どこから手を付けたらいいのよ!?

自分で言い出した事だが、既に後悔していた。

やけっぱちで手あたり次第に1個1個術式を読み取り修復していった。


途中でランチをはさみ、すぐに作業に戻る。

終わりが見えてきた時、ラムネちゃんが気付いた。


「誰かこっちに向かって走ってきてるよー」


とうとう追手が……

魔導飛行船を2撃で落とした程の能力を持つ者……

一体、どんな人達なのだろうか……?


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