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効率を求めて2組に分かれる。

私はラムネちゃんのナビのもと瘴気が発生している足跡を辿り、イチゴちゃんとカリンちゃんは結界を飛び出して横に逸れ、空気中の瘴気を蹴散らしてゆく。

2匹は下水道をお掃除した時みたいに【ピュリフ(浄化・聖)】を唱えながら突進していくので早い早い。

ただ突然魔物が湧いた時の為に、時々注意力散漫になるシロクマちゃん達のフォローとして数人の騎士さんに後ろをついて行ってもらっている。

リアムは私の後ろをついて来てくれている。


「リアム。今更だけど、ピュリフ浴びても平気なんだね?」


「そうですね。人狼はアンデッドではないですし……シロクマセンパイ達も平気みたいですしね?」


なるほど。


「それどころか、息がしやすいです。いえ、元々苦しかった訳ではないんですけどね」


ふぅん………もしかして、リアムの体内の魔石が少し浄化された?

魔石は神の祟りと関係があるって魔女さんが言ってた。

魔物の体内で祟りを浄化し結晶化したモノが魔石である。

長く生きている魔物ほど魔石が大きいと。


浄化の結果が魔石なら、浄化能力を持つ人間が祟りに晒されると体内に魔石が出来て魔物化した結果、人狼になる?

浄化能力が落ちて体内に祟りが溜まると、正気を失って狂人化する?

祟りに対抗するように瘴気が生み出され、そこから魔物が生まれるのだろうか?


あれ?祟りを浄化する魔石を浄化できる【ピュリフ(浄化・聖)】って何…?

悪魔を苦しめる祟りが聖属性魔法で浄化できるの…?


その時、斜め右前方に闇が現れた。

いや、魔物だ。

大きな牛くらいの大きさの、黒い犬が5匹。

グルルと唸り、口から炎が漏れている。

ヘルハウンドだ。


ラムネちゃんが居合の構えをとる。

が、飛び出してきた影が一瞬にして沈黙させた。


「犬っころの分際で我が主に仇なすとは……『伏せ』」とリアム。


手だけ獣化している。

鋭い爪に血が付いている。


「いやいやいや、主って誰よ!?斬り伏せておいて『伏せ』って!?」


「………魔石いります?」


「しれっと流さないで!魔石はいる!」


魔道具をいっぱい持っているから、魔石もいっぱい使っちゃうんだよね。

プリプリしながらもリアムの手を【クリーン(清掃)】でキレイキレイする。

リアムのしっぽが上機嫌にフリフリしているコトにはツッコまないからね!


「大丈夫か?」


団長さん達が走ってきてくれた。


「だいじょぶ。リアムがやっつけてくれた」


団長・副団長が微妙な顔をした。

人狼は強い。

人を襲わないと宣言されたが、もしもの時はちゃんと討伐できるだろうか?

味方の内は頼もしいが、敵に回したら厄介だ……


イチゴちゃん達の方でも戦闘があったようだが、トランシーバーで「だ、だいじょぶー」と報告があった。

言い方が微妙だったので詳しい話を聞くと…

背の高い草むらをかき分けていたら突然目の前に魔物が!?

ビックリしたシロクマちゃん達は一瞬で後ずさり、後ろにいた騎士さんの顔面にしがみついた。

すると別の騎士さんが魔物を一刀両断!

事なきを得た。

シロクマちゃん達は騎士さんにモフモフ攻撃をしただけだった。

だから「だ、だいじょぶー」というオチ。

無事でなにより。



足跡の浄化も順調に進み、たった数メートルの小高い丘を登りきると海岸に出た。

リゾートのエメラルドグリーンの海ではなく、冬の日本海っぽい。

そこに、それはいた。

けぶるモヤの中で膝立ちになり胸の前で両腕をクロスしている白い巨人。

いや、ボロボロにむしられて、しおれているけど背中に羽根があるから天使?

ザビエルのポーズに似ているな…

首から上がないのに、まるで天を仰ぎ祈りをささげているようだ。

左胸の向こう側が見える程の大きな穴に、燃える心臓があったのだろうか?


その時、曇天から光が差し巨人に降り注いだ。

『天使のはしご』ってやつ?

なんてタイムリーな……

幻想的な光景に息を飲む。

まだ生きてるみたい…今にも動き出しそう……

近づくの怖いな。

ここから最後の仕上げをしよう。


あ、その前に写真撮らなきゃ。

パシャリ。

もう1枚……

シャッターを押した瞬間、ラムネちゃんが視界に飛び込んできた。

以前泳いでいるシロクマちゃん達を撮影する為にシャッタースピードを上げたままにしていたので空中に浮いたラムネちゃんがバッチリ写っている。


「あー、ズルいー」

「わたしもー」


あ、シロクマちゃん達おかえり&お疲れちゃん。

ん?みんなも一緒に写る?

んじゃ、そこに並んで。

みんなザビエルのポーズなのね。

はい、チーズ。

パシャリ。

ふむ、よく撮れた。

シロクマちゃん達が入ることによって巨人のデカさが際立つ。

前世だったら即SNSにアップするのに…

いやぁ、これは皆で共有しないと!

それくらいの迫力!


さて、気を取り直して浄化の仕上げだ。

巨人の足元に魔法陣を展開する。

物語なら主人公クラスであるハズのS級冒険者を屠った魔物だ。

もしかしたら魔人とか、もしくは魔神とかまでいくレベルの存在かもしれない。

これは気合を入れないと…

完全に浄化できるように、魔力を練りに練って練りまくった。

イメージはスキャン……


「【ピュリフ(浄化・聖)】」


魔法陣が地面から垂直に浮かび上がり、巨人の肉体を透過しながら頭上で停止すると、その場でゆっくり回転し始めた。

まるでヘイロー(天使の輪)みたいに。

周辺一帯の瘴気を掃除機みたいに吸収していく。

そしてしゅぽんっと光の粒になって消えた。

瘴気は完全に消滅した。

よし、浄化完了っと!


ずっと後ろに控えていた大人達が思い思いに感想を口にしている。

『あんなにあっさり…』とか『本当にできるんだな…』と、最初に魔法を使った時と同じセリフだが、言い方が全然違う。

懐疑・驚愕から感嘆・感心に変わっていた。

ふっふっふ、私はデキる幼女なんですぅ。



「よくやってくれた。感謝する」


団長さんはそう言って私の頭を撫でる。

おぅ、「おつかい出来たねエライねぇ」と、言われているようだ…

私、幼女だもんね、子供扱いは仕方ないかな…

素直に「あい」と応じた。


さて、依頼達成証明書に団長さんのサインを貰ったら私のお仕事は終わりなのだが…

あの巨人を解体する為に刃物を突き立てたら、また細胞増殖するんじゃないかって怖いんだけど…

本当に死んでる?

ドキドキして見てたけど、動き出す事はなかった。

そして取り出された魔石を見せてもらったけど、なんと、人工的な形をしていた。

そしてデカい。

Lサイズのピザくらいあるよ。

輪っかに装飾がついている。

それに、どう見てもヘイロー(天使の輪)なんですけど…

え~………この巨人って天使なの???

まさかねっ。

シロクマちゃんに持ってもらって写真撮った。

こういうのって考察したくなるんだよねぇ。

誰かと答え合わせしたいなぁ。



丘の上でしばしの休憩タイム。


「あの、もしよかったらお風呂とトイレを譲っていただけませんか?勿論お金は払います」


「いいよー」


即答すると、副団長が破顔した。


「でも、相場わかんないな」


「そうですね、では…両方で金貨5枚でどうですか?」


「高くない?中古だし…」


現代日本のユニットバスみたいに便利機能があるワケじゃないし。

蛇口もついてないよ?


「では、私達の気持ち、という事で」


流れる動作で金貨をきゅっと握らされた。

おぉぅ、美形は押しが強いね…



「あのね、国境付近に避難民が結構いたの。もう村に戻っていいって言ってあげて?」


「ええ、そうですね。では、国境までお送りしますよ」


「巨人はどうするの?このままって訳にはいかないよね?」


「そうですね、焼却処分するしかないでしょうね」


「ふむ。だったら私がやったげようか?」


「え?火属性魔法も得意なのですか?」


副団長は、確実に燃やす為にはいくつかに切り分けて魔法で消し炭にするしかないかな?と思っていたのだが…


「得意って程でもないけど…とりあえず、やってみるね」


丘を下り砂浜に降り立つ。

いや、マジででっか…っ!

ひょえ~、こわ~。

魔石を取り出した部分に傷がある。

血液が透明だね。

ちょっとキラキラしてる。

まるで本物の石膏像のようで、全然倒れそうにない。


「サンプルとか取らないの?」


「必要な分は取りましたよ」と副団長。


「じゃあ、私も少し貰っていい?」


「ええ、いくらでもどうぞ」


シロクマちゃん達に適当な所を切り取ってとお願いしたら、手首ごと持ってきちゃった…

羽根もむしってきたのね。

あ、ありがとね。アイテムボックスに保存しとくね。


さて、騎士さん達にも下がってもらう。

【フィールド(結界)】で巨人を囲む。からの……


「【ヘルファイア(裁きの炎)】」


黒と紫のグラデーションの炎が巨人に纏わりつく。

ヒュージスライムを倒した時に使った【インフェルノ(地獄の業火)】みたいに激しく暴れる炎ではない。

静かに揺らぎ、包み込む。

白い巨体が黒い灰となり、サラサラと崩れてゆく。

結界の中でただの灰の山となった。


「【クリーン(清掃)】」


巨人だったものは完全に消えた。

気づけば雲は晴れ青空が広がり、『天使のはしご』も消えていた。


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