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数日後、次の次の街にやってきた。

商会の厩舎で馬を休ませる。


「ここで馬を交換しましょう」とリアム。


「ん?このコ達、元気そうだけど?」


「ここからは雪道になれた馬じゃないとね」


依頼が終わって迎えに来るまでここで預かってくれるって。

ここまで運んでくれてありがとう。

しばらくお休みしててね。


そしてやって来た新しいコ達は気温-50度でも活動できるという全身の毛足の長いもっふもふなお馬さんだった。

体型もずんぐりむっくりで可愛らしい。


「よろしくね」


声を掛けると、髪の毛ハムハムされた。

にゃはは、もう信頼してくれるの?

お近づきの印に人参を上げたら喜んでくれた。



「こっちもそろそろどうですか?」


「どうって?」


「テイムです」


「しません!」


んもう、1日に最低3回は言うようになったんだよね…

シロクマちゃん達も『センパイ』と呼びかけられて、一瞬まんざらでもない顔してたけど、ハッとして威嚇してた。

チョロそうで心配だ。



「そう言えば、獣人って顔が動物のまんまの人とか、人間の人とか色々いるじゃない?あれって種族が違ったりするの?」


「いいえ。獣人は幼い頃はみな四つ足の獣のままです。歳を取ると人間に変身できるようになるのですが、その時どれくらいの割合を人間に寄せるのかは本人の好みなんですよ」


「ほほ~ぅ、じゃあ、まるっきり人間にもなれるの?」


「それは無理なんです。あるものを消す事は出来ませんから」


ああ、なんとなく理解出来る。

人間にはしっぽがないから変形できないんだね。

でも、ケモ耳は人間のお耳にできるよね?

聴力が落ちるのが嫌なのかな?




次に寄った街では馬車の車輪をソリに変えた。

そして、とうとう国境付近にやって来た。

一番大きな街道を選んで進んでいる。

難民が雪崩れ込んでこないように国境警備隊が巡回しているからだ。

急遽用意したのだろう、バラックみたいな検問所が出来ていた。

簡易的な柵も見える範囲では存在する。

柵の向こうにはテントがいっぱい……寒いだろうに……

村から感染者が出た村民が、自分達も焼き討ちに合う事を恐れてここまで来たのだ。

だが、食料が減る冬に難民を受け入れる余裕はどこもない。

ままならないものだなぁ。



「冒険者です」


D級の冒険者カードはそこそこの信用があるらしく、「お仕事です」と言ったらシロクマちゃんの頭をポンポンしてすんなり通してくれた。

幌馬車が2台と家馬車1台。

本日の護衛の2人は優男とおばちゃんなので脅威ある集団には見えないもんね。

商隊と一緒に行動していたから、護衛依頼だと思ったのだろう。

帰りはちょっと面倒そうかも……

食べ物を寄こせと馬車が襲われないかちょっとドキドキしていたけど、良識ある一般人だったのでそれはなかった。




13日目、無事現着できた。

イーデン王国の軍隊が陣を張っていた。

若い兵士に冒険者ギルドの依頼で来たと説明していたら、聖職者っぽい人が声を掛けてきた。


「ようこそいらっしゃいました、ナナ様。どうぞこちらへ」


いや、教会関係者いるやん。

だったら、私いらなくない?

チラリと兵士さんを見ると、笑顔で怒っていた。

10日以上も待たされたのに、自分の上司を無視して何連れていこうとしとんじゃワレ!という心の声が聞こえる笑顔だ。


「いえ、こちらの陣の責任者の方にご挨拶しなければなりませんので」


子供だからとナメられないように敬語(?)にした。

私がきっぱりと拒否すると、兵士さんも心得たとばかりににんまりと口の端を上げて案内してくれた。

なんか、凄い形相でついてくるよ、あの人…


ひと際デカい天幕の中にその人はいた。

身分の高い人ってイケメンばっかりだね。

まあ、美人さんばっかり娶ってきただろうから、さもありなん。

長身で筋肉質。

恵まれた体躯。

黒髪、少し浅黒い肌、全身黒い鎧。

大剣まで真っ黒。

金色の瞳が印象的だ。


「私はイーデン王国騎士団団長のレナルド・スウィフトだ。浄化の協力感謝する」


「いえ、お仕事ですので。私はナナです。で、こっちの3匹が…」


あ、しまった。

こんな紹介の仕方したらアレが飛び出すに決まってんじゃん。


「ガーネット レッドー」

「ラピスラズリ ブルー」

「こはく イエロー」

「アメジスト パープルー」

「「「「シロクマ戦隊モフるんジャー!」」」」


久々だけど、体が動いた。

ううっ、はずかちぃ。


団長さんを見ると、キレイな微笑みをたたえていた。

貴族らしい鉄壁の笑顔だ。


「よろしく頼む」


団長さんはしゃがんで幼女+3匹全員と握手してくれた。


その時、しびれを切らした聖職者が咳払いで割り込んできた。


「では、ナナ様にはこちらにおいでいただきましょう」


「何故ですか?」


「えっ、浄化をしにいらしのでしょう?」


「ええ、教会の方々では不可能だとお聞きしたので。そんなはずはありませんのに。現場にいつからいらしたのかは知りませんが、私が到着するまで10日以上もありました。浄化はどれくらい進みましたか?」


「い、いえ、我々の手には余るのでナナ様を呼びした訳で…」


「私は冒険者ギルドの依頼を受けて騎士団に協力する為にこちらに来たのです。依頼人は連名でオーランド帝国第4皇子殿下とノア王国クロフォード男爵のご令息のお2人です。教会とは全く関係ありません。現場で働きもしないタダ飯喰らいは不要です。お引き取りを」


聖職者は絶句して頬を引きつらせた。


やっぱりねぇ…

ホントのところ、私が浄化依頼を引き受ける筋合いは全くなかった。

他国の政治なんて幼女には関係ないのだから断っても良かった筈だ。

では、何故わざわざ引き受けたのか?

それは、私を名指しした理由を探る為。

教会の目的がわからなかった。

私みたいな幼女にどんな利用価値がある?

正直、他国にまで名が知れる何かをした覚えはないけど、複数の選択肢の内の1つだったのだろう。

そして目的は売名行為。

信者を増やす為にプロパガンダに利用するつもりだったのだろう。

『終末』を目前に『教会』に『聖女』が降臨した、ってとこかな?

子供だと思って思い通りにできると思ったら大間違いなんだから!

もう絡んでこないようにガツンとね!


「なっ、私は教会を代表して…っ」


「教会に何の権限があるというのです?国王の命で事態の収拾にあたっているのは騎士団の方々です。あなた方は要請に応えられなかったのでしょう?私が来たのでもう帰っていいですよ?」


私の言葉を受けて、団長さんがいい笑顔で聖職者達にこの駐屯地からの強制退去を命じた。



「ありがとうございます、団長さま。教会とは関わりたくないのです」


「いや、こちらこそ助かった。本当に何をしに来たのか、邪魔にしかならず鬱陶しかったのだ。だが、我々では浄化自体は出来ず、有事の際に対処できない為、完全に追い払う事も出来ず困っていた。あなたがきっぱり帰れと言ってくれてスッキリした」


テーブルでお茶とお菓子を頂く。

ちゃんとシロクマちゃん達の分もあるのだ。

騎士団の人達を好きになった。


「いえいえ。すぐに援護射撃してくれてありがとうございました」


「それにしても、あなたは見た目よりずっと大人だな。もしや長命種族なのか?」


「ふぇっ!? えーっと、ふつうの人間、のハズ…」


不安になり、シロクマちゃん達を見る。

聞いてない設定とかあったりする?

シロクマちゃん達は『大丈夫』と言わんばかりに頷いた。


団長は瞬時に判断した。

貴族の教育を受けていれば有り得ない対応力ではない。

きっと出自が複雑な、英才教育を受けた優秀な子供なのだろう、と。


それから本題に入った。

この地で一体何が起こったのか……?


事の始まりは去年末、北の小さな漁村から冒険者ギルドに魔物の討伐依頼があった。

だが、向かった冒険者は全滅。

村人が報告の為に街へ向かい、もう一度依頼をしようとギルドを訪れた。

戦いの様子と魔物の詳しい特徴を聞いたギルド職員は上に報告。

今度は大がかりな討伐隊を編成して向かったが、村に戻ってみればたったの数日のうちに魚村は謎の病で全滅していた。


件の魔物は海辺の崖の上にいた。

とても美しい白い大鷲。

そいつが羽ばたくと、瘴気が振り撒かれた。


生き残った男性がギルドに辿り着いた時にはインフルエンザに感染していた。

最初は風邪だと思った。

ギルド職員が殆ど感染した。

数日で死に至る人が現れた。

そして気づいた。

これは新種の疫病だ、と。


封じ込め作戦に出たが、隔離以外の方法がない。

村が焼かれた。

難民が発生した。

どうしようもなかった。

そこに、ノア王国から特効薬のレシピが届いた。

地獄にいた彼らに一条の光が差した。

イーデン国王は周辺国に呼びかけた。

元凶の討伐に協力して欲しい、と。


S級冒険者のパーティーが2組招集された。

特効薬を飲んで疫病対策はしていた。

だが、魔物は強かった。

飛行タイプは討伐しにくい。

死闘の末、地面に落とすことに成功した。


魔石を回収しようとナイフを突き立てた途端、死体が膨れ上がった。

とてつもないスピードで増殖する細胞に巻き込まれ、3人が呑み込まれた。

最終的に魔物は20メートルはあろうかという巨人に変身した。

全身真っ白の首のない、背中に羽根のある人間。

地球人が見たら、サモトラケのニケ像を髣髴としただろう。

裸だけど。

男性の特徴も、女性の特徴も見られない体。

心臓は剥き出しで、燃えていた。

体の割に羽根は小さく、飛ぶことは出来ないようだ。

武器は持っていない。

だが、巨大というだけで攻めあぐねた。


とりあえず、これ以上内陸に進ませるワケにはいかないと、死ぬ気で海辺まで押し返した。

そして燃える心臓を破壊することに成功した。

トドメをさした冒険者は絶命した。

討伐チームの半数を失った。



とんでもない内容だった。

ちょっと、想像力が追い付かない…


「ここから500mほど北西に進んだ場所から海に向かって瘴気が蔓延している。どうやら、巨人の足跡が瘴気溜まりになっているようだ」


ふむ、つまり………またお掃除なのね!


「わかった。いつから始めよっか?」


「明日の午前中でいいだろう。今日はもう陽が落ちる前に戻っては来れまい」


「陽が落ちたら何かあるの?」


「瘴気溜まりから魔物が湧く」


ああ、だから騎士団が駐屯してるのね。


馬車を見てくれていたリアムのところに戻り、今日はもうやる事ないから野営の準備をする。

馬房やらログハウスやら出して兵士達を驚かせたのは言うまでもない。


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