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アデル達に何かあったと聞いてすぐに飛び出そうとした幼女+3匹は近くにいたクランメンバーに羽交い絞めにされた。

なんで!?と暴れるが、決して離さない。


「落ち着け!アデル様達は81階にいる!セーブクリスタルがないだろう!?」


む、そういう事か……

90階まで行けるクリスタルを持っている事は誰にも言ってないからなぁ…


急に大人しくなったナナに気づき、クランメンバーは手を緩めた。

シロクマちゃん達もピタリと大人しくなり、ナナの様子を窺うようにじっと見つめているのでメンバーが話を続けた。


「うちのクランで先行していたのは『アルゴス』だけだ。異変に気付いて今朝迷宮に入ったが、彼らとも連絡がつかなくなった…」


殊更にゆっくりしゃべったのは、私達を落ち着かせる為だったのだろう。

そういう気づかいに気づいた事で自分がパニックになっていた事を知る。

飛び出して、突っ走ったら事故に遭いかねない。

お、お手数をおかけしました……

完全に体の力を抜いて、話をしてくれたメンバーの目を見る。

おにぃさんは苦笑して手を離してくれた。


「俺達は全ての手段を失った…」


そっか、今回【巨大迷宮】に潜っているクラン『エピタフ』の中で深層に達しているのはアデル達と『アルゴス』の2パーティーだけだったのか。

でも待って、A級の『アルゴス』が既に通過していたであろう第81階層で音信不通になる原因って一体…?


ならば、いくら緊急事態でも、回収屋さんに貰ったセーブクリスタルの事は言えないよねぇ…?

81階に行けると知ったら皆で突撃しそう。

実力の伴わない迷宮に挑むのは無謀だ。


「だったら、他のクランのパーティーにお願いするとか…」


「勿論、冒険者ギルドに救出依頼を出している。しかし残念だが、深層に行けるのは殆どが冒険者ではなく探索者だ。奴らはギルドの依頼は請け負わない。直接依頼をしても、嘘をついて深窓の素材を手に入れようとしていると思われるのがオチだ。あと、冒険者であれ探索者であれそんな願いを聞き入れる奴は、人気のない階層に連れて行って身ぐるみ剥いだり殺したりする」


おぅまぃがぁっ!?

そんな事考えもしなかった!

私、なんて世間知らずなんだ……

たぶん今までは幸運先生のお陰でそんな目に遭った事なかったんだな…

いや、シロクマちゃんが狙われたじゃん。

幸いにも無事だったけど、あんな事があったのに、私のバカ!


あと、無茶して誰かについて行かないように釘をさす為にも重要な情報もくれた。

下層からは命に関わるトラップがあるという。

冒険者ランクを上げる為に第50階層をクリアしたけど、51階は足を踏み入れてないから知らなかったよ。


第26階層のプラントでミニトマトに手を出したらロボット犬が無限湧き!というトラップならあったけど、他は特になかったなぁ。

という事は、下層のトラップはゲームみたいに『落とし穴』や『矢の雨』や『毒ガス』というベタなヤツと思われる。



「何ができるかわかんないけど、とりあえず迷宮に行ってみるよ」


「わかった。気を付けて」


「焦らず落ち着いて」


「無茶するなよ」


しっかり頷くナナに、クランメンバー達も頷き返す。

皆に見守られながら、準備をする。

キックボードに片足を乗せると、シロクマちゃん達が一瞬で定位置についた。


「いくよっ」


「「「らじゃー!」」」


アクセルをぶん回した。


「「「「「「全然落ち着いてない―――――――っ!!!」」」」」」


土煙を巻き上げて小さくなっていく幼女+3匹に一斉にツッコミが入るのだった。




迷宮に着くと、いつもと違う意味でザワついていた。


「誰か81階に行けるクリスタルを持っている奴はいないのか!?」


「俺ならボスだって倒せる!」


「俺達にまかせろ!」


あ~、これはアレだね、火事場泥棒(?)的なヤツだね。

自力じゃ深層に行けないから乗っかろうとしている人ばっかりだ。

クリスタルは2個目からは全部使い物にならなくなるから1回きりなの知ってるよね?

もしかして、奪おうとか思ってない?

上層は優しい世界だったのに、中途半端な人達って怖いわぁ。

怪しい集団には関わらないように転移陣に行こうねぇ。


「お嬢ちゃん、何階に行くんだい?」


うわぁ……こんな幼女にもチェックいれるんすか…


「ろく」


「……そっか、がんばれよー」


子供っぽく手を振って本当に6階へ行く。

よし、何も疑ってないね。

1ヶ月迷宮に来なかったからかな?私達の事を知らない人だったみたいで良かった。


よし、隠し部屋に入って作戦会議だ!


「ここまで来たはいいものの、実際問題、私達で81階って行けると思う?」


「「「いけるー!」」」


おぅふ、その自信はどこから?

下層すっ飛ばして深層なのよ?


「えっと、まずは76階でマップのダウンロードかな?」


「そだねー」

「そーゆーのー」

「だいじー」


「そういえば、ラムネちゃんの【千里眼】ってどこまで見えるの?」


「ん~?んーとねー……………違うフロアはわかんないー」


「そっか。迷宮は特殊空間だからねぇ」




ボスは倒さず、スタート地点に戻って第76階層に飛んだ。

深層の最初の階なのでマップをゲット出来るハズ。


「どんな敵が出るんだろうね? あっ、トラップがあるんだった。【鑑定】っと」


むむっ、早速発見!

落とし穴だ。

上に上るタイプの迷宮だと落とされたら下階に逆戻り。


「トラップを回避しながら進むから、キックボードから絶対降りないでね」


「「「らじゃー」」」


敵はシロクマちゃん達が倒せるレベルでちょっと安心した。

ただ、一撃では終わらなくなっている。

わ、私も何か出来るようにならなければ……っ



20分ほどでそれを見つけた。


「シャトル!」


うそぉぉぉぉぉぉぉぉん!乗れるの!?


シロクマちゃん達が突撃した。

私もコクピットに座る。

セーブクリスタルを差し込んでコンソールをポチポチする。

はい、マップゲット!


「試運転はまた今度。アデル達のところに行こう!」


もちろんボスは倒さずにスタート地点に戻る。

さあ、いよいよ81階に挑戦よ!


ドキドキする……

トキメキではない、命の危険に対するアラートの方ね。


そうだ、シロクマちゃん達にバリアのパスキーを刻印しなきゃ。


「よし、ラムネちゃん、アデル達はどこ?」


「んーっとね………………いないよ?」


「なん、ですと…っ!?」


うそうそうそっなんでよっ!?


「はっ、次の階層に進んじゃった!?」



急いで転移陣で82階層に飛ぶ。

しかし、アデル達はいないと言うので83階層にやって来た。


「あー、アデル見っけ!」


ラムネちゃんがぴょんぴょん跳ねる。


「どこ?」


マップを見せて教えてもらう。


「ここってボス部屋!?」


どうやって助けるのよ!?

ボスを倒さなければ扉は開かない。


「あ、こっちに【サーチ(探知)】かけてきた」とラムネちゃん。


「どういうコト?」


聞けば、今、このフロアには複数のパーティーがいるという。

アデル達とアルゴス、そして知らない3組と私達の計6つ。


何かヤバいらしいから急いで隠し部屋に入って中からロックした。

とりあえず、迷宮の壁やドアは破壊不可能なので突入される事はない。


シロクマちゃん達の話をまとめるとこうだ。

アデル達は知らないパーティーと一緒にボス部屋の中にいる。

ボスは倒しているが、外に出ようとはしていない。

『アルゴス』は隠し部屋に籠城している。

その部屋を監視するように1パーティー。

もう1パーティーはボス部屋を見張っている。

そして、見張っているパーティーから2人が私達の部屋の前に来た。

それが今の現状だ。


「アデル達にケガは?」


「だいじょぶー。ボス部屋のみんなは仲良しー」とラムネちゃん。


「そうなんだ…」


よかった、最悪の事態じゃなくて…

でも、現況はあまりよろしくない。

おそらくだが、2組のパーティーが他のパーティーを襲撃している。

A級の『アルゴス』が籠城しているのは、彼らだけでは相手取れないという事。

でも、アデル達がボス部屋を出られないのは何故?

【文蝶】で状況を知らせてこなかったのは何故?


『同じフロアにいるよ。大丈夫? byナナ』

アデルに【文蝶】を飛ばしてみた。


返事が来た。

『無駄だ。【文蝶】は我々が奪った』だって。


ちょっと待って。

【文蝶】って奪えるの!?

でも、なんで連絡が取れないのかは分かった。

そして、もう【文蝶】を使ってはいけない事も分かった。


ただ、何故アデル達が動けないのかはわからない。

だって、ボスを倒したのなら即迷宮を出ればよかったじゃない。

いくらなんでも、人が大勢いる場所では戦闘はしないでしょう?

狙われているのはアデルなの?

だとしたら、迷宮を出ても拠点まで暗殺しに来るだろう。

その場合、防げない程の相手?

だから、突破できない迷宮内で籠城?


ボス部屋って、ダクトで繋がってないのかな?

無理だよね…そんな抜け道があったらまともに戦闘せずに迷宮をクリアできちゃう。

せめて、物資を届けられたら籠城を続けて対策を練れるのに……


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