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拠点に戻ると、シロクマちゃん達は手に入れたおもちゃを持ってプールに直行した。

そう、彼女達が購入したのは迷宮遺物の電動ウォーターガンだ。

普通のおもちゃ、よね…?

ちゃんと水を補給して、飛び出すのはただの水。

良かった。武器じゃなくて。

武器じゃないのよね…?


チビちゃんは防水らしいので、お風呂に浮かべるアヒルちゃんに乗って遊んでいる。

シロクマちゃん達がはしゃいでいるので結構波が激しいのだが、それが楽しいらしい。

かわいい。

パシャリ、とカメラに収める。

かわいい画像データが増えてゆく。

満足じゃ。


シロクマちゃん達が足場にしているいくつもの巨大フロートボートの1つに乗ってプールを漂いながらこれからの事を考える。


【巨大迷宮】の踏破は目前。

あと10階層を残すのみ。

ただし、第91~95階層はまだ正方形の部屋が並ぶ即死トラップだらけの階層。

第96~99階層はまたノーマルマップに戻っている。

いや、格納庫がフロアの大部分を占めている。

ここがボス部屋なのだろう。

嫌な予感がする。

巨大ロボとか出てきたらどうしよう……

生身の人間が勝てるの!?


そして最深部の第100階層はどう見てもワンフロア。

1度踏み入れたらボスを倒さないと帰れない。

様子見も出来ず、対策の練りようがない。

いや、まあ、ボス部屋が一方通行なのはどのフロアでも同じだけど。


4日後には第91階層か…

とりあえず、5の倍数の階じゃないからボスは蒼天よりも弱いハズ。

問題は95階だよね……蒼天より強いなんて、勝てなくない?

私は本当について行ってもいいのだろうか……?


「ぷへっ」


シロクマちゃん達の流れ弾がおデコに直撃した。

スイッチが濡れちゃう!

アイテムボックスに仕舞い、私も水鉄砲に給水を開始する。

私のは昔ながらのド定番のピストルタイプ。

クリア素材単色のアレ、水ピストルだったっけ?

簡単でいいんだよね、これ。


私の準備が完了すると、シロクマちゃん達がきゃーきゃーと逃げ惑う。

が、水ピストルの射程はせいぜい3メートル。

本物のピストルの弾も避ける勢いのシロクマちゃん達には当たらない。

が、シロクマちゃん達のは電動なので、自動給水が20秒くらいかかる。

そこからはアナログ無双だった。


結局みんなびしょびしょになるまで遊びつくし、何の準備もしないまま当日を迎えた。



さて、迷宮の第91階層にやって来ました。

要領は掴んでいるので攻略はわりとサクサクだった。

チビちゃんも大活躍。

靴を投げた後に走り回って細かいトラップを見つけてくれた。

1度、魔法陣を踏んで重力反転になった時は面白くてみんなでわざとその部屋に入ったりしながら進む。

順調に進み、とある扉を開けるとだだっ広い空間に出た。

ボス部屋だ。


中に入らずに、部屋を見渡したが何もいない。

ここまで誰も来たことがないのだろう。

だから、まだ何も生成されていなかった。

私達が中に入ったらきっとドアが開かなくなり、ボスが出現する。


みんなで頷いた。

外に取り残されないように全員でサッと中に入ろう、と。

3、2、1… Go!


部屋に飛び込むと、数秒後に扉が閉まる。

すると、部屋の中央に魔法陣が現れた。

フッと現れる巨大生物。

足が8本もあるけど、カメレオンに似ている。

色は青みがかったダークグレーで、トゲトゲした岩みたいだ。

ヘビみたいな目がギョロギョロしてこちらに向いた。


いくら似ていても、カメレオンではないので前後に揺れながら動きはしない。

全長10メートルくらいありそう。

恐竜みたいだ。

あ、みんなが武器を構えると、狩りゲームみたいね。

シロクマちゃん達が『オトモ』に見える……

いかんいかん、今は写真撮ってる場合じゃない。


っと、馬鹿な事をやっていると、カメレオンが毒霧を吐いた。

バリアでみんなを守る。

もしかして、これ、バジリスク!?


「みんな、あいつの目を見ちゃダメよ!」


バジリスクなら、目が合うと石化しちゃう!

咄嗟に『リフレクト・リング』を装着した。

石化はヤバい。

ゲームによっては完全に石化したらゲームオーバーだ。

誰かがちょっとでも石化したら………あれ?石化解除の魔法って何だっけ!?

ゲームと違ってこの世界にそんな魔法あったっけ!?


落ち着いて考えたくてそっと離れようと思ったら、バジリスクがこっち向いて口を開けた。

ヤバいと思うと同時にバリアを展開。

そのバリアにベタンッ! と長い舌がぶち当たった。


食べられるところだったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!


「お前は下がって常にバリア張っておけっ!」


ヒューバートの言葉に喜んで従う。

シロクマちゃん達はキリっとした表情で残った。

だ、大丈夫かな……


戦闘が再開された。

先制はヒューバートだった。

振りぬいたロングソードから放たれる斬撃。

しかしバジリスクは避けた。

そして消えた。

アデル達が吹っ飛ばされる。


えっ……バジリスクって姿を消す事できたっけ!?

カメレオンに似ていると思ったけど、能力も似てるね!

こういう時って物語だと水をかけたりするよね?

流石に雨を降らせる事はできないんだけど……

でも、何とかして水をまかないと、みんな防戦一方だ。

…………………………………そうだ!


「シロクマちゃん達! ウォーターガンで色水撒いて!」


「なるー!」

「いいねー!

「がってんー!」


シロクマちゃん達は赤青黄色の色水を撃ちまくった。


ぴちゃっ。

空中に赤が浮いている。


「あーっ!」

「ここだーっ!」

「撃てーっ!」


集中砲火を受けたバジリスクはカラフルなカメレオンみたいになった。

自分の手が見えてもう隠れる意味がないと悟ったのか、バリジスクは姿を現した。

怒っている。

金切り声をあげて睨みつけてきた。


ピシっ。


『アルゴス』のハンマー使いのノエルが石化した。

徐々に石化じゃなく、一瞬で石化した。

破壊されたら大変!


「シロクマちゃん達お願い! ノエルをこっちに避難させて!」


「「「らじゃーっ!」」」


自分自身も色水を被ってカラフルになったシロクマちゃん達がぴゅーっとノエルを運んできてくれた。


「シロクマちゃん達、石化解除の魔法知らない?」


し~ん………


「この世界にはないの…?」


しょんもりする3匹。

シロクマちゃん達がまだ『お取り寄せ機能』を持っていても、それはナナが居た前の世界の大手通販ショップに繋がっているだけなので、物語やゲームに出てくるアイテムを取り出せるワケではなかった。

カリンちゃんの【創造】のスキルも、想像上のアイテムは創れない。


ポタリと涙が落ちる。

ばかっ! 泣いてる暇はない! 考えろ!

この世界の知識では助けられない……

仲間が誰も駆け寄って来ないって事は、誰の手にも負えないからだろう……

なら思い出せ。

考えろ。

前世で見た物語ではどうやって対処してた?

魔法もダメ、アイテムも持ってないなら他には?

他……伝説とか?

石化してくる魔物はバジリスク……コカトリス……メデューサ?

そうだ、バジリスクはメデューサから生まれた!


「ナナ、ノエルは……」


ヒューバートが声を掛けてきた。

いつの間にか戦闘は終わっていた。

蒼天のお陰で何段階も強さが引き上げられた今の彼らには、相手が見えていればバジリスクでも瞬殺なのだ。


「どうすればいいのかわかんなくて……」


「石化するなんて、伝説でしか聞いた事がない……」


一番物知りの魔術師のメイソンが下を向いて呟いた。

チビの私には悲痛な表情も全部見えた。


「そんな……っ」


いえ、ダメよ。

諦めない。

さっき、私何か思い出そうとしてた。

そう、メデューサよ!血よ!


「シロクマちゃん達、バジリスクの血をウォーターガンにいっぱい詰めてきて?」


「なぜー?」

「なんでー?」

「どしてー?」


「お願いっ」


焦ってはいるが、真剣なナナにハッとなったシロクマちゃん達はキリっと頷いて走っていった。


「血がどうかしたのか?」とアデル。


「石化させられた人をメデューサの首を落として血をかけて助けたって話を本で読んだ事があって…」


「そうか、特殊能力を持つ魔物がその能力に対する抗体を持っているのはままある事!」


メイソンも肯定してくれて、少し希望が見えた。



シロクマちゃん達が戻ってきた。


「ノエルにその血をかけてくれる?」


「「「らじゃーっ」」」


ウォーターガンから放たれた血が石化したノエルを赤く染める。

すると、表面にヒビが入った。

そのヒビから漏れた光が全身を包む。

フッと暗くなった。

光が治まったのだ。


「あれ? 僕…え? 何この状況?」


みんなに囲まれ注目されているという滅多にない事態にキョロキョロするノエル。


「「「「「やったーっ!!!」」」」」


混乱するノエルをバシバシ叩く仲間達。

あ、みんなで叩くからノエルがキレて蹴りを入れてきた。


「「「ノエル~」」」


シロクマちゃん達がよじ登り、ひしっと抱きつく。


「カチンカチンのー」

「コチンコチンにー」

「なってたんだよー」


3匹を順番によしよしするノエル。

必死にしがみついてくるので、自分が死にかけていた事を悟る。


「そっか…うっかり奴の目を見てしまったんだ」


「ドジっこー」

「うっかりさんー」

「おっちょこちょいー」


「あはは、悪い悪い」


シロクマちゃん達を纏わりつかせたまま、ノエルが私を抱っこした。


「心配かけてごめんな。もう大丈夫だから、そんな顔しないで」


「ふえ……っ」


我慢してたのに!

私もノエルにしがみついて泣いた。




今日はもう戻る事になった。

帰りに冒険者ギルドでバジリスクを換金した。

完全石化しても、すぐに血をかければ復活できるという情報にも値段がついてまたとんでもないお金を貰ってしまった……



拠点に戻ると、とりあえず1階のラウンジで対策会議が開かれた。

自分達は強くなったとチョーシに乗っていたと反省した。

誰も挑戦した事のないフロアに行くのに、何の対策もせずに乗り込むなんて馬鹿だった。

命は1つしかないのだから、「こんなコトもあろうかとーっ!」くらいの準備があって当然だったのだ。


次のダンジョンアタックはまた4日後にして、今度はそれぞれ準備に邁進した。

私は石化解除の魔法が存在しない筈はないと図書室に入り浸った。

伝説でしか聞いた事がないのなら、古代魔法にならあるハズ……

そして見つけた。


「【デペトリフ(石化解除)】ね、覚えた」


戦力としては全く役に立たないから、せめてサポートだけは手を抜かないわ。


とりあえず、息抜きにプールで遊んでいるシロクマちゃん達と合流したが、バジリスクの血を注入したウォーターガンで遊んでいるのを目撃してめっちゃ【クリーン(清掃)】と【キュア(浄化)】をかけたのだった。


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