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終末世界の生き残り 抗う果てに巡る旅  作者: 鷹鴉。


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46話 夜に煌めき天に煌めく

 最低限の打ち合わせを終わらせ、怒神に連れられ駆け足でこの場を後にする。


 今、気付いた。ここには怒神と儂しかいない。エンデは戦う為に、ルシフェイルは蹴り飛ばされたからいないのは当然として、ファザーがいない。妙な焦りを感じつつ周囲を見渡しファザーを探す。


 すぐに見つかった。エンデの肩の上に、ファザーが乗っかっていた。何をするのか走りながら見ていると、エンデの手にファザーが乗る。そして、風なんて無いのにファザーが風に揺れる炎のように形が崩れ、口、鼻、目を通じてエンデに取り込まれた。元々エンデの中にいたのだから不思議でも何でも無いのだろうが、その様相は少々心臓に悪い。


 突然轟音が鳴り響く。鳴り響いたそこには純白の羽が数個ほど突き刺さり、その場所が陥没していた。


 ある程度離れた場所でその様子を観察しているが、先王は儂等を攻撃する様子はない。立ち向かうエンデを一番危険と判断したのだろう。しかしエンデは何処に……まさか直撃を?!


 再び轟音が鳴り響く。魔法具の羽に対し、上空から爆撃の豪雨を降らしている。その地点に目を凝らすと、エンデがいた。暗くて少々見えづらいが、何やら黒い瘴気のような物を纏っているように見える。


 悪魔であるファザーを吸収したからなのだろうか。儂には分からないが、両者の一手が凄まじい。そうだ、まだ一手しか動いていない。だと言うのに、先王が操る魔法具の攻撃速度。それを躱し頭上から爆撃を仕掛けるエンデ。一体……ここからどうなるというのだろうか。


 一瞬の間を置いて、純白の羽から風を切る音と共に斬撃が飛び出す。軽い見た目からは想像のつかない羽からだ。儂の目には柔軟に普通の羽のようにはためいているが故に、正直意味が分からない。


 羽から飛び出した斬撃はエンデに到達すること無く霧散する。よく目を凝らすと、夜に溶け込むような黒い炎がエンデを取り囲んでいる。そしてすぐに消えたかと思えば、星明かりが消えた。まさか、と隣りにいる怒神が呟く。流石にここまで大規模に変化があれば儂でも理解できる。黒い炎が星明かりを見えなくなるほど巨大になったのだろう。少なくとも、今の夜は先程までの青を含んだ黒色の夜では無く、深淵が如き黒より黒い漆黒の夜だ。


『天使の先王に焦りが生まれたようです』

「エンデが優勢か。儂等が巻き込まれなければ良いが」

『あの規模だと確実に否とは言えませんね』


 儂と怒神が巻き添えの回避を若干諦めていると、天空城よりも空にいるエンデが腕を上げ、そして下ろす。急に謎の圧迫感が胸を締め付ける。天空の地にいる先王を取り巻く虹色の膜が消え、逆に純白の羽の量と大きさが増大する。


 自身の防衛に回していた魔力を全て羽に回し、エンデのあの黒く巨大な炎を何とかするつもりなのだろうか。儂目線でもそれは無茶だ。大きさそのものが違いすぎる。


「ワレラのクニニ、コクミンのへいオンをハカイスルバケモノヲ!クニのアンネイをおびやカス、バケモノヲ!ワレノてがトドクカギリ、コレイジョウすきにさせてタマルものか!テンシのクニは、ワレラテンシがマモルノダ!コレイジョウのギセイをダレヒトリ、ダサせはシナイ!!」


 ごもっともである。正に自国を守る王族としては百点回答の花丸である。


 輝いていた純白の羽が更に輝き出し、黒い夜の中に煌めいた。まるでそこに希望があるかのように、躊躇わず降下する黒い炎に純白の羽を突き刺さし、そして大きく巨大になった炎の内側から煌めいた。だが……


 突き刺した純白の羽は炎に呑まれボロボロと崩れて行き、煌めいた光は黒に呑み込まれる。あの魔法具は幾つもの羽が連なっているが、先端を炎に呑まれたそれに連なっている羽の根本に向け、黒い炎が伝って行く。事の非常事態に気付いた先王が即座に他の羽で黒が到達する前に該当の羽の連なりの途中を切り飛ばす。それによって炎はそこで止まり、切り飛ばされた残る羽を呑み込み消えた。


 黒い炎……末恐ろしい。少し、呑まれたらどうなるか想像し、少し身震いした。そんな中でも、戦況は変わり行く。


 先王があろうことか、全ての羽を黒い炎に突き刺した。賭けに出たのだろう。このまま羽を小出しにして黒い炎を止めようにも、炎は一瞬しか効果を見せず、すぐに戻った。ならば総攻撃で一か八か消し飛ばす。言葉にするなら簡単だが、当の本人は苦渋と決意の決断だろう。


 対するエンデは他に攻撃をせず、汗を滲ませながら腕を下ろした状態で空中で止まっている。あの規模だ。維持し、降ろすだけでもかなりの労力を使うはず。そして一見無防備だが、エンデの周囲には黒い炎が漂っている。生半可な攻撃なら防ぐし、総攻撃で倒されても、もしあの黒い炎が消え無かったら、もし制御を失い天空城に落ちたら……その可能性が否定できない以上、先王はエンデに攻撃を仕掛けず黒い炎に全神経を注いでいる。


 互いの攻撃がぶつかる。純白の羽は負けじと輝き、黒い炎はそれすらも呑み込もうと黒く黒く、より一層黒く。


 闇と光が同時にぶつかりあった数秒。長く感じたその数秒が終わった時、黒い炎は消え、純白の羽は黒く薄汚れた。


 互いに痛み分けか。


 エンデは今の攻撃でかなり疲れ、先王の魔法具は薄汚れ輝きを失った為か先程までの速度を失っていた。まだ純白の羽は残っているが、大多数が薄汚れた。それが足を引っ張ている。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「ジコシュウフクソウチキドウ!……ヤハリでキヌカ。ダメージがデカすぎる……」


 流石に、あれでは耐え切れなかったのだろう。黒い炎のダメージによるものか、薄汚れた羽も、純白が残っている羽も、いくつもの羽が抜け落ちる。いや違う!抜け落ちた羽が風に流されるように軽く、されど全てを切り裂くような金切音を響かせエンデを襲った!


 その速度は今までの攻防で放たれた攻撃以上。即座にエンデが迎撃したが、撃ち漏らした羽がエンデの服を、肌を切り裂き、肌から血が滴り落ちる。しかし、エンデは動じず魔法の勢いが先程よりも更に増した。


 まだ互いの闘志は消えていない。


「なあ俺この戦いに関係無いだろ?!完全なとばっちりだぞ!」


 その時、二人の敵意がボロ雑巾なルシフェルに降り注ぐ。


「うるさーい!!」

「ダマレェー!!」


 双方の殺意に満ち溢れた攻撃が、ルシフェルを徹底的に襲う。それは、魔王と天使の意思が共鳴した瞬間であった。


 怒り……というかルシフェイルと接した時間の違いによって、この戦いの勝者が最後の一手を掴み取った。


 ルシフェイルへの憎しみや怒りが儂等以上の先王が、エンデよりも意識がルシフェイルに逸れた。それによって、最後の一手を先王は取り逃がす。先王にもまだ勝機はあったのだ。戦力として期待できないくらにボロボロなルシフェイルに構う必要など無かった。それに構わず意識が逸れたエンデに集中砲火すれば、残りの手札でも勝てただろう。だが先王は、憎しみと場違いな発言に気を取られた。


 この戦い、エンデの勝ちだ。


 先程とは違う眩い魔法が天に煌めいている。先王は気付くのに遅れ、防御はもう間に合わない。夜に煌めき天に煌めいたその魔法は、豪雨のように降り注ぐ。無常にも、既に半分近くが黒い炎に焼かれ、残りは薄汚れた魔法具の羽が粉々に碎かれて行く。


 黒い炎が面の攻撃なら、あの光の豪雨は無数の点の攻撃。方向性は違えど、悪魔合体したエンデの魔法は今まで以上に凄まじかった。




 息を整えながら降りるエンデと合流し、魔法具の残骸に向かいながら話を聞く。エンデ曰く先王への直接攻撃は避けたらしい。だがあの老体だ。天使と言えどもしもがある。向かいながらボロ雑巾のルシフェイルを引きずりながら回収し、魔法具の残骸まで来た。山になった残骸の上で椅子としてかろうじて座れる場所で先王が座っていた。疑問を全面に出した表情をこちらに向けて。


「ナニガモクテキダ」


 戦闘終了後、開口一番にそう聞いた。殺意も戦意も感じられない。これなら目的を話しても良さそうだ。


「儂等はとある石板を探していてな。ここにもあると知り来た次第だ」

「……アレか」


 先王が立ち上がってガラクタとなった魔法具を周囲を見渡し、その中にあるの大きな丸い部屋のような建築物の中に入って行った。エンデの光の豪雨で粉々になったはずだが、それに耐えたというのだろうか。そんなことを考えていると先王がこちらに戻ってくる。何かを手に持っており、それを儂等に差し出した。


「ヤル。このマホウグはタリョウのマリョクをヒツヨウとする。ユエにボウダイナマリョクをキュウシュウし、ホユウするこのセキバンをドウリョクゲンとしてイた。イゼンならモクテキにヒツヨウだったし、コクホウをカミしてワタシたいとはオモワなかっタ。ダガ、オマエたちにワレのケッサクはカンゼンにこわサレタ。もうワレがモッテいてもイミはナイ」


 その話を聞き流しながら、すぐにその石板を受け取る。見間違うはずの無い、石板がそこにあった。大賢者が遺した遺物。表面の絵も、裏面の古代文字もある。ん?……見たことがあるような……いや気のせいか。古代の文字なんて覚え切れておらぬし、他の石板と比べれば差異は顕著に分かるはずだ。


 意気揚々と荷物から石板を二枚取り出す。二枚あることに先王が軽く目を見開いた。


 さて、それは気にせず比べ……ん?……んん???なっ?!


「ル、ルーダ……大丈夫か?」

 儂の驚愕にエンデが心配そうに声を掛けてきた。だが、だが、儂の感情は揺らぎまくり、絶望した顔でエンデに向けて口を開く。とにかく、とにかく伝えよう。儂がこうなっている意味を……


「か、被った……」


 儂が今すでに持っている石板の、鐘への指針その1と……絵、文字、形が寸分違わず同じなのである。

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