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管制室に籠ったので、キングコングみたいな怪獣が怒っている。

ここまで上って来れないらしく、コンテナが何度も飛んでくる。

流石に煩いので【フィールド(結界)】を張り、外からの音を遮断した。


「そういえば、この階層のボスのギミックってないのかな?」


第96階層ではボスの他に雑魚モンスターが大量に出てきた。

第97階層では水攻めに遭った。

じゃあ、この98階は?


「そうだな、すぐに部屋を出たからまだ何も起こっていないだけで何かしらあるかもな」とヒューバート。


それにしても、動かせるけど破壊不可オブジェクトは厄介ねぇ。

武器で捌こうとすると武器の方が保たないかもしれない。

物理でも魔法でも大技を撃つには『溜め』や『詠唱』が必須なのに、怪獣は目敏く対処してくるので隙がない。

さて、どうしよう?


「【バリア(障壁)】の中で準備するとしても、強度がハッキリしていないからアレを投げられても壊れないのかわかんないよ?」


試すにしても、バリア壊れたら私即死なの……


「物を投げるー」

「地形利用ー」

「それこそがギミックー?」


「ありうるな」とアデル。


結局、投げさせなければいいのよね?


「コンテナも床も金属ー」

「磁石にしてー」

「くっつけるー」


シロクマちゃん達が閃いた! みたいな顔をしているけど……


「それだと、みんなの装備もくっついちゃうねぇ」


がーん!

3匹はしょんもりした。


「ああ、でも、動かせないようにするっていうのはとてもいいアイデアだと思うのよ。だからね、みんなで怪獣が投げそうな物を全部アイテムボックスに仕舞うのはどうかな?」


「「「きゅぴーん!」」」


復活したね!


「それはいい。なければ投げようがないもんな。だが、危険だぞ」とヒューバート。


「しょうちー」

「問題ないー」

「あたぼうよー」


「よし。頼んだぞ」


それから攻撃についても話し合い、ボス部屋に戻った。




「収納ー」

「しゅうのうー」

「しゅーのー」


手当たり次第にオブジェクトを消してゆく幼女+3匹。

怪獣は大人達がしっかり引き付けてくれているので何とかなっている。



よし、あらかた終了。

見晴らしが良くなった。

次の作戦は……


「シロクマちゃん達、準備はいい?」


「「「あいっすー」」」


怪獣に言葉が通じるワケないのに、ついつい小声で相談する。

イチゴ・カリン組とラムネ・ナナ組に別れた。

そして、2組は常に怪獣をはさんで対角線に位置どる。


「みんな! 準備できたよ!」


「「「「OK!」」」」


大人達が攻撃に転じる。

が、その時、怪獣がドラミングを始めた。

怪獣の両脇に魔法陣が現れる。

そこにスッと出現したのは小型のキングコング。

仲間を呼ばれてしまった!

ギミックは『召喚』か!

小型と言っても親玉が20メートル位に対し、新たに現れた2匹も5メートルくらいある。

決して小さくはない。

新手は二手に分かれている幼女+3匹に狙いを定めた。


「「「いーーーやーーーーーっ! 」」」


ヤバい! 連携が崩れた!

大人達は焦ったが、親玉キングコングだけで手いっぱいだ。


「「「なーんて逃げると思ったかーっ!?」」」


シロクマちゃん達は背を向けて走り出したかと思いきや、きゅっと踏みとどまり反転して立ち向かった。

ジャマをするなと叫びながら小型怪獣をぶっ飛ばした。

意気込みさぁやるぞ! って時に水を差され、お怒り気味だったようだ。

怒りが恐怖を上回った瞬間だった。



「「「おまたせー」」」


「「「「よくやった!!」」」」


合図を受け、大人達はまた新手を呼ばれる前に仕掛けた。

アデル達が正面で派手な攻撃で気を引き、ヒューバート達が怪獣の足元を小突いた。

前方に倒れ込む怪獣。


「今だ!」


用意していた魔法陣を怪獣の左足の下に滑り込ませる。

そして魔力を開放。

魔法陣から伸びた金属が怪獣の足に巻き付いた。

同時に、怪獣の右手側に居たカリンちゃんがスキル【創造】でナナと同じ物を作り出した。

怪獣は床に縫い付けられた。

作戦成功!


迷宮の壁も床も破壊不可だが凹んだりはする。

97階でも壁を変形させて階段を作ったように、変形は可能なのだ。

だから、破壊不可の素材で作った足枷は怪獣でも壊せないのでは?

ナナの提案は見事にはまった。

トドメはアデル達が請け負った。


彼らの新しい武器はアダマンタイトとヒヒイロカネの合金。

アダマンタイトは素材としては重いので前の物よりも細くなっているが、強度も切れ味も上がっている。

魔法を纏わせた一撃で心臓と首を狙いトドメをさした。


「「「うえーい!」」」


怪獣に駆け上り、ポーズを決める3匹。

はいはい、写真だよね。

それはドラミングの真似かな?

パシャリ。

怪獣の怖い顔もバッチリ収まったよ。




怪獣もアイテムボックスに収納する。

すると、だだっ広い空間が生まれた。

シロクマちゃん達と手分けして【クリーン(清掃)】をかけ、ログハウスを出す。


「ふ~、やっと休めるぅ」


「まったく、俺等のお姫様は規格外だな!」


ヒューバートに高い高いされる。


「あいー……」


普通の幼女だもん……

言っても否定された過去があったので、口から出かかった言葉を飲み込んだ。




ログハウスでくつろぐ。

今回の為に作り直した特別製だ。

中央にリビング。

左翼にヒューバート達の寝室が1人1部屋ずつ。

右翼にアデル達にも1部屋ずつと幼女+3匹の寝室。

キッチンにバストイレ完備のスペシャル仕様だ。

もう立派な一軒家だよね……


「次のアタックは4日後?」


「そうだな……魔導飛行船の完成は正直予想がつかない。ならば、最深部を残して準備万端で待とう。だから、いつも通り4日後でいいんじゃないか?」


アデルはヒューバートを見た。


「そうだな、クラマスに賛成だ」




それそれダラーっと過ごしていたが、思い出した。


「そういえば、迷宮が攻略されたら別の迷宮でスタンピードが起こるって緑の魔女さんが言ったんだった」


「なん、だと……っ!?」


相当な爆弾発言だったらしく、大人達は慌てた。

アデルはセディに、ヒューバートはワンダーウォールのギルドに【文蝶】を飛ばした。

なら、私はグレアムに知らせよう。


『迷宮が攻略されたら

 スタンピードが起こるんだって

 気を付けてね

            by ナナ』


すぐに返事が来た。


『ふざけんな!

 空白に テヘペロ☆ が見えたぞ!

             by グレアム』


わぁ、感がいいな……

丸投げしたのバレちゃった?

心情としては本当にそんな感じだった。


忙しなく【文蝶】が飛び交う。

スタンピードの規模はおそらくだけどとんでもないものになると思う。

だって、迷宮1つ分の魂が溢れるんだもの。

どこか1か所で発生するのか?

それとも全部の迷宮で発生するのか?

過去の文献を調べればわかるだろう。

そんなやり取りを続けていたら、シロクマちゃん達が腹ペコで溶けかかっていた。


「ごめん、ごめん。すぐに用意するね」


こういう時はピザだよね!

支部で料理人に石窯で焼いてもらったヤツ。

アツアツをアイテムボックスで保管したからチーズがとろけるぅ。

付け合わせはポテトとナゲットとクラムチャウダー。

しぼんでいたシロクマちゃん達もみるみる膨らんでる。

子供にピザは鉄板だよね!

アデル達も顔色がよくなった。

ふむ、空腹はやはりよくないね。


あれ? こうなったのなら、いつ私達が最深部に挑戦するのか全世界が知る事になるのでは?

だって、スタンピードに備える為には正確な日付が必要だもの。

事前にクランメンバーを逃がせてよかった。

大変な事になるところだったよ。

いや、これから大変な事が起こるんだろうなぁ。


実感が湧かないのは、想像が出来ないから。

想像が出来ないのは、恐怖がジャマをして思考にブレーキがかかるから。


でも、本当はわかってるんだ。

迷宮攻略を止めれば今まで通りの日常が戻ってくるって。

でも、脳の半分がそれはダメだという。

悪魔が戻って来られないようにする為に私達の手中にダンジョン・コアが必要なのだと……

そしてもう半分の脳が言うのだ。

全部のコアが本当に集まるとでも?と……


確かに、数千年間も出来なかった事が今になって急にできるのか?

7つの厄災が全て現実のものとなっても、コアが揃わなければ魔王が降臨する事はないのでは?

なんてね。

心が逃げようとしている。

今、歴史が動いてるんだ。

私達は当事者なんだ。

わかってるけど、気を抜くと心がすぐ走り出そうとするのよ。

くるっと後ろを向いてね……




翌日、早速シロクマちゃん達が探検に出かけたいと言ってきた。

フロアの敵は倒してもリポップする。

危険だよぉぉぉぉぉ。


「メダル集めー」

「自販機でー」

「買いだめしとくのー」


それはとても魅力的ですねぇ。


何かあった時にすぐに連絡が取れるようにトランシーバーを片方置いていった。




第6階層にやって来たが、何やら人がいっぱいいた。


「何かあったの?」


女性だけのグループに声を掛ける。


「もうすぐこの迷宮も攻略されて消えてしまうじゃない? だから記念に最後の思い出作りに来たカジュアルな冒険者や探索者よ」


ああ、野次馬が多いってグレアムが言ってたもんね。


「この迷宮のセーブクリスタルだけでも手に入れようって人達が押し寄せちゃって」


「って、あなた達も記念アタック組じゃないの?」


「あら? 幼女にシロクマの従魔って……」


「えっ、あなた達、もしかして……?」


周りがザワザワし始めた。

何やらヤバい予感!


「あ、ありがと。じゃねっ」


サッと転移陣に飛び込んで深層の76階層に飛んだ。

ここなら滅多に人と会わない。


「メダルは上層にしか出ないのにねぇ…」


「メダルー」

「自販機ー」

「おかしー」


るーっと泣くシロクマちゃん達。


「人が多いから、ボス部屋ではめっちゃ並ばないとダメだと思うよ?」


そう言っても、3匹は諦められないようだ。

うーん、どうしよう……

身バレしないといいのよね?

変装する?

うーん、どんな格好をしても、幼女+3匹は目立たない?

せめて私が大人だったら……


そういえば、『アレ』があったわ。

この迷宮遺物のステッキについていたエンチャントの【魔法少女】。

私の予想通りだったら、いけるのでは……?



幼女+3匹は上層とはいえ人が少ないであろう第21階層に飛んだ。

案の定、人はまばらだった。

そしてすれ違う人にも特に注目されなかった。

そこに幼女+3匹の姿はなかったから……


ナナは【魔法少女】を発動し、大人の女性に変身した。

顔はまったく違う人になるのではなく、おそらく今の自分が大人になった姿だろう。

少人数のパーティーでも怪しまれないように服装は戦士にした。


そしてイチゴちゃんは以前モモンガに変身したように、今度は人間に変身した。

知っているモノにしか変身できないので、以前護衛依頼で一緒になった『銀狼旅団』のリーダーだったウィルフリードにした。

ノリノリでワイルドを演じている。


更にカリンちゃんは『スパイ7つ道具』の変身メガネで仔犬の獣人に見える。



ラムネちゃんだけは変身できるものは何も持っていないが、1匹くらいなら何とかなる。

変身ベルトは外し、カリンちゃんに作ってもらったお洋服を着れば従魔というより獣人だろう。



こうして幼女+3匹は『子供の獣人を連れた謎のカップル冒険者』として迷宮内を自由に行き来するのだった。


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