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朝食を食べに食堂を訪れると、アデルに「しばらく、この建物から出るな」と言われた。


「ほぇ? なんで?」


最近、セーブクリスタルを盗もうと拠点周辺をウロウロしている輩が多いらしい。


「昨夜は敷地内に侵入者がいた」とサイラス。


「うぇ、冒険者って……ちょっとガッカリだよ……」


「冒険者だけでなく探索者も、回収屋も、賞金稼ぎも、盗賊も、ゴロツキもありとあらゆるゴミ共が俺らを狙ってんぞ」とサイラス。


「ガッカリだよ!」


ずっと『影』がナナの周辺を掃除していたので今までそういうのとは無縁だったのだ。

が、今回は数が多くて注意喚起が必要だった。


「あと、お前の誘拐、諦めてねぇみたいだぞ」とレスター。


「ガッカリだよぅ……」


「がっくりー」

「げんなりー」

「どんよりー」




それから1週間も引きこもりでシロクマちゃん達がぶちギレた。


「こうなったらー」

「殴り込みー」

「一択だよねー」


「「「ちょっと待て」」」


「拒否ー」

「却下ー」

「だが断るー」


「わかった! 魔道飛行船の見学に連れてってやる!」とアデル。


「なんだー、早くそれ言ってよー」

「やぶさかではないー」

「うむ、くるしゅうないー」


コロッと機嫌が良くなったシロクマちゃん達はきゃっきゃと浮かれているけど、私は学習した。

行くのがアデル達3人と幼女+3匹だけなのは、ヒューバート達が残って何かをする為……

たぶん、大掃除。

私達の護衛要員を掃討部隊に回せるのなら、何も知らないフリをして遠足(?)に行くよ。



ちなみに、冒険者ギルドで第90階層の魔物を丸っと持ち込んでくれると信じてワクワクしながら待っていた買取にぃと受付にぃだが、全くやって来ないナナにヤキモキし、待ち焦がれ、焦燥に変わり、最終的に絶望して灰になっていたり……





アデルがセディに造船所の見学許可を取り、イチゴちゃんに王都まで転送してもらった。

その足で王都から馬車で約半日の距離にある川沿いの平野に翌日の朝到着。

そこには最終組み立て工場や格納庫だけではなく、ちょっとした集落も出来ていた。


ほぼ『エリア51』やん……

アメリカ空軍の極秘軍事施設で宇宙人だのUFOだのオカルトな噂のある場所。

本当は空軍機のテスト開発が行われている立ち入り禁止区域である。


見晴らしのいい広大な敷地にポツンと存在する施設。

こっちの世界に『空軍』という言葉なないけど、意味合い的にはそうなるよね?

国が行っている最新技術の開発なんて国家機密だから。

周辺に森はないので、川で材木を運んで基地を建てたんだろうなぁ。


その割に、馬車で橋を渡る時の検問はアッサリしていたけど、それってアデルの顔パス的な…?


「ようこそ、ハーキュリーズ試験飛行場へ」


案内してくれるのは王国第三錬金術研究所の副所長さんと他数名。

20代後半の人懐っこいおにぃさん。

薄桃色のふわふわ天パで、よくある黒縁メガネをかけている。

イケメンで品があるから貴族出身なんだろうね。

敷地内なのに護衛騎士が2人もついているから重要人物なのだろう。

外部の人間か否かすぐに分かるように、研究所直属の人員は全員同じ紋章入りのグレーのローブを着ている。

彼らだけが機密に触れられるとか。


早速研究棟に案内してもらった。

と、思ったら、応接室でティータイム。

副所長さんはちゃっかりシロクマちゃんを1匹膝の上にお迎えしている。

お偉いさんがしょっちゅう視察に来るからこういう部屋が用意されているんだって。

お茶を飲みながら、完成予想図を見せてもらった。

飛行船だが浮遊石を使うのでガスはいらない為、気球の部分がないのでパッと見、宇宙戦艦だ。

異世界ファンタジーだね!

最近はめっきり不思議&便利に慣れてたけど、前世になかった乗り物なんてテンション上がるね!



「でっかいね!」


「全長約40m。乗組員20名、乗客30名の予定です」


ジャンボジェットより小さいけど横幅がある。

個室があるから豪華客船っぽい。

貴賓室っぽいのや、護衛が控えるような部屋。

貴族仕様だな。


「動かすのに20人も必要なのね?」


「そうですね、操縦士、機関士、整備士、見張り、料理人、客室係や物資の管理・調達、掃除、洗濯などなど、やる事がいっぱいで、本当は20人でさえ足りないくらいです」


後半の仕事が全部メイドと執事っぽい。

大変そうなのでもっとたくさん雇ってあげて。


「飛び立つと翼を広げ、浮力を生み出し姿勢制御も行います」


飛行船と飛行機のハイブリッドだ!


「浮遊石だからホバリング出来るんだね。舵はどうしてるの?」


「前後左右上下にいくつもの噴射口があるので、風属性魔法で舵を切ります」


「プロペラじゃないんだ。ジェットエンジンなの?速そうだね!風に煽られたりしない?」


「常に水平になるよう魔導具を使用します」


おおぅ、姿勢制御装置が魔道具でもできるんだ!?

センサーとかどうなんてるんだろう? 謎技術……


「雲の中に入った時、雷落ちたりしない?」


「……それは盲点でした。導電性と放電索を追加しましょう」


副所長さんはメモメモしたあと、顎に手を当て少し考えるポーズをしてこっちを見た。

てか、さっきから私ばっかりしゃべってる。

子供っぽい事しちゃった。

…子供だからいいかな?


「お嬢さんは物知りですねぇ。錬金術師なのですか?」


「違うよ? あ、時速はどれくらい?」


「設計通りならば最高速度は130~140km/hといったところでしょうか?」


「速い! 馬車の10倍ね!」


10日の行程が1日になっちゃう!


「そうだ。セディに頼まれてた魔石持って来たぜ」


アデルがマジックバッグからザラザラと出す。

36個あるんだよ。

アデル達が巨大迷宮の第86階層のロック・サーペントを周回するって言うから、イチゴちゃんに何度も転送してもらったんだよねぇ…

1日5回限定で1週間かかったよ。

イチゴちゃん、最後の方目が死んでた。

同じ作業の繰り返しって辛いよね……


「こんなに!? ありがとうございます!」


副所長さん達、めっちゃ喜んでる。


「ゴーレム造るの?見てみたい」


冒険者登録した時に戦ったゴーレムってめっちゃ高価だって言ってたな……


「ええ、技術漏洩防止の為、なるだけ人員を減らしたいのです」


「私、迷宮のロボ系いくつか持ってるけど、いる?」


試しに1つアイテムボックスから出す。

それは機関銃を撃ってくる箱型の警備ロボだった。


「ありがとうございます!あといくつお持ちですか?全部買い取らせてください!」


またお金増えちゃった……




アイテムボックスじゃないとロボの山の移動が大変なので、運搬のお駄賃にゴーレム制作も見学させてもらえる事になった。

アデル達は視察とか大人の話とかあるらしいので、幼女+3匹は別行動だ。

女性研究員のメリッサについて行く。


「なんか、お仕事増やしちゃってごめんね?」


「とんでもない。貴重な素材を山程提供してもらうのに、こんな事で文句言ったらバチが当たります」


黒髪おさげで黒縁メガネの若い女性。

もしかしたら、まだ10代かも。



現場はめっちゃ広い倉庫だった。

ただし、何もない。

これから船を造る為の足場を組むらしいのだが、それ用のゴーレムがさらに必要らしい。

メリッサから魔石を受け取った現場監督っぽいおじさんは質のいい魔石に喜んで早速作業に入った。


魔石を土に置くと、地面に魔法陣が現れた。

みるみる土で出来た人形が出来上がる。

上半身は逆三角形で腕は異様に長いヒューマノイドだ。

大きさは2mくらいと、あまり大きくはない。

人間サイズの物を作るから、大き過ぎると逆に扱いづらいらしい。

土人形はまだ動かない。

続けて、違う魔法陣が現れた。

地面から鎖みたいに文字が浮かび上がり、腕や足に絡み着く。

最後に、胸の魔石に吸い込まれていった。

ピカーン!と魔石と瞳が光る。

おじさんが何か命令すると、ゴーレムがのしのしと歩いて行った。

同じ作業を繰り返し、全部で4体のゴーレムが出来上がった。

魔力量により、一度に稼働できる数は人によって変わるらしい。


私もやってみたい。

自発的に動くお人形さんなんて1度は憧れるよね!

4回も見たから覚えた。

キョロキョロと周りを見渡す。

技術を盗んだようで後ろめたい気持ちもあるので人に見られないように……

よし、丁度メリッサが席を外している。

幼女+3匹はしゃがんで輪になった。

ちっちゃい方がかわいいよね。

アイテムボックスにためてある土属性のちっちゃい魔石を1個取り出す。

人形のサイズは15cm。

次は文字で条件付けをする。

基本的な動作をインプットするのだ。

歩く、走る、しゃがむ、ジャンプする、着地する、モノを掴む、モノを投げる、などなど……

これらはすべて定型文なので問題はない。

しゅるしゅると文字が魔石に全部飲み込まれると、ピカーンと光って命が宿った。


えへへ、手乗りゴーレムかわいい。

形もまるっこい二頭身にしたから余計にかわいい。

シロクマちゃん達と輪になってちびゴーレムに構っていたら、メリッサが帰ってきた。

ビックリしてチビちゃんを落としてしまったけど、壊れてない。

自力で物陰に隠れた。


「1人にしてごめんなさいね。そろそろお昼でしょ。ランチは迎賓館で頂けるはずよ。送るわ」


「ありがとう」


倉庫の外に停まっている馬車に乗り込む。

メニューは何だろうね?なんて話していたが、覚えているのはそこまで。

目が覚めたら暗い部屋で1人だった。

小窓から差し込むのは月明り?

木箱がいっぱい……ここは物置?地面が揺れてる……

もしかして船!? 川を下ってる!?

体がうまく動かない。

縛られて、硬い床に転がされて放置されていたのだろう、体中がギシギシと痛い。

無理矢理体を起こす。

ああ、頭痛い…お腹空いた……

首に感じる冷たく硬い重み……

見えないけど分かった。

それは『隷属の首輪』だった……


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