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って、いるんかーい!


最後の一組だったアデルとレスターと合流した時、マティアスのお父さんも一緒にいた。

ラムネちゃんが何も言わなかったから勝手に死んじゃったと早合点してたわ。

単純に誰かわかんなかったから、ぬか喜びさせないように言わなかったんだって。

私も余計な事言わなくてよかった。


マティアスがお父さんと再会の喜びを分かち合うことが出来て本当に良かった。


「でさ、ちょっと聞いてもいいかな?」


「そのまえに、幽霊ついて来てますけど……」


「あ、この人はなんていうか、無害なんで気にせずに」


「いえ、凄く気になるのですが……」


ぞんざいに扱われた幽霊さんが凄く怒ってる。

いや、ゴメンて。

後で何とかするから。



「おじさん、冒険者じゃないよね?」


「ええ。私はティリオン教の司祭でした」


言った途端、大人達が警戒態勢をとった。

教会の役職持ちは『コルウス』の手の者の可能性が高い!


だが、彼はとても戸惑って、そして自分の身の上話を始めた。

怪しい人物ではないと証明する為に。

彼の話は要約するとこうだった。

田舎で司祭をやっていたが、最近の教会の言っている事が何か変で本部に問い合わせた結果、回答も貰えないばかりかいきなり破門された、と。


「何が変だと思ったの?」


「何もかもです。7つの厄災が起こり世界が滅ぶとか、それを教会認定の聖女が救うとか有り得ないと思うのですが証明するだけの根拠はありません。ですが12個のコアを【碧落迷宮】に持っていっても天界への門が開く事はないのです」


「言いきるんだ?」


「私の先祖に考古学者がいまして、迷宮について調べていたのです。彼の手記の写本が我々の一族に代々受け継がれてきたのです」


手記は今では淘汰された古代文字の一種で書かれているので解釈が難しい所もあるが、教会が言っている事と食い違う所が多々あるとおじさんは言う。


「えっと、もしかして、おじさん達の苗字って『ゲオルギオス』だったりして?」


「おや、正解です。もしかして、一族の関係者ですか?」


「ううん。手記を読んだ事があるだけ」


「手記は門外不出なのですが……どちらでご覧になられたのですか?」


「迷宮の中だよ。一部保存されてた」


「そう、ですか……」


そういえば、【巨大迷宮】が踏破されたらそう言った歴史的遺産まで消えてしまうんだなぁ……


「何故ここに?ここは迷宮ではないのだが…?」


アデルが少し強めの圧をかけた。

まだ敵認定のままなのだろう。


「お恥ずかしい話ですが、破門されてから真面な職に就けず、その、碌に食べることも出来ず、一攫千金を……」


「そうだけど、そうじゃない。お父さんは昔っからお人好しが過ぎるからすぐ騙されるんだ。見ず知らずの人間の保証人になろうとした事もあるくらい……ここに来たのだって、お金に困っていると知った道具屋が勧めたからだよ。迷宮じゃないから死ぬ事はないとか、聖属性魔法が使えるなら楽勝だとか、お宝の一つでも持ち帰れば高く買い取るから、とか唆されたんだよ。きっと安く買い叩くつもりだったろうさ」


でも、生活費は欲しい。

かといって1人だと心配だから中まで着いて来たものの、逸れてしまったと……


「アデル、この人ともうちょいお話したいんだけど……」


アデルは渋った。

元とはいえ、教会関係者は『敵』認定だからだ。


「でも、まずは人命救助。ご飯と寝床を提供しないと」


おじさん、フラフラだよ。

おじさんにも薄めたスポドリを渡す。

お豆腐とすりおろしリンゴと白パンも渡したところでストップが入った。

親子だね。マティアスと全く一緒だよ。

でも、大人なんだからもっと食べないと……


アデルは、ナナが甲斐甲斐しくおじさんを餌付けしている様子を眉間にシワを寄せてみていた。

まあ、確かに?まだ自分達に危害を加えたワケではない者を見捨てるのは何か違うか?

アデルは狩りの拠点に招くことを許した。


「んじゃ、ラムネちゃん、出口まで案内お願いね」


「らじゃー」




玄関の扉は外から施錠されていたが、ヒューバートの一蹴りで吹き飛んだ。

【リペア(修復)】で直したけどね!

鎖と南京錠の残骸も発見し、やはり何者かの手によって閉じ込められたのだと確信した。


「じゃあ、またね、幽霊さん」


バイバイすると手を振り返してくれた。

やっぱ、悪い幽霊じゃないんだろうな?

訴えを聞いてあげたいんだけど……

ウィジャ盤でなら会話できるかな?



仮拠点でおかゆを食べた親子は気絶するように眠った。

もう魔物に襲われない安全な場所だと気が抜けたのだろう。

安心したのならいい。




「お前、宝物庫の場所わかるんじゃね?」


アデルがラムネちゃんの脇に手を入れて持ち上げた。


「もちー」


「やっぱそうか! 今から行くか!」


喜びのあまり高い高いになった。


「アデル、私のラムネちゃんを連れてくなー」


「いや、お前も来いよ」


「お客さんだけ残すのはちょっと…」


「それは……仮拠点だし、荒らされても別に平気じゃね?」


「まだ敵認定解いてないの?」


「いや、逆に何でお前は信じらんないほど純粋に人を信じるかな?」


「ほえ?あの親子が嘘をついているとでも?」


「誘拐されたばっかで、関係者を疑わないのは何故だ?」


「全ての組織において、一枚岩はあり得ない。そもそも、あの飢えは本物でしょ?」


「……その言い方だと、『エピタフ』の連中も疑えと?」


「流石にそこまでは言わないけど、でも、用心は必要では?」


一瞬息をつめたアデル。

だが、フッと息を吐いて苦笑した。


「お互い、極端過ぎたな」


こっちも苦笑いだ。

アデルの後ろでサイラスが『調査済みですが何か?』みたいな顔をしていた事は黙っとこう。


ま、親子は明日まで目を覚まさないだろうとナナ達11人は城へ向かった。

門に『定休日』とあった。

お店かっ!

ヒューバートが見なかったふりをして門を開けた。

いいのかな~?


「玄関に見張りを立てる?」


「だが、みんなが新しい武器を欲している。交代で2度行くか?」とアデル。


「え、宝物庫の中身全部アイテムボックスに入れるつもりだったけど、欲張り過ぎた?」


「……おう、それで頼むわ」


ヒューバート達『アルゴス』が見張り、アデル達と幼女+3匹が宝物庫に向かった。



玄関の扉を開けると幽霊さんがいた。


「あはは、戻って来ちゃった」


あ、今お帰りって言った。

幽霊さんもちょっと嬉しそう。

そして着いてくるのね。



「『ファントムの嘆き』ってどんなのか知ってる?」


「ああ、涙型の結晶だ。血のように赤い」とサイラス。


「血の涙……相当な嘆きだねぇ」


言ってる傍からゴーストだ。


「【ピュリフ(浄化・聖)】」


「お、なんか落ちたー」

「もしかしてー?」

「血の涙ー」


「おお、やっと手に入れた」


それから何故かゴーストを倒す度にドロップした。


「昨日は1個も落ちなかったのにねー」

「なんで今日はザックザクー?」

「ナナの豪運に勝つほどの貧乏神が居たのかなー?」


「お前の豪運パネェな」とアデル。


「ドン引きやめて…」




「ここが宝物庫ー」


ラムネちゃんの案内で、とうとうお目当ての場所に辿り着いた。

扉をあけようとしたら、幽霊さんが飛び出してきた。


ここから先には行かせないようにしているような……


「あ、もしかしてトラップ?」


幽霊さんが頷く。

何とか身振り手振りで教えてもらった。

扉の両側にある2つの隠しスイッチを同時に押してから扉を開かないといけないらしい。


ありがとう幽霊さん。

お陰で下水道に飛ばされずに済んだよ。


「150年間難攻不落のカラクリ屋敷がこうもアッサリ……」


ジト目で見られても結果は変わらないのでーすよー。

幽霊さんまでもの言いたげに見つめてくるのはほっといて、問答無用で幼女+3匹はアイテムボックスに収納していった。

武器防具だけじゃなく、魔導具もあるのね。

後でじっくり見たいわぁ。




「さて、後は帰るだけだけど、その前に、幽霊さんを何とかしないと」


じゃじゃーん、と取り出したのはウィジャ盤。

日本っぽく言えば『こっくりさん』である。


いやぁ、ウィジャ盤を使った筆談はもどかしかった。

でも、根気強く文字を追っていくと、衝撃の事実が発覚した。

この幽霊さんは150年前に処刑された領主だった。

つまり、アデルのご先祖様!


「これはクロフォード辺境伯でしたか。お初にお目にかかります。私はクロフォード辺境伯家三男の末裔のアデライト・クロフォードと申します。この度は帝国への敗北と一族の処刑の無念を晴らすべく、まずは【巨大迷宮】の奪還の為の準備として宝物庫の武器を拝借させて頂きたく…」


それからアデルはもうすぐ【巨大迷宮】を攻略できそうなところまで来ていると報告した。

幽霊さんは、いや、辺境伯は満足そうに頷いた。

そしていずれ奪われた土地も完全に奪還する事をアデルが誓うと、辺境伯はそれまでこの城は自分が守ると胸を叩いた。




玄関に戻ってヒューバート達と合流する。

襲撃はなかったとの事。


仮拠点までの道のりで訊ねた。


「誰が閉じ込めたんだろうね?」


「心当たりならあるだろ?」とアデル。


「誰だとしても、私達がここに来るとか知るワケなくない?」


「そこはネックだな」とレスター。


「それに、誘拐ではなく始末に切り替えたのか?」とサイラス。


「今回のトラブルも私の所為だね。ごめんなさい」


「お前が謝る必要はないだろ」とアデル。


「そうだ。お前は被害者だ」とサイラス。


「そうだった」


可哀想な子を見る目は止めてください。


まったく、アデルは私を純粋に人を信じる事を弱点みたいに言ったけど、アデル達だってお人好しなんだよ。

自覚してないみたいだけど。


仮拠点に戻ると親子はまだ寝ていた。

なので、ヒューバート達は待ちきれないとばかりに宝物庫の武器を吟味し始めた。

色んなものがある。

それぞれお気に入りが見つかったようで何より。


あ、シロクマちゃん達も何か欲しいの?

その鎧はサイズが合わないねぇ。

その武器は装飾用じゃないかな?

その魔導具は何だろうね?


知らない魔導具は不用意に触ってはいけない。

私達は全員昏倒してしまった。


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