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「ちわ。エゼルちゃんに会いに来たんだけど」
シロクマちゃん達が遊びに行きたいと言ったので早速冒険者ギルドにやって来た。
「いらっしゃい。こちらへどうぞ」
受付にぃについて行く。
3階の奥の部屋に案内された。
「よく来たな。まあ、座れ」
「えっと、本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「「「「ますー」」」
「そんなに畏まるな。あ、茶はいいぞ。外に出る」
ティーポットを手に取った買取にぃを制す。
「はい。行ってらっしゃいませ」
受付にぃは私達に小さく手を振って出て行った。
「お仕事大丈夫なの?」
「ああ、サブマスが優秀だからな。ボクは遊んで暮らせるんだ」
うわぁ、前サブマスが辞めちゃったのって、買取にぃだけの所為じゃないんじゃない?
どんまい。
あらためて、エゼルちゃんを見る。
ステレオタイプの金髪碧眼美少女エルフだ。
身長は私よりも少し高い。
シロクマちゃん2匹分くらいかな?
エルフのイラストにありがちな、かわいい狩人っぽい服装ではなく、普通のゆるふわワンピース。
ただし、ツインテールが元気なイメージを醸し出している。
カリンちゃんが撫でろと膝に乗り上げているので、悪い人ではないのだろう。
「で?私達は何で呼ばれたの?」
「茶でも飲もうと言っただろ」
「呼び出す口実かと……」
「わはは、他意はない」
エゼルミアはカリンちゃんを横に降ろし立ち上がった。
「では、早速行くか」
エゼルミアが壁に向かって手をかざすと異空間に繋がっていそうな虹色に輝く鏡たいなゲートが現れた。
鏡っぽいけど向こう側は見えないし、自分が映る事もない。
けど、シロクマちゃん達が突進して行った。
「ほら、行くぞ」
手を引っ張られてる。
いやいやいや、どこに行くのか先に言ってよ!?
鏡が迫ってきて、ぶつかるんじゃないかと手を伸ばしぎゅっと目をつむる。
「ほれ、ちゃんと目を開けてみてみぃ」
ほえ……!?
目を開けると、まず飛び込んできたのは広大な遺跡群。
山に囲まれていて、人工の建築物と自然が融合していて、途方もない年月がそこにあるのがわかった。
薄い霧にけぶる雄大な景色に言葉を失った。
「ようこそ、エルフの国へ」
ほへ~っと見上げ、キョロキョロしながらもエゼルミアについて行く。
シロクマちゃん達も、きゃっきゃとはしゃいでいる。
ふと振り返ると、割と大きめのゲートがあった。
あれが外界との境界線……
ここは本当に地上なのだろうか……?
全ての地理を知っているワケじゃないけど、エルフの国って特別感がある。
誰もが自由に出入りできるのかなぁ?
「ここは隔離された世界。選ばれた者しか入れん」
うん、それでこそエルフだよね。
イメージ通りで安心する。
結構歩いた。
でも、悠久の時を感じさせる建物が珍しくてあっという間だった。
「いい具合に腹が空いただろう? ここに連れてきたかったんだ」
その建物は大木と同化しているような塔だった。
転移陣で上に行けるという。
「迷宮でもないのに転移陣があるんだね?」
「転移魔法は人間には古代魔法だと言われているが、ボク達にとっては日常の魔法だ」
今のセリフでわかった。
エルフは人間と関わろうとはしない種族。
転移魔法が広まらなくてよかったけど、ちょっと寂しいね。
エゼルちゃんみたいに人間社会で暮らしているエルフもいるけど、きっと少数派なんだろうな。
転移先は展望レストラン。
せり出したバルコニーにテーブル席がある。
なんて贅沢な……!
案内された席に着く前に、手すりに近づいた。
高所から見下ろす街並みは神秘的だった。
ファンタジーの世界に迷い込んだみたい!
って、日本での記憶がある私にはこの世界自体がファンタジーなんだけど。
でも、絶景だ。
カメラ、カメラ……
あ、うん。シロクマちゃん達も映るよね。
あ、手すりに座るの見てて怖い。
はい、チーズ。
はいはい、もう降りようね。
ふう、ドキドキした。
写真を撮ったけど、キッズカメラではこの荘厳さは残せない。
目に焼き付けておかなきゃ。
テーブルに戻ると、ハタと気づいた。
なんだか、注目を浴びてない……?
「余所者が珍しいんだよ」
落ち着かずにソワソワしていたのが分かったのか、エゼルミアが大した事じゃないと笑った。
でも、物語だとエルフは人間が嫌いって設定多くない?
エルフの国に人間が立ち入るのは危険だったりしない?
ほら、大丈夫だと言ったのに、わらわらとエルフが寄ってきた。
「あのー、そちらの神獣様を撫でさせていただけませんか?」
「…………しんじゅう、さま?……………ええっ、シロクマちゃんって神獣だったのーっ!?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「えっ、だって、テイムしちゃったよ!?」
「いいんだよー」
「わたし達が望んだのー」
「ナナの側に居たいからー」
「ありがとう、みんな……っ」
ひしっと抱き合う幼女+3匹。
シロクマちゃん達の主という事で、私もエルフに認められたのだった。
エルフ達はシロクマちゃん達をちやほやした。
代わるがわる膝にのせて撫でたりランチをあ~んしたり。
流石エルフ、そんな姿も優雅で品がある。
いっぱい貢がれてシロクマちゃん達もそろってご満悦だ。
「シロクマちゃんを見た人はみんな珍しいって言ってたけど、まさか神獣だったとは……」
「ははは、ボク等から見たら神気駄々洩れだがな」
「じゃあ、魔石は持ってないのね?」
「そうだ。神獣は魔物とは根本が違う」
ああ、だからシロクマちゃん達は魔物避けがされている迷宮の隠し部屋に普通に入れるのか……
「シロクマちゃん達、モテモテだ」
「エルフは妖精に近いからな。神獣の神気が心地よいのだ」
あり? シロクマちゃん達にもふもふ攻撃されると落ち込んでても気分が浮上していたのは神気で癒されていたの?
「お主もなかなか心地よい気を放っておるがな」
「ほえ?」
エゼルミアは詳しく話してくれる気はないのか、ニコニコして紅茶を口に運んだ。
ランチもデザートも美味しくて大満足の1日だった。
エルフ達に名残惜しそうにされながらもゲートをくぐる。
冒険者ギルドに戻ってきて、別れ際エゼルミアは一瞬神妙な表情をして言った。
「死ぬなよ」
主語も何もなかったけど、言いたい事は察した。
わかってるよ。
ここはゲームじゃない。
どんなゲームでも初見でエンドロールまで1度も死なずにクリアした事なんてない。
ここは現実。
残機なんて存在しない。
1度死んだらそれで終わり。
迷宮攻略は常に危ない橋を渡っている。
でもね……
「もち、死なないし、死なせないよ」
2日後、予定通りに【巨大迷宮】にやって来ると、5人組に絡まれた。
シロクマちゃん達がめっちゃモフられてる。
「あにすんだよー」
「毛並みがー」
「ぼさくれるー」
「キミ達がトップランカーだろ?ちびシロクマ連れた幼女は目立つな~」
チャラ男に話しかけられた。
めんどいなぁ。
「誰?何か用?」
「オレ達は新たにS級認定された冒険者パーティー『クリムゾン・スクワッド』だ」
ああ、この人達が……
って、クリムゾン(赤)…スクワッド(組)…だと…?
ぷふっ、日本語訳したら『赤組』じゃん。
白組もいたりして……
「ダンジョン・コアを手に入れるのはオレ達だ!」
元気よく宣戦布告されたけど……
「さいですか。行くよ、シロクマちゃん達」
「「「らじゃー」」」
モフってくる手を逃れ、しゅたっと整列するシロクマちゃん達。
「って、ちょっと待とうよ」
「やだ。忙しい」
「これから攻略~? 今、何階層~?」
「ひみつー」
「どっちが先に最深部に到達するか競争しな~い?」
「出遅れにチャンス無し」
「わはは。打てば響くね、キミ~」
「悪霊退散っ」
「取り付く島なしだね~」
しつこいチャラ男にシロクマちゃん達もご機嫌ナナメ。
「わたし達と肩を並べたいのならー」
「ちゃんと1階からー」
「チャレンジしてよねー」
「あ、ああ。もちろんだとも!」
チャラ男がそっと尻ポケットに手を持っていったのは見逃さなかったからね。
きっと、適当な階数のセーブクリスタルを買ったのだろう。
S級だからなんだ。
迷宮は甘くないぞ。
あ、目ざといシロクマちゃん達に見つかった。
イチゴちゃんがチャラ男の顔にモフモフ攻撃を仕掛け、ラムネちゃんがポケットに手を突っ込んで、カリンちゃんにパスした。
ひょいひょいとチャラ男を交わしてパスするシロクマちゃん達。
おちょくって遊んでるな……
「あ」
私に飛んできた。
「これ、何階の?」
「………………………81…」
え? もしかしてそれってこないだ押収したクリスタルだったりして……
ずっるいなぁ…
押収品は国の物になる。
帝国がどう扱おうと誰も文句言えないじゃない。
「ふーん…乱暴に撫でるからシロクマちゃん達怒ったんだよ。ちびっこにはちゃんと優しくね」
クリスタルを返し、アデル達に駆け寄る。
「キミ、オレ達の仲間にならないか?」
「お断りよ」
「否ー!」
「断固ー!」
「拒否ー!」
力いっぱい断られたのに、チャラ男は「またね~」と手を振ってきた。
めげないその胆力だけは称賛に値するよ。
「あれがS級なんて世も末ね」
「手厳しいな」とサイラス。
「だってS級は物語の主人公クラス、つまりスーパーヒーローのハズでしょ? それなのに、他所のパーティーの幼女を勧誘するなんて通報案件でしょ」
「お前が普通の幼女ならそうかもなぁ」
ポンとアデルに頭を撫でられたが、それってどういう意味!?
「は…? え? は…?」
至極真面目な顔で言われて二の句が継げず、フリーズしてしまった。
シロクマちゃんに両手を引かれ、腰を押されて転移陣に押し込まれる。
ヒューバート達が最初に第96階層に乗り込み、幼女+3匹が2番目というのは暗黙の了解となっている。
まだ心ここにあらずのナナに代わって、シロクマちゃん達がセーブクリスタルをセットし、ポチポチと行先を入力する。
「ほら、シャキッとしろ。死ぬぞ」
転移直前、アデルにそう言われて見送られる。
言葉が脳に達した瞬間、口から自然と零れ落ちた。
「解せぬ」
「何がだ?」
転移先に居たヒューバートに聞かれたが…
「別に……」
なんとなく、愚痴るのは大人げないと感じて言葉を飲み込む。
「んじゃ、行きますか」
アデル達もそろい、スタート地点から踏み出した。
四角い部屋が並ぶフロアではなくなったとはいえ、即死トラップがあるかもしれないから慎重に進む。
「そういえば、前人未到のフロアなら、宝箱とか残ってないのかな?」
「そうだな。折角なら全部の部屋に行ってみるか」
ヒューバートがGOサインを出す。
「今までより天上が高いね。大きな敵が出て来るんじゃない?」
格納庫があるからかもしれないけど。
「いや、あれは……」
先頭を歩くヒューバートが足を止め呟いた。
何がいるの?
ヒューバートの後ろから覗き込んだ。
向かいからやって来るのは黒い皮膚、ゴツい体型、そして背中には蝙蝠の羽根……
デビルっぽい!
「飛ぶのか……」とヒューバート。
「【バリア(障壁)】」
「「「「へ?」」」」
「いや、飛んだら面倒だから天上低くしたんだけど…」
飛び立ったけど、見えない天上にぶつかって落ちたデビル。
怒って一直線にこちらに向かって来たが、メイソンが雷の魔術をぶっ放して倒した。
((((ホント、唯一無二の幼女だよ))))
皆に頭をぽんぽんと撫でられた。
が、先程「普通じゃない」と言われた事がよみがえり、『ぬ~ん』となるのだった。




