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どどど、どうしよう!?

違う部屋に飛ばされたみたい!

目の前には貴族っぽい長~いテーブルとたくさんの椅子!

食堂だね!

曰く付きの古びた洋館(お城だけど)とホラー要素ってもうあのゾンビゲーしかないじゃない!


部屋の隅でカタリと音がした。


「誰かいるの…?」


返事はない。


ゲーム的思考に陥った私はテーブルの下に隠れるという選択肢を選んだ。

スッとしゃがむ。

と、そこには頬はこけ、目が落ちくぼんだ男の子がいた。

膝を抱え、うつろな瞳でこちらを見ている……


「ぴゅぴゅぴゅ、ピュリフ~っ!!!」


【ピュリフ(浄化・聖)】を噛んだが、聖なる光が部屋を包む。

いや、部屋を突き抜け広範囲を浄化した。

なのに、目の前の男の子は消えなかった。


「やっぱモノホンの幽霊には効かないんだーっ!!!」


「ぼく、幽霊じゃないよ。それより静かにして。化け物が来ちゃうよ…」


「え…しゃべった……」


「そりゃしゃべるよ。いいから、早く隠れて」


私はテーブルの下に潜り、男の子の横で同じように膝を抱えた。

すると、扉が開き、誰かが入って来た。


人ではない。

いや、人型ではあるが……

ボーダーのシャツにハット、手には鉤爪のグローブ。

フレディっぽい!

そこにいるのはグローブじゃなくて手自体が凶器になってるけど!

しかも両手!

カチャカチャいわせてる!

殺る気満々ですね!


バイオだと思ってたら、急にリアル鬼ごっこになっちゃった!?


息を殺し、じっとしていると、もう1つの扉から出て行った。

でも、もうちょっと、もうちょっと待とう……


もう、いいかな?


「………大丈夫?」


男の子は見るからに絶食状態だ。

何か食べさせないと。

でも、急に食べたら胃がビックリするとかよく言うよね?

最初は何がいいかな?


男の子に背を向けてコソコソする。

まず、コップを出す。

スポドリを水で薄める。


「はい、ゆっくり飲んで?」


男の子は飢えた獣のようにコップに飛びついた。

咽てしまったが、まあ、仕方がない。


今の内に、次の食べ物を用意しよう。

まずはお豆腐。

絹ごしに2倍に薄めためんつゆをかける。


「次はこれ。はいスプーン……」


男の子はスプーンを使わずに手掴みで食べようとした。

が、勢いあまって握りつぶしてしまった。

床に飛び散ったお豆腐を見てベソっとする男の子。


「あ~、はいはい。もう一個あるからね」


お皿にぽんと新しいお豆腐を乗せると、めんつゆをかける前に食べちゃった。


おしぼりを渡す。

ついでに顔とか体も拭くように促す。


今の内にすりおろしリンゴを作らねば。

4分の1に切ったリンゴを……おろすべし!おろすべし!


「ふう、できたよ。今度はスプーン使おうね?」


男の子はお腹に物を入れて気持ちも安定したらしく、流石に落ち着いて食べてくれた。


「じゃあ、次はグリーンスムージーね」


だいぶ薄めたし、無添加で加糖なしだから断食後でも大丈夫なヤツ。


「ま、まだあるのか?」


「もうお腹いっぱい?」


「いや、食べる…」


食欲があるのはいい事だ。

生きる事を諦めていない。

いっぱいお食べ。

と意気込んでいたが、次に白パンをあげたらもうこれで十分だと言われた。


「私はナナだよ」


「ぼくはマティアス。おとうさんとはぐれちゃったんだ」


男の子は見たとこ10歳くらい。

赤毛で緑の目をしたかわいい系だ。

将来イケメンになるだろう。

体格はほっそりしていて、冒険者とは思えない。

服装も普段着だし、少しみすぼらしい……

お父さんについて来たというけど、普通は中まで入らないのでは?

訳ありかしら?


「そっか。実は私もなんだ。じゃあ、一緒に探そう?」


マティアスは素直に頷いてくれた。


「今までどうしてたの?」


「たまに厨房に行き当たる事があって、水だけはあったんだけど、怪物が現れたら逃げないといけないからなかなか厨房に戻ることが出来なくて…それに、毎日夜になると知らない部屋に飛ばされるんだ」


それはきっと、夜は玄関の扉を閉めるからだろう。

常に開けっ放しは魔物が外に出てしまうかもしれないから。

今日は扉が開いていたけど見張りがいなかった。

そこを怪しむべきだったのに……


それにしても、今までたった1人で生き残ってて凄いわ。

子供だけど、知恵があり機転が利くのね。


「おまえ、さっき、魔法使ったよな?」


「私は冒険者なのだ」


何かな? その疑いの眼は……

これを見るがよい、と冒険者カードを見せた。


「D級!?……マジかよ……」


ふはははは、まいったか!

なんて遊んでる場合じゃない。


「【マッピング(図化)】」


「それは?」


「地図を作ってるの」


「それも魔法か?」


「そうだよ。あ、体もキレイにしとこうか」


【クリーン(清掃)】と【キュア(浄化)】そして【ヒール(回復)】をかけた。


「すげぇな。ありがとう」


「いえいえ」


「ぼくも、魔法覚えようかな……」


「生活魔法がおすすめよ」


「それはちょっと……」


「でも、今、めっちゃ便利だって思ったでしょ?」


「そりゃ……だが、生活魔法では戦えないじゃないか」


「そうねぇ。私はテイマーだから自分では戦わないからねぇ」


「テイマーも珍しいな」


「あうう、シロクマちゃん達どこ行ったのかなぁ……」


あ、【文蝶】飛ばせばいいじゃない。


『 みんな大丈夫?

  私は1人だったけど

  男の子を拾ったよ

  お父さんを探しているんだって

  見つけたら一緒に行動してあげて

             byナナ 』


誰が誰と行動しているかわかんないけど、一先ずイチゴちゃんに【文蝶】を飛ばした。



そっと食堂の扉を開き、何もいない事を確認して廊下に出る。

しばらく歩くが、まだ魔物には出会っていない。

おかしいな、【文蝶】が返って来ない……

戦闘中だったかしら?

だったら悪い事したな……


「「「いーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」


あ、お馴染みの悲鳴だ。

こっち来る。


「あー、ナナだー!」

「よかったー、ナナだー」

「ナナー、たーしけてー」


シロクマちゃんは強いのにビックリしたらパニクっちゃうのよね。

今度は何に驚いたのかな?

背後を見たら、体が透けたおじさんが凄い形相で何か叫んでいた。

アレはあかんヤツでは?

モノホンじゃないですか~っ!!!


「大丈夫だよ。アレは何もしないから」


「えっ!?」


抱きついてきたシロクマちゃん達を抱きとめる。

あ、モフモフ幸せ……じゃなくて、マティアスの言葉を確かめるように幽霊さんを観察した。

なんか怒鳴っているみたいだけど、声は聞こえない。

目が血走ってて怖いわぁ……

でも、それ以外は何もしてこないな?


「シロクマちゃん達、大丈夫みたいだよ?」


「ほえー?」

「ほんとー?」

「マジー?」


私にしがみついたまま幽霊さんを見上げるシロクマちゃん達。


「あのー、声が聞こえないので何を言っているのか分かんないよ?」


言ったら、幽霊さんは驚いた表情をした。

あ、これ意思疎通できるのでは?


「筆談できる?」


幽霊さんは首を横に振った。

そして廊下に飾ってあった額に入った絵を手も触れずにガタガタ揺らした。

なるほど、ポルターガイストは起こせるが、ちゃんと触る事は出来ないからペンも持てない、と。

手詰まりだ……


「あ、【文蝶】だ。私が飛ばしたヤツかも」


シロクマちゃん達がずっと走っていたのをヒラヒラと追いかけてきたのだろう。

イチゴちゃんが手を伸ばすと、それは手紙に戻った。

中身はやはり私が書いたヤツだった。


シロクマちゃん達が手紙を読み終わり、一斉にマティアスを見た。


「迷子なのー?」

「可哀想にー」

「モフモフするー?」


「テイムしたのってコイツ等だけ?」


マティアスの表情がしょんぼりしている。

まあ、強そうには見えないもんね。

でも、とっても頼りになるんだよ。


「こらこらー」

「わたし達はー」

「強いんだぞー」


「幽霊から逃げてたくせに」


まあ、口は悪いがモフっているので嫌いではないのだろう。

存分に癒されたまえ。


あ、幽霊さんがまた何か喚いている。

きっと放置されたから怒ってるんだな。


「ねえ、宝物庫の場所知らない?」


幽霊さんはまた元気に何かを訴えようとしているけど、やっぱりわからん。

すまんのう。


さて、アデル達とも合流しないとね。


「ラムネちゃん、みんなの居場所わかる?」


「ちょっと待ちー……あ、いたいたー」


どうやら4つに別れて下の階や上の階にいるみたいだ。

迷宮では他のフロアは見えないって言ってたのに、ここでは見えるんだ?

迷宮っぽいけど迷宮じゃないから?

それとも、熟練度が上がって見える範囲が広がった?

あとで実験せねば……



まずは上の階から行く事にした。

そこにいるのはヒューバートとサイラスらしい。

取り敢えず、今向かっているからなるべく動かないよう【文蝶】を飛ばした。


途中、魔物と遭遇したが、シロクマちゃん達が瞬殺してくれる。

マティアスはすっかり3匹の虜になっていた。


「ナナが浄化魔法でー」

「ピカってしたからー」

「この辺にはゴースト系いないねー」


シロクマちゃん達がきゃっきゃと楽しそうに報告してくる。

あれ、だいぶ遠くまで届いたのか……

また魔法を暴走させてたのねん……


「アイテムドロップしないか見ないといけないから、今度からは1体ずつやらないとね」


「落ちてないかー」

「探しながらー」

「進もー」


どんな形をしているのか知らないけど、怪しいものは鑑定すればいいしね。


残念ながら『ファントムの嘆き』は見つけられず、上の階へ到着した。

2人がいる部屋の前に着いた。


「ナナだよ」


扉をノックするとヒューバートとサイラスが出てきた。


「ナナっ!無事でよかった!」


ヒューバートに抱っこされる。

シロクマちゃん達もサイラスに抱きついた。


「あいー。2人も無事でなにより」


「って、ゴーストか!?」


サイラスが幽霊さんに向かって剣を向けた。


「あ、待って。その幽霊さんは無害なの」


何か訴えているけど声が聞こえないから事情はわかんないけど、攻撃はしてこない事を説明した。


「本物の幽霊だと…? 初めて見た……」


2人とも怖がったりはしないんだね。


「で、途中でこのコと会ったの。お父さんを探しているんだって。見かけなかった?」


「いや、人間は1人も見ていない」


マティアスはお父さんの手掛かりがなくて残念そうな顔をしたが、大人と出会えた事でホッとしているようだ。


でも、私はハッとなった。

ラムネちゃんが【千里眼】を使った時、マティアスのお父さんの事を一言も言わなかった。

という事は、もしかしてマティアスのお父さんはもう……


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