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終末世界の生き残り 抗う果てに巡る旅  作者: 鷹鴉


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37話 一夜の遊戯

 荷物をまとめ祖国から旅立ちはや二日。そろそろ目的地だが、もう夜だ。近くに家屋はない。非常に不本意だが、野宿する他無い。


「……暇だな」

「確かに」

『特段何もトラブルはありませんでしたし、順調にここまで来れたので体力が余っているのでは?』


 かもしれないな。いつもは何か大変な事態に巻き込まれたり起こしたり、単純に道が険しかったり障害があったりがここまで全く無かった。しかも既に夕食を食べ終わり寝床の準備を終えているのに、未だ眠気はやって来ない。


 さて何をしよう。前は拝借した文献や書き留めた文章を解読したり考察したりしていたが、今は歴史の生き証人達によって即座に解読されたり真実を考察する余地もなく知ってしまう。故に暇が倍増している。


「そうだ。遊戯でもしないか?私の知る限りルーダは今までそういうのをしていなかっただろ?」

「そんな暇は無かったからな。だがどんな遊戯をするつもりなんだ?遊べる品なんて持ってないぞ。この場でできることで、一応手遊び程度なら子供の頃にやった記憶があるが」


「……手遊びは味気無くないか?それよりも、私が知る遊戯の一つ、魔法人生はどうだ?」

 知らない遊戯名だな。魔法という言葉が入っている時点で、現代には存在しないことは確実だろうが。


『魔法人生……人生ゲームのようなものですか?』

「怒神の時代だとそんな名称なのか。一生を盤面上の遊戯として、最終的にゴールに到達した順番と稼いだ金銭で競う遊戯。相違は?」

『ありません。概ねその概要で大丈夫です』


 ……知らないな。儂だけが蚊帳の外にされているような気分だ。


 ただ静観するしかないが、そんな儂を置いてけぼりにしてどんどんとエンデと怒神でルールや遊戯概要のすり合わせが進んで行く。もう止められないなと思いながら、儂と同じように静観していたファザーに近寄る。


「このままで良いと思うか?」

{さぁ。我には人の雰囲気など分からぬ。故にこの場はエンデールとあのゴーレムに任せれば間違いはない}


 悪魔とは思えないほど気安い口調でファザーは言う。黒い小さな炎の塊の表情なんて分かる訳がないが、その取り巻く雰囲気と身体の方向から考えるに、エンデに興味深そうな目線を向けていると思われる。


{……お義父さんと呼んだら消してやる}


 ボソリとそんな声が聞こえた。一瞬ギョッとしてその声の元凶に視線を向ける。確実に今の言葉は儂に向けられたものではなく、その声の小ささから独り言のようなもので誰にも聞かせる言葉ではないことは一応分かる。本当にかなり小さな声だったのでエンデは気付いた様子はない。だが怒神がこちらに顔を向け、面白そうに顔をにんまりと変えた。ゴーレムだから耳が良いのだろう。今の独り言を完全に理解した上での表情なのは確実だ。


 エンデは遊戯の準備に躍起だが、儂はただ頭が痛かった。




「それじゃあ、今から魔法人生を始める。ルールはシンプル。この六面サイコロで出た目の数だけ進み、到着した場に応じた変化、状況、魔法をそれぞれが動かすコマに影響が及ぼされる。順番にサイコロを投げて行き、最終的にゴールに到着した順番を今回は競う。ルール説明は以上」


 エンデがそう言うと、その手から四つの何かが弾け、儂には旅人、エンデには魔法使い、怒神にはゴーレム、ファザーには翼の生えた悪魔。と、それぞれに応じた形の駒として形が形成された。


 そして儂等の目の前に魔法の光で形成された盤面が生み出され、それぞれの駒がスタートにひとりでに着地した。これが壮大な魔法ではなくただの遊戯だというのだから、当時の魔法使いが求めた物がどういうものかありありと分かって若干だが呆れる。


「さて、誰からサイコロを振る?」

 エンデが儂等を見回す。儂はどういうものかを第三者視点で観察したいので、三番手か四番手になりたい。盤面のマス数とゴールの距離を見るに、中々の長期戦になりそうだ。マスに効果の詳細は書かれていないが、番狂わせ程度のマスはあるだろうと予想できるので、番数が後半でも特に問題ないと思われる。


 一瞬の沈黙の中、怒神が手を上げ一番手に、次にファザー、儂、エンデの順に順番が決まった。


『マスターからの情報によりますと、一気にゴールまで近付けられるマスが必ずあるそうです!ならば!ワタシが一瞬で勝利を掴み取りましょう!せい!』


 かなりのハイテンションでサイコロが投げられる。盤面の上を転がり、サイコロは一番多い六の面が上になった。怒神が軽いガッツポーズを取り、ゴーレム駒が独りでに六番目のマスに移動する。


「えー、悪徳貴族の罠に嵌まり転落人生。スタートに戻る」

 一気にゴールに向かえるマスがあれば、逆もまた然りか。出鼻を挫かれ呆けている怒神には悪いが、この遊戯は儂にとって大きな経験になりそうだ。


 怒神の番が終わり、ファザーの番となる。小さな手でサイコロを持ち、空中に向けて投げられる。


 そのまま地面に曲線を描いて落下し、三というサイコロの面が出された。そして盤上の悪魔の駒が三つ分進む。そしてそのマスから、魔法の素質を見出される。サイコロ四以上で魔法学院に入学。


{もう一度か}

 ファザーがもう一度サイコロを投げる。そういうマスもあるのか。道筋は中々に多岐にわたりそうだ。


『6……確実に人生バラ色コースだ、絶対』


 サイコロは六が出て、ファザーは魔法学院の入学に成功した。怒神の言葉から、恐らく現在の難関大学のようなものだろう。高学歴は現在でもかなり重宝されている。


「次に儂か……」

 少々不安になりつつもサイコロを投げてみる。五が出た。旅人の駒が五つ分進む。えー、なになに?荒れた竜の巣を見つける。五以上で何かを見つける。


 何を見つけられるのかは分からないが、取り敢えず投げてみる。六が出た。


「割れていない大きな卵を見つけた。これはアイテムゲット。おー凄い。そっちにカードがあるはずだよ」


 エンデからそう言われると、儂の駒から光の粒子が放たれ一枚のカードとなり、儂に向かって飛んで、竜の卵と書かれたカードが儂の手元に落ちる。これがエンデの言うアイテムのカードか。これなら遊戯の最中に得たものが視覚的に分かりやすい。


 最後にエンデがサイコロを投げる。六だ。怒神と同じくこれはスタートに戻る、か。この遊戯のルールとやり方がかなり分かってきた。


 魔法使いの駒が六番目に到達すると、怒神から驚きの声が上がる。一瞬そちらに意識が持ってかれたが、儂も起きた事象に目を見張る。


「資金を得るため、売買用の魔法具を作る。一回休み。六千の金を得る。これが魔法人生の真骨頂!魔法によって同じマスでも同じ事が起きるとは限らない。マスに止まるまで何が起きるかわからない。逆に言えばどこにいてもゴールに付く可能性もスタートに戻る可能性もある。まぁマスの場によって出る事象は変わるが」


 まるでギャンブルだ。そう思いつつも盤面にあるミニチュアの景色や建物に目を移す。マスの場……草原や火山、街に国。エンデの言葉から推測するに、これは完全に無関係ではない。ミニチュアの場所によってでる事象も変わるのだろう。現に儂が止まったマスには誰もいない大きな巣があり、ファザーのマスには街がある。


 今のエンデの駒のいるマスには村があるが、さっき怒神の駒が着いた時には無駄に豪華な馬車があり、今はいない。ミニチュアは現在進行系で動いている。流石に街や火山などのミニチュアはその場から動いていないが、それ以外の多くが動いている。


 サイコロの投げ方によっては同じ目をだすことは不可能ではない。むしろ狙った目で狙ったミニチュアのあるマスに止まることが大前提の遊戯。怒神もファザーも考え込んでいる。儂と考えていることは同じだろう。


 凄まじいと驚愕するしかない魔法の遊戯……これは中々面白そうだ。

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