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何とかアデル達を説得し、落ち着いて話し合える場所として冒険者ギルドにやって来た。

併設されている酒場には半個室になっている席もある。

あと、ランチ食べてなかったからね。

シロクマちゃん達は外食の際、椅子の高さが合わないのはいつものコト。

どこでもキッズチェアがあるとは限らないので、自前の椅子を用意しておいた。

テーブルの高さは大体どこも似たようなものだし、少しならクッションの厚みで何とかなるし。

今日初めて使用する。

梯子がついているハイスツールにしてみたが…

うむ、なかなか良さげだな。

私は分厚めの円座クッション。

体重軽いからほぼ沈まないので結構高さを稼げる。


注文の品が届くまで、何とも言えない空気が漂う。


「えっと、まずは助けに来てくれてありがとう」


「いや、こっちこそ、守ってやれなくてすまなかった」


「ううん、アデル達の所為じゃないよ。私が勝手にセーフゾーンだと思って油断しちゃったのが悪いんだよ」


セディの息のかかった組織だから大丈夫だと思ってしまった。

アデルの『影』と会った事があるのに、他の組織にもそういうのがいて当然なんだよね……


「そうだ、ナナー」

「まずはー」

「首輪外そー」


「忘れてた。よろしく」


隣に座っていたイチゴちゃんに【ディスペル(解呪)】をかけてもらう。

が、首輪は外れない。


「あれー?」

「なんでー?」

「どうしよー?」


おかしい、何でー?と、ラムネちゃんとカリンちゃんも挑戦するが、やっぱり外れない。


「あっ、リフレクト・リング付けてた。ごめんごめん」


「んもー」

「ナナのー」

「うっかりさんー」


えへ、すっかり忘れてた。

リフレクト・リングは取扱注意だな。

魔法攻撃を弾いてくれるのは助かるけど、回復系まで効かないのはいざと言う時に致命傷になりかねない。


「「「【ディスペル(解呪)】」」」


3匹同時詠唱で首輪はポロリと外れた。

首輪はアイテムボックスにないないしておこう。


「何故、外れる…?」


驚くジャック。

やはり、隷属の首輪の【ディスペル(解呪)】による解除方法は知られていないのね。

少なくともあの大聖堂には隷属魔法の使い方が伝わっているが、優秀な使い手がいるワケではないとみた。


「隷属の魔法は呪いの一種なのかもしれないね?」


ジャックがフリーズした。

普段から無口なのに。


私もシロクマちゃんに【ディスペル(解呪)】で外せると教えてもらっただけなので、理屈はよくわかんない。

ラムネちゃんが誘拐された時はいっぱいいっぱいで原理とかまで頭回んなかった。

そうでなくとも、学者じゃない私にとって魔法とは、『そういうもん』と言われたらそういうもんなんだよ。



「うにゃ~、スッキリ~」


背伸びをして、ケープのフードの重みに気づいた。

こっちもすっかり忘れてた……

自覚はなかったけど、ずっと動揺しまくって思考回路がうまく回っていなかったようだ。

シロクマちゃん達が来てくれて、ようやくいつもの自分を取り戻せた。

うん、私、安心したんだ……


「もう出てきてもいいよ」


声を掛けるとぴょんっとテーブルの上に飛び出てきたのはちびゴーレム。

食事をするトコロに土足は良くないので、一応【クリーン(清掃)】と【キュア(浄化)】をかけておく。

ついでに自分達にも。


「チビちゃんもご飯食べる?」


ちびゴーレムは首を横に振った。

身振り手振りで何かを伝えようとしている。

要約すると、スリープモードになっていたからあと1日くらい保つらしい。


「それ、ゴーレムか?」とアデル。


「うん。なんとなく作ってみたけど、かわいいでしょ?」


ちびゴーレムがアデル達に向かってお辞儀する。


「お、おう」


なんとなくでゴーレムが作れるのか……

アデルはちびゴーレムをつっついた。


料理が運ばれてくると、アデル達はまともに食べていなかった事を思い出してがっついた。

全部食べ終えて、やっと本題に入る。


「で? お前は何故逃げようとしなかったんだ?」とアデル。


うん、それが一番の疑問だよね?


「この街の領主であり大司教であるセオドア・ウォーレスのトコロに連れて行かれたんだけどね、セオは私をオーランドに引き渡すつもりはないって言ったの」


「すでに大司教を愛称で呼んでいるのが気になるが、今はひとまず置いといて…黒幕はオーランド帝国って事か? もしかしてまた第2皇子の指図か?」とサイラス。


「そうみたい。そして隷属の首輪を外すには礼拝堂に行かないといけないって言われたから、そこに秘密があるんだと思うの。そもそも首輪の存在自体をどうにかしたいと思ったし」


「確かにな。どれくらい使い手がいるかわからないし、対処できるようにしておくべきだな」とレスター。


「そして一番の疑問は……そいつは誰だ!?」


アデルはジャックをビシっと指差した。

対して、差されたジャックは無言で食後のお茶を飲んでいる。


「彼はジャック。セオの護衛? で、私の見張り」


「何で黙ってついて来てんだよ!? しかも普通に飯食ってんじゃねぇ!」


「首輪を外すのは19時以降じゃないと無理だって言われたからそれまで観光したいって言ったら色々案内してくれてたの」


「お前、誘拐されて観光って何やってんだよ?」


「そうだそうだー」

「ナナだけサーカスー」

「ずーるーいー」


「あー、ゴメンねぇ? 後でもう1回見に行こうか?」


「いえー!」

「やりー!」

「よっしゃー!」


「って、おい。敵地で気を抜くな」


シロクマちゃん達がブーブー言ったが、アデルの許可は下りなかった。

ああ、たった1日離れてただけなのに、このわちゃわちゃ感が懐かしい。



「でね、もっかい大司教館に戻ってセオとお話しする必要があると思うの」


教会の情報とか聞けないかな?

あと、もう誘拐とかやめて欲しい。


「お前は何も言う事ないのか?」


アデルがジャックに問うが、彼はただ頷くだけだった。

敵愾心剥き出しのアデルだったが、ジャックが同じ熱量を返してこないので暖簾に腕押し感がハンパない。

自分だけ怒っているのも馬鹿らしくなり、アデルは通常運転に戻った。


う~ん、ジャックって私が逃げようとしなければ何でも許してくれるよね?

一体どんな命令を受けているんだろう???




というワケで、ギルドを出ようとした時、地震が起こった。

あちこちで誰かが叫んでいるけど、震度2か3ってとこかな。

前世では大したことない揺れだったのでそのまま外に出たけど、アデル達は固まっていた。

シロクマちゃん達もちょっと怯えている。

もしかしなくても、地震初体験なのかな。


「大丈夫だよ。これくらいじゃ、建物も壊れたりしない」


あ、それは前世の感覚だ。

この世界だと建物は免震とかないっぽいな。

あと、地震の原因って龍だったね……

龍が近づいて来ているの!?


「もしかして、最近地震が増えてたりする?」


シロクマちゃん達をナデナデして落ち着かせながらジャックに訊ねると、彼は重々しく頷いた。

そっか……最初に龍のウワサを聞いてもう数ヶ月経ったね。

地震の原因が本当に龍なら、地中を移動してきたの?

迷宮に通っている間に『デルタ8』を通り過ぎてこっちに来たの?

ただ穴を掘っただけなら崩落するよね?

地震が怖いんじゃなくて、崩落が怖いんじゃ……



ジャックが呼び寄せた馬車で大司教館にみんなで戻る。

また応接室に逆戻りだよ。

シロクマちゃん達がメイドさん達にちやほやされていると、扉が開いた。

メイドさん達は心得たように全員部屋を出ていく。


こっちを見たセオが引きつった笑みを見せ、ソファの後ろに立っているジャックをチラリと見てタメ息をついた。

なんか余計なモノがいる……とでも思ってそうな表情だ。


「これはこれは、飛ぶ鳥を落とす勢いのかの有名な『エピタフ』のクランマスター様ではありませんか」

(金と権力を使ってキャリーして貰ってトップランカーになった若造が!)


「そちらこそ若くして大司教にまで上り詰め迷える子羊を導く神の使徒様だとお噂はかねがね」

(棚ぼたで地位と名誉を得て勘違いした正義感を振りかざす聖人気取りの世間知らずが!)


あれれ~? 副音声が怖いぞ~…?

聞こえない筈の心の声が駄々洩れなお貴族様達。


アデルが立ち上がり、ローテーブルをはさんでセオと硬い笑みで固い握手を交わしている。

折角言葉選びには成功しているのに、顔と態度で台無しだねぇ。

だけどさ……


「セオ、そこまでにして。その言葉は私に効く…っ!」


完全にキャリーしてもらいました! ゴメンなさい!

カリンちゃんを抱きかかえて背中に顔を埋める。


「ああっ、ごめんねっ。ナナの事を揶揄したワケじゃないんだよっ」


だが、言葉のナイフはピンポイントに私だけに刺さるんだよねぇ……


ぷっ。


カリンちゃんを少しズラして声がした方を見るとジャックだった。

いつものように、すまして立っている……

いや、口元が微妙にうにゅってなってる。

ああ、笑うがいいさっ! 私はおんぶにだっこのよわよわ幼女ですよっ!


ソファに立ち上がったシロクマちゃん達に両脇からむぎゅっと抱きしめられる。

幸せだ。

ちょっと浮上した。


みんなソファに腰を下ろす。

セオはシロクマちゃん達をじーっと見ている。

うん、かわいいもんね。

でも、抱っこはダメ。



「一ついいですか?何故、首輪が外れているのです?」


いつもの胡散臭い笑みを消し、真面目な表情でナナを見る。

まるで、ちょっとした変化も見逃すまいとするように。


「【ディスペル(解呪)】で外せるの知らないの?」


「そんな、まさかっ……いや、そうか……」


セオは1人で納得しちゃった。


「そもそもさ、隷属魔法関係は違法でしょ? 教会は堂々と使い過ぎだよね?」


取り締まらないといけない側の領主が法を破っちゃダメじゃん。


「確かに…そうなんですが……」


セオは逡巡した。

いくら理由があれど、正しいとも言えないから……


「19時に首輪を外す約束でしたね。もう外れていますが、見せてあげますよ。礼拝堂の地下にある教会が抱える禁忌の一つ、を……っ」


突然揺れる。

また地震だ。

さっきより強かったかも?

といっても、震度3だな。


やはりみんな慣れないみたいで顔色がよくない。


「最近増えてるんだってね?だとしたら、龍が近づいて来ているのかもしれない。となると、地震よりも大陥没を警戒した方がいいのでは?」


「龍はおそらく実際に穴を掘っているのではなく、特殊能力で地中を移動していると思われます。ですが、地上に出て来るような事があれば、大災害間違いなしですが……」


セオは防災対策の為に執務室へ行ってしまった。

けど、19時には礼拝堂に案内してくれるという。

時間まであと4時間くらいあるので、別部屋を用意してもらった。

ついでに泊っていっていいと言われたので、お言葉に甘える。




19時ちょうど、メイドさんに呼ばれて正面玄関に集合し、馬車で大聖堂にやって来た。

裏口から入ると、礼拝堂には誰もいなかった。

完全に人払いがされている。

セオの護衛はジャックだけ。

よっぽど信用しているのだろう。


「偶にこうやって秘密のお勤めをしているので、皆さん心得たものです」


誰も覗きに来ることはないそうだ。


「まあ、誰も入って来られないように結界を張りますけどね」


セオが祭壇に手を翳すと礼拝堂全体に結界が張られたのがわかった。

さらに、何やら呪文を唱えると床石が開き、地下へと続く階段が現れた。

自動で明かりがついていく。

明りに導かれるように螺旋階段を降りてゆく。

随分深い。

午前中に上った塔くらいあるかもしれない。


「ここは遥か昔、人類の有史以前から存在すると言われているんですよ。まあ、誇張されているとは思いますが。それでも数千年単位ではあると思われます」


セオが解説してくれる。

正真正銘の古代遺跡。

遺跡を保存、管理する為に教会が建てられた。

上物は何度も建て替えられ、この階段も改変されてはいるが、地下の部分は手付かずでもその存在を損なう事はなかったという。

おそらく、結界の類。

エネルギーの元は龍脈だろう。

世界中に教会はあるが、そのいくつかにはこの様な地下遺跡が存在している。

その存在を知っているのは歴代教皇と数人の大司教のみ。

とはいえ、管理の為に信用できる数人には秘密を明かしているが。


「それを私たちに見せてもいいの?」


「まあ、他言無用でお願いしますよ」


そりゃもちろん誰にも言わないけど。

ゆるいな……大丈夫か?


話を聞きながらだったので、代り映えのしない風景でも退屈はしなかった。

とうとう行き当たりに辿り着いた。

どんな凄いモノがあるのかと思いきや、さっきまでいた宮殿にあるような普通サイズの扉があるだけ。

魔法で鍵を解除し、扉が開かれる。

中に入ると、大広間だった。

ただし、サイズがおかしい。

巨人の世界に迷い込んだような感覚になるほど、視界に入る全ての物がデカい。

さらにそのデカい扉をくぐると、そこはただの通路だった。

めっさ天上高いし、横幅も広いからホールに見えるけど。

突き当りにまた巨大な扉。

セオが手をかざすと、自動でゆっくりと重々しく開いた扉の先には再び広大な空間。

そして、そこには磔にされた巨人がいた。

いや、磔というのだろうか?

全身にたくさんの十字架が刺さっている。

イーデン王国で見た白い巨人に似てる。

こっちの方がだいぶ小さいけど。

されど巨人だが。

そして、顔がある。

包帯の様な布が巻いてあるので見えないけど。


セオはくるりと振り返り、舞台に立つ役者のような芝居がかった仕草で手の平を上にして巨人を指し示す。


「ご覧ください。こちらが悠久の時を生きる『吸血鬼の始祖』で御座います!」


うわぁ…色んな意味でスケールがデカい話ですねぇ……


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