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翌朝、リビングに行くとみんなダラけていた。
気持ちわかるわぁ。
苦労して苦労して達成したんだもん、ぷち燃え尽き症候群よね。
ほんとに、とうとう第99階層をクリアしてしまったのよね。
それにしても悪魔が割り込んでくるなんて、とんだハプニングだったわ……
何も知らなかった頃は、SF好きの悪魔なら話が合うだろうとか思ってたのに、実際はアレだなんて……
いや、アレがこの迷宮の主とは限んないけど。
そういえば、小窓からあんなに大きな地球が見えてるんだけど、次は地上かな?
通り過ぎて金星まで行くのかな?
そうするとあと1フロアしかないから水星は見られないの?
ふむ、中途半端だなぁ。
ともあれ、あとは魔導飛行船の完成を待って最深部へ挑戦する事になる。
「飛行船の進捗は?」
「あと1週間くらいだと報告を受けている」とアデル。
はっや!
でも、シロクマちゃん達が「ひまー」と騒ぎそうな日数だわ。
「だがまあ、スタンピードの件もあるからな。一概には言えないな」
ゴメン、忘れてた……
「本当に起こりそう?」
「本部の者に調べてもらったが、古い記録によると迷宮を攻略した途端に全ての迷宮で起こったそうだ」とサイラス。
マジですか。
大変だぁ……
他にも色々わかったらしい。
攻略された迷宮に近い程規模が大きいとか、迷宮以外にも瘴気溜まりが酷い場所でも魔物が異常発生したとか。
つまり、【巨大迷宮】が攻略された場合、大陸の西半分がより大変な事になるようだ。
「どんな準備をしてるの?」
「ゴースト・ナイト・パレードの時と同じだな」とヒューバート。
「私達、広場で大格闘してたから知らないや」
「そういえばそうだったな」
アデルが教えてくれた。
城塞都市なら騎士や冒険者が対処し、小さな集落は近くの城塞都市や砦に移動し、各迷宮都市は簡易のバリケードを作り軍が対応する、と。
ああ、それなら割と時間かかるね。
「あれ? それじゃあ、私達を取り囲んでいるであろう第2皇子の軍隊はいなくなったの?」
「規模は減ったが、いるぞ」とアデル。
第2皇子というか、教会のしつこさよ……
最低1週間は暇する事になった。
でも、しばらくはダラダラしたい。
対悪魔戦で気力がすり減ってしまったのよ。
アデル達に構ってもらったり、お菓子作りをしたりして誤魔化していたが、やはりシロクマちゃん達が「ひまー」を連呼するようになった。
「そうだ。76階のシャトルに挑戦してなかったね」
「そうだよー」
「迷宮なくなったらー」
「シャトルも消えちゃうー」
流石に試しもしないで消滅させるのはないわ。
「よし行こー」
「すぐ行こー」
「今行こー」
ランチまでは幼女+3匹のお出かけタイムなのでちょっくら行ってこようとなった。
第76階層には人気はなく、変身する必要はない。
「あった。ここだね」
早速シャトルに乗り込み、コンソールをぽちぽち押してみる。
エネルギーの項目がない。
燃料を積み込む場所がないのなら、どうやら実際に発射はしないようだ。
つまりはフライトシミュレーションだね。
「自動操縦もある……シロクマちゃん達はどこか行きたいところある?」
「「「ちきゅー」」」
「おおぅ。揃ったねぇ」
「忍者ー」
「サムライー」
「戦隊ヒーロー」
「にゃはは、外国人が選ぶジャパンカルチャーかな?」
進路は地球の日本に決定!
自動操縦を選ぶと、ワープ航法で一瞬だった。
ワープ体験はなかなか面白かった。
よく映画で見る様に空間がグニャリと歪み、凄いスピード過ぎて風景が線となって過ぎ去っていった。
ま、それだけなのですぐに飽きてしまったが。
「他にやっておきたい事はある?」
「んとねー」
「そうねー」
「ないかもー」
遊びつくしたのなら結構。
「んじゃ、戻ろっか」
シャトルを降りると、森の中だった。
「は……?」
振り返ると、シャトルはある。
かなり草臥れてて帰れるのか心配だ。
「ナニコレ……本当に地球の日本に来たってコト!?」
だとしたら、シロクマちゃん達が目立ち過ぎる!
3匹は瞳をキラキラさせて今にも飛び出していくんじゃないかと焦ったが、以外にもしょんもりしていた。
「ここはー」
「わたし達だとー」
「楽しめないねー」
現代日本に喋るシロクマがいたら大騒ぎになるだろう。
SNSで拡散され、プライバシーもなにもない。
漫画だと人体実験とか闇取引とか……危ない危ない。
でも、正直、後ろ髪は引かれた。
夫の悠人さんだけじゃなく、両親や友達のその後も知りたいと思ったけど、死者の過去の私の事よりも、今を生きているシロクマちゃん達の方が大事だ。
どうせこの姿じゃ、知人に話を聞くこともままならない。
それに、普通なら、自分の死後の事なんて知る由もないのだから。
「帰ろっか」
「でもー」
「ちょっとだけー」
「探検したいー」
そう言われても…こればっかりは……
あうぅ、そんなウルウルお目目で見上げないで。
シロクマちゃん達のおねだりには弱いのよ。
「じゃぁ……ちょっとだけ、なら……」
「「「わーいー!」」」
幼女+3匹は大きな道は避け、けもの道を進んだ。
そして木々が途切れ、崖の上に出た。
「うそ……」
眼下に広がるのは崩壊し植物に覆われたビル群。
「人類、滅んでたー!?」
確かに、行先は地球の日本だと指定したけど、年月日は何も記入しなかった……
「これは、未来の地球なの?」
人類がいなくなってどれくらい経ったのだろう?
映画や物語だと、こんな世界でも人間はしぶとく生き残ってコミュニティを形成するんだけど……
陽が高く明りを使わないから人類が残っているのかわからない。
煙も上がっていないし、誰もいないのかもしれない。
「探検する?」
「止めとこうー」
「きっとゾンビいるよー」
「感染しちゃうよー」
それは何の映画かな?
また私の頭の中見たんだろうなぁ。
でも、私もちょっと怖いから全力で乗っかろう。
カサリ。
自分達以外の音源にビクついてしまった。
人間?野生動物?それとも本当にゾンビ…?
振り返ったが、そこには誰もいなくて。
「あ、イガグリだ。これが落ちたのね」
「なんだー」
「脅かさないでよー」
「栗ごときにビビったー」
「おみやげに拾って帰ろうか?」
一応【鑑定】を使って普通の栗だと確かめた。
アイテムボックスに収納するだけなので、チクチクしない!
シャトルに戻ると、もう一度行先を入力する。
もちろん【巨大迷宮】だ。
再びワープした。
ちゃんと戻って来られたよね?
シャトルを降りるといつもの迷宮だった。
良かった。
でも、どんな技術でワープなんてしたんだろう?
迷宮の謎技術なのか、もしくは悪魔の超技術なのか?
後者なら、人類に勝ち目ないじゃん。
シャトルの宇宙旅行は内緒のまま、お土産の栗を茹でる。
久々の和栗は美味だった。
男性陣は食べ難そうにしていたけど、味はいいと言ってくれた。
剥き甘栗もいいけど、ほくほくの和栗もまた良き。
その日の夜、なかなか寝付けなかった。
あのシャトルが本物だと知った。
行先だけじゃなく、時間も指定したら戻れるのではないのだろうか?
事故を起こす前に戻ったら、私達はまだ生きていて、新婚生活を満喫して、生まれてくるはずだった赤ちゃんも無事で、みんなで年を取っていけるのではないだろうか……?
そうやって人生を終えた時、そうするとこっちの世界でシロクマちゃん達と出会えるのだろうか?
この時代のこの世界に転生出来なければ、既に大切なものとなってしまったこっちの世界の人々との出会いは失ってしまうのではないだろうか?
答えの出ない自問自答のループ。
何度も同じところをグルグルと回っている内に寝落ちして、朝目が覚めると目の前にモフモフがあった。
昨夜はちょっとどうかしていた。
過去改変なんて考えても詮無いコト。
今ある幸せを守ろう。
そして日々は過ぎていった。
「最深部の考察とかしとく?」
「そうだな。地図を見る限り、格納庫に怪獣というパターンはもうないだろうな」とアデル。
入手した最深部のマップは何も描かれていなかった。
廊下も扉もない、ただのワンフロア。
転移先がボス部屋だ。
イチゴちゃんはフロア内の転移しかできない。
つまり、次は転移魔法は使えないのだ。
誰も行った事がないから資料なんかない。
情報を買う事も出来ない。
完全初見で一発勝負。
また悪魔が干渉してくるだろうか?
だとしたら、今度こそ全滅の危機。
うわぁ、緊張してきた。
これはのんびりダラダラしている場合じゃない。
真面目に対策を考えないと……




