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「とりあえず、皆で儂を殺しに来い。まずは大人数で戦う感覚を養え。ああ、お主等は近寄るなよ?」


幼女+3匹を指さす蒼天。


「へ? なんで?」


「死にたいのか?」


私は慌てて首を横に振った。


「そうだな、お主等は飯係だ。美味いモン調達してこい」


幼女+3匹が秒で戦力外通告された。

別にいいけどね。

マジで戦えないから。

でも、シロクマちゃん達が怒涛の如く抗議している。

文句言いながら飛びつくが、いとも簡単にぺいっ×3された。

ナナーっと抱きついてくるのでよしよしする。


「メダル集めて自販機で爆買いしてこよっか」


「おおうー」

「こうなったらー」

「やけ食いだー」


「甘味も忘れるなよ」


シロクマちゃん達の機嫌が一気に上向きとなっているところに蒼天から一言追加された。

人喰いと言われた人狼も鬼も甘党なんかい!



そんなワケで、今日は地図も確認していないし自力探索の続きをするのは時間がかかるので第62階層ではなく上層を周回する。

あんまり浅い階層だと挑戦者が多く、ボス部屋の前で待たねばならず回転率が悪いので、第11~20階層を爆走して3時間ほどで第6階層の自販機が沢山ある隠し部屋にやって来た。


「アデル達はランチはマジックバッグに持参しているって言ってたから、鬼さんと私達の分ね」


でも、鬼さんいっぱい食べるから、メダル足りないかも……


「そうだ、カニを捕まえればご飯はあんまり買わなくていいじゃん」


そんなワケでおやつを買い込み、第4階層でカニを倒して戻ってきた。


「って、みんなボロボローっ!?」


急いで【ヒール(回復)】をかけた。


「ちょっと!初っ端から飛ばし過ぎじゃない!?おやつ没収するからね!」


「何を言う。強くなる為には楽な道なんぞない。だからおやつは頂く」


ん、と手のひらを差し出し『ちょうだい』をする蒼天。

人喰い鬼だと思っていたら、甘党食いしん坊キャラだった!?


「ナナ、いいんだ。そいつの言う通りだ。【ヒール(回復)】ありがとな。偶にかけてくれると助かる」とアデル。


心配なので、可能ならなるべく回復役としてシロクマちゃんが交代で1匹残るようにした。

ちなみにカニは火属性魔法で焼きガニにしてみんなで食べた。




そうして幼女+3匹は修行のお手伝いをしながらも下層の攻略も進めて5ヶ月ほど経過した夏のこと。

拠点の食堂でご飯を食べていると、近くのテーブルの会話が耳に飛び込んできた。遠くの国で、地震が頻発しているという。


地震……そりゃ、この世界にも活断層やプレートとかあるよね……

自然の脅威は異世界だって変わらない…


「なんでも、地下で龍が暴れているらしいぞ」


「なんじゃそりゃ!?」


あは……つい裏手ツッコミしながら振り向いちゃった。


「おう、ナナも興味あるのか?」


「地震って、龍が起こすものなの!?」


「昔っから言われているが、目撃例はないな。だが、最近の地震は異常だ。だから討伐隊が組まれ、地下に潜るらしいぞ。遠すぎて、俺等は参加しようがないがな」


どうやら、山奥の秘境に『地獄の門』と呼ばれる大穴があるらしい。

発見されたのは数百年前とそこそこ新しい。

穴は少しだけ斜めになっているので行き当たりが真っ黒で何も見えないらしい。

【ライト(光)】で奥を見ようとしても光さえ飲み込む暗闇。

それは数百メートルってレベルじゃなさそうね?

垂直ではないのなら、崩落で出来たものではないのだろう。

それは自然の産物ではなく、人工的な物……

本当に、何かいるのかもしれない…

でも地震で崩れなかったのなら、大した大きさではないのでは?

まあ、これは考えてもしょうがないので続報を待とう。




毎回ボロボロになって迷宮から出てくる私達を見て、周りは『深層おっかねぇ』と恐れ慄いていた。

第90階層のボスを倒す為に、86~89階層で修行をしていると思われているのだ。

もうずっと昔から多くの探索者が魔の第86階層どころか下層を突破できずにそれ以上先を諦めていた。

ある程度冒険して、祈りながら宝箱を開けたり、偶に珍しい素材をゲットして売るのが日常。

トラップで全滅するパーティーや、強敵に心折られて迷宮から去る探索者しかいなかったのに、諦めず挑戦し続けているアデル達を周囲は段々と応援し始めた。

秘かにだが、憧れてもいた。



とある日のお昼。

休憩がてら、ボス部屋でランチタイム。

部屋の隅っこに家馬車を出して料理をする。

とばっちりを受けないようにバリアも張っておく。

アデル達の分も含め、12人全員分を作るのだ。

今では、迷宮の中だけでだいたい食材が揃う。

お肉はボスを倒せばいい。

カニも鹿もイノシシも鳥もバイソンもいるからね。

ただ、豚さんはオークなんだよね…

でも、まあ、普通にお店でオーク肉売ってるし、そういう文化なんだよ、うん。

野菜も手に入るよ。

26階のプラントで野菜泥棒をしては、ロボット犬に追い付かれる前に隠し部屋に瞬間移動して、警戒レベルを下げたらまた野菜を拝借してを繰り返した。

1時間たったらまた野菜が復活するんだもん。

迷宮マジックだね。


だから、後はパンやご飯の主食だけど、迷宮の宝箱から炊飯器とホームベーカリーが出た!

なのでお米と小麦粉を外で買えば……と思っていたら宝箱から出ました。

お米なんて俵のやつだよ。

宝箱に俵がきゅっと収まってたのを見た時はシロクマちゃん達と爆笑したね。

あんまりみっちり入ってたから取り出すのに苦労したよ。

まあ、そんな感じで充実した日々を過ごしていた。



「次はとうとう第86階層だね。みんなでだけど1度クリアしたし、飛ばしてもいいかな?」


と、シロクマちゃん達に問いかけたら、アデルからリクエストが入った。


「あ~…セディの奴がロック・サーペントの魔石を出来るだけたくさん欲しいっつってたんだが」


「なにすんの?」


「魔導飛行船を作るのにゴーレムが必要なんだとよ」


ほえ~、本当に空飛ぶんだ…

とりあえず、明日1個くらいはゲットしておくか。でも…


「私達だけでいけるかな?」


「もちー」

「またツララでー」

「ちゅどんー!」


「それだと大穴開けちゃうから、今度は違う方法でやらない?」


「どうやってー?」

「ちゅどんー」

「できないのー?」


「そうねぇ……重力魔法で貧血起こさせたり、バリアで一直線になるように閉じ込めたりして動きを封じてから急所を一突き?」


「一突きはいいけどー」

「急所ってー」

「どこー?」


「あり?どこだろうね?」


心臓とか?

外から見ても分かんないわ。


「んじゃ、やっぱツララ大砲で頭狙おっか。目のすぐ傍で【ライト(光)】を発動して目くらまししたらアデル達がいなくてもいけるっしょ」


「さんせー」

「わかったー」

「ちゅどんー!」


蒼天は半目になった。

ナナには内緒だが、修行から外したのは弱過ぎて話にならないという意味ではない。

決して弱くはない事は見抜いていた。

確かに、強さのベクトルが格闘などの戦闘ではなく得体の知れない能力であろうとは思っていたが…

1人と3匹で一人前とはいえ、ロック・サーペント相手に怯むことなく複数作戦を立ててシミュレーションをし、最適解をはじき出すとは末恐ろしい……


「ま、儂には敵わんがな!」


誰も疑ってなどいないのに、言い訳をする蒼天。


「何が?」


「なんでもない」


誤魔化すように茶を飲む蒼天だった。



「そういえば、遠くの国で地震が頻発しているんだって」


「ああ、龍が暴れていたな」と蒼天。


「えっ…?」


「眠りを邪魔しようとしている奴がいるからな。このままだと大地震が起きるのではないか?」


「は?眠りの邪魔って、誰が?」


「それは儂にも見えぬ。龍の周辺に嫌な気配を感じただけだ。何者かが呪いをかけようとしているのではないか?」


なにそれ……龍の存在を知っている誰かが悪意を持って眠りを妨げようとしているの?

何の為に?地震を起こす為?

それこそ何の為によ???


「どうしたらいいの?」


「龍は神に近い生き物だ。人の持つ常識や倫理などは何も通じぬ。怒らせぬよう注意するしかないな」


それじゃあ、起こそうとしている何者かを捕まえるしかないじゃない!

何者かもわかんないのに!


アデルに助けを求めて視線で訴える。


「ナイル共和国だろう?国交がない」


アメリカみたいに大統領制の為、元首が変わる度に挨拶に行くとか無理な距離だもんね。

それでなくとも、国を2つ3つ越えないといけない。

この世界の移動は馬車。

往復で1年以上かかるとか無理ゲー。

船も大陸をぐる~っと回り込まないといけない。

時間的にも航海技術的にも無理ゲー。


なので、あんまり遠くの国と国交は結べないとアデルは言う。


「が、インフルエンザの情報伝達の時みたいに冒険者ギルドを使えば何とかなる」


迷宮の存在お陰で、冒険者ギルドがない国はないそうだ。

迷宮を所持していない国でも、人々は他国の迷宮を探索する。

それに、魔物が出るので冒険者の戦力は欠かせない。

人が集まれば誰かが組織を作るもの。

そしてすでに成功している形態を真似する方が効率がいい。

あと、儲かるので誰かが真似してきた。

おかげで大陸中にギルドが存在する。



蒼天は「ここまでか…」と独り言ちた。

龍神が祟り神とならば、大陸中を巻き込みかねん。

世界が混乱すれば、迷宮探索などしてはいられまい。

国や民が疲弊して、回復するにはどれくらいかかる?

儂はまた待たねばならぬのか?


「どうやら時間がないようだな。そろそろ本気で儂を殺してくれ」


全員言葉に詰まった。

もちろん、蒼天を倒さなければ先へは進めない。

その事は忘れたワケではない。

だが、こんな風に食卓を囲み、他愛無い話をし、仲間のように過ごしてきたのに今更……


「次にこの部屋を訪れた時、儂はお主等を殺す。覚悟が決まるまでは訪れない事を勧める」


蒼天による最後通牒は全員の胸に突き刺さった。


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