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マティアス達は住む所もないというので、この仮拠点を貸す事にした。
写本を読ませてもらったお礼である。
半年分の家賃を追加で払っておいたのだ。
一生面倒をみるワケにもいかないし、後は自分で何とかしてもらおう。
「連れ帰って冒険者ギルドの職員としての仕事を紹介…とかじゃダメなの?」
「情報は有益だったかもしれないが、元司祭という爆弾を内側に抱えるワケにはいかないんだ」とアデル。
そう、なんだ……
まあ、人を疑えと言ったのは私なのでこれ以上は何も言えない。
すまんなぁ、何の権力もないちびっこで。
別れ際、マティアスはちょっと大人になった面構えをしていた。
もしかしたら、おじさんから色々説明されて、一族の歴史を繋ぐ者としての自覚が芽生えたのかもしれない。
生活魔法がおススメだと念押ししたけど、首を横に振られてしまった。
シロクマちゃん達をキラキラした目で見てたもんねぇ。
戦える歴史家を目指すらしい。
まあ、この世界は強いに越したことはない。
頑張れー。
帰りは途中まで馬車だったが、人目がなくなったらすぐにイチゴちゃんに転送してもらった。
転送先は本部だ。
アイテムボックスに入れている宝物庫の中身を倉庫に保管する為だ。
数が多いので結構時間がかかった。
「お前等も欲しいものがあったら持っていけよ」とアデル。
「シロクマちゃん達、欲しいのある?」
聞いたらキャッキャと走って行った。
「お前はいいのか?」
「武器は使えないし、魔導具は懲りた。魔導書は後で読ませてもらうね」
「おう。だが、魔導具は使い方を知っていれば別に怖いモノじゃないぞ」
「あー、うん。日常生活に必要な物は普通に使えているし大丈夫」
シロクマちゃん達がニッコニコで戻ってきた、が……
「イチゴちゃん、どうしてフルプレートアーマー?」(装飾用だからサイズ変更の魔法は掛かってないから着れないよ…)
「ラムネちゃん、どうして2メートルもある大太刀?」(持ってる迷宮遺物と違って伸縮しないんだから、身長の3倍以上もある刃をどう捌くというの? あと、太刀はロイドに譲ってあげて…)
「カリンちゃん、どうして宝石ゴテゴテの王冠?」(戦闘と全く関係ない。いつもボロ儲けって言ってるけど、売るつもりじゃないでしょうね…)
いくら戦利品とはいえ、使わない物はいりません。
あと、お金は充分あるので売り払うのも禁止です。
シロクマちゃん達はしょんもりして戻しに行った。
が、懲りずにまた何か手にして戻ってきた。
今度は呪いのアイテムとしか思えない不気味なお面や木彫りの人形を手にしてる。
何でこんなものが宝物庫にあったんだろう?
あ、そのお面かぶって踊らないで。
何かが発動しそうでドキドキしちゃう。
私が微妙な反応をしたからか、察した3匹はまた違うモノを持ってきた。
藁人形、ドクロ、ミイラの腕……
だからなんでそんなモノがあるの!?
え、運気UP?
それは縁起モノじゃないわぁ……
興味本位で扱ってはいけないのよ、などと切々と語るとシロクマちゃん達は諦めてくれた。
私の反応が面白かったからワザとだったらしい。
よかった。
本気で欲しいと言われたらどうしようかと思った……
「んじゃ、私達は防具を強化しに行ってくるね」
街中はキックボードで移動する。
「ちわー、素材持ってきたよ」
「いらっしゃい、ちびっこ共。まさか、『ファントムの嘆き』を持ってきたなんて言わないわよね?」
「なんで? いるって言ったのそっちじゃん?」
「いやいやいや、難易度激ムズの素材を昨日の今日でどうやって集めたっていうのよ!?」
「数日経ってるけどね」
「数日でも非常識なのよ!」
「でね、いっぱい手に入ったから、私達の分の他に7コ追加したいんだけど」
「いっぱいって何個!?ねえ、何個!?」
「13コ。余ったのはあげるよ。急いで作って欲しいの。特急料金だと思って?」
「いいぞ。いつまでに欲しいんだ?」とドワーフさん。
今日は普通の登場だ。
「10日以内なんだけど……無理言ってるかな?」
「デザイン次第だな」
「じゃあ、注文します! これ、素材ね」
踏み台を出して乗り上げる。
シロクマちゃん達はカウンターまで上る。
はいはい、足の裏をキレイキレイしましょうねぇ。
【クリーン(清掃)】をかけて、ザラザラと『ファントムの嘆き』をカウンターに出す。
そうそう、『バジリスクの目玉』も忘れずに。
今回はちゃんとビンに入れてあるよ。
生はダメだよね、うん。
「非常識ちびっこ。これはヤバいわ」
「変なあだ名付けないでよ」
「まあいいわ。デザインは出来てるのよ」
「よくないよ。デザインはありがとう」
それから追加発注分のデザインを決めにはいった。
せっかくなので、アデル達の『白刃の残光』とヒューバート達の『アルゴス』はそれぞれのパーティーで『おそろ』にしよう。
白刃の残光……抜き身の刃……刃物モチーフのアクセって危ないわぁ。
あ、クロムハーツのダガーっぽいヤツにすればいいじゃない。
うんうん、悠人さんも学生の時付けてたなぁ……
アルゴスは百目の巨人のことだから、瞳のモチーフがいいかな?
トルコの青い目のお守りの『ナザールボンジュウ』に似たヤツにしよう。
うーん、でも、アデル達の方とデザイン格差が……
「こっちのダガータイプにデザインを合わせて瞳のモチーフになんない?」
「だったらコレはいかが?」
ウサギのおねぇさんがサラサラと描いたのは孔雀の羽根っぽいデザイン。
ギリシャ神話のヘラがアルゴスの死を悼んで彼の100の目で孔雀の羽根を飾ったといわれている。
あ、文章にするとグロい印象になるけど、孔雀の尾羽の青い丸い模様って見ようによっては目に見えるもんね。
「わぁ、素敵! さすがだねぇ」
「これだと10日でギリギリだな。間に合わせよう。料金は……1つ大金貨3枚なんだがな、素材を持ってきてくれた上に余りを引き取っていいときた。だから1つ大金貨2枚でいいぞ」とドワーフさん。
大金貨1枚は日本円で約100万円だから300万が200万になる。
全部で11コだから、合計1100万の割引……
「全状態異常無効なんだよ? ちょっとオマケし過ぎじゃない?」
「ふっ、お前さんら迷宮攻略目前だろう? 応援させてくれや」
「てか、あんたそんなに金持ってんの?」とウサギのおねぇさん。
「あるー」
「な、生意気なちびっこね…」
ウサギのおねぇさん、頬が引きつってる。
ドン引き止めて。
「割引ありがとう。では正式に注文します」
「承ったわ。出来たら【文蝶】飛ばすわね」
シロクマちゃん達のベルトを預けて店を出た。
翌日には『デルタ8』に戻り、アデル達は新しい武器を体に馴染ませる為に第80階層あたりに潜っている。
幼女+3匹は別行動である。
「ちょえーっす。来たよー」
お馴染み、隣の皇子様突撃訪問!
「おう。調子良さそうだな」
「まあね。でも、ちょっと問題が……」
早速、旧クロフォード城に行った時に出会ったゲオルギオスの子孫から聞いた事を話した。
「悪魔崇拝かよ……」
グレアムの口から深いタメ息とともに不吉な言葉が零れ落ちる。
「7つの厄災、次は干ばつでしょ? やっぱり夏なのかな? だとしたら、来年までは猶予がある?」
「一応、今のところ干ばつの情報は入ってきていないな」
「すでに悪魔が干渉していたなんてね」
「それと、過去の転生者がやらかしていたとはな」
「やらかし……でも、悪い方向ではないよね?」
「対処法くらい書いとけってんだ」
「あはは、彼も知らなかったのかもよ?」
「役立たずめ」
「グレアム、今日はちょっとトゲトゲしてるね?」
「わりぃ。実は、お前らのお陰で最近忙しくてな」
「ほえ? 私達の所為?」
「迷宮が攻略された時の事前根回しが必要なんだ」
「どゆこと?」
「考えてもみろ、ダンジョン・コアなんて国宝級の代物だろうが。それを手に入れたのが個人だとしたら奪おうとする者が必ず現れる。今もこの迷宮都市に人が押し寄せている。歴史的瞬間の野次馬だけじゃねぇぞ」
「もしかしてセーブクリスタル泥棒より多いの?」
「それだけじゃねぇ、周辺諸国では軍にも動きがある」
「えっ!? 戦争とか言わない、よね……?」
「かなりの緊張状態だぞ。警戒して、こっちも軍備増強中だ」
「そんなバカな…」
「ああ、バカばっかりだぜ、まったく。最深部に挑戦する前には必ず教えてくれよな」
「あい……」
「ナナ、またどんよりしてるー」
「げんなりー?」
「あんにゅいー?」
ああ、シロクマちゃん達は癒しだ。
私はモフモフに逃げた。
「私達は武器の強化はどうしよっか?」
「武器ねー」
「コレー」
「気に入ってるのー」
「そうよねぇ。私も今のままでいいわ」
となると、する事がないわ。
「あ、また怪獣みたいな敵が現れたら、てか、97階のボスも怪獣だと思うんだけど、シミュレーションしておこうか?」
「「「らじゃー」」」
そして9日が経過した。
『世界樹の雫』のウサギのおねぇさんから【文蝶】が来た。
「ちわー。注文の品、受け取りに来たよ」
「来たよー」
「出来たー?」
「見せてー」
シロクマちゃん達もグレードアップしたベルトを早く着けたくてソワソワしている。
「いらっしゃい。出来たわよ」
「「「わーいー!」」」
ちょっと豪華になった変身ベルトにめっちゃ喜んでるシロクマちゃんを見て頬が緩むわぁ。
「あんたも着けてみな」
私のはシロクマちゃん達のベルトのミニチュアだ。
ちっちゃいのかわいいっ!
手首に着けてもかわいいっ!
テンション上がるね!
久々にやるよ!
「ガーネット レッドー」
「ラピスラズリ ブルー」
「こはく イエロー」
「アメジスト パープルー」
「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」
ウサギのおねぇさんが拍手してくれた。
大満足です!
「こっちはプレゼントなんでしょ? リボン付きの箱も用意しておいたわよ」
「ありがとう! こっちはカッコイイね!」
男性向けに少しゴツめに作ってもらったネックレス。
悠人さんにも似合いそう……
ああ、いかんいかん、夢を見た所為で未練が……
黒い箱に金のリボンがアデル達、銀のリボンがヒューバート達用だった。
ウサギのおねぇさんのチョイスが私の好みに刺さるわぁ。
「じゃあ、これお代ね」
ポンとカウンターに置かれる白金貨2枚と大金貨2枚。
「本当に非常識ちびっこよね。コインチョコかっつーの」
「変なあだ名が定着してる!?」
「はいはい、まいどあり。あんた達はサポートだろうけど、無理はしないようにね」
「うん、ありがと」
『デルタ8』に戻ってアデル達に配る。
まずはデザインを褒めてくれた。
そして性能を聞くとビックリされた。
更に『世界樹の雫』で作ってもらった事を知ると感激された。
ありがとうをいっぱい貰って、私も贈った甲斐があったよ。
翌日、新しい武器と装備を身につけた11人は気持ちも新たに迷宮へと向かった。




