表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の生き残り 抗う果てに巡る旅  作者: 鷹鴉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/40

36話 警戒と収穫の果てに

「よし、開くぞ……今から開けるぞ!」

 緊迫した空気が流れる中、最大限の警戒と共に一冊の本を開く。


 エンデは魔法で四方の防御を固め、怒神は内蔵された武器を露わにした臨戦態勢で臨み、儂は全力で腕を伸ばし手に持っている長い棒を動かす。今更だが、長い棒の端を持つのは思ったよりも腕が疲れる。儂が老人だと言うことを再認識させられているような気分だ。


 ちなみにファザーは、また何かしでかしたら手に負えないのでエンデに鳥かごの中に放り込んで貰っている。


 そもそも何故こんなことになっているかと言うと、昨日怒神によって選ばれた三冊の本を調べる為に食べながら意見を交わしていると……



◆◇早朝の朝食中◆◇


{それ以外にも開けた瞬間に大爆発する本もある。主に悪魔から人間への玩具として創られた兵器だ。もしそれがあの中にあれば、其方らも我も死ぬだろうな}

「「……」」

『……』


◆◇―――◆◇



 結果こうなった。連日の事態は全て気の緩みから始まった。ならば緩まなければ良い。そう単純な話でないのかも知れないが、こうした方が何が起きても対応できるはずだ。




 まず一冊目。タイトルは無し。外装はボロボロに劣化した革製。怒神曰く、これは山のように積み重なった本の中心部で見つけたらしい。


 恐らくそれは図書塔名物、本山脈。まさかあれの中にあったとは……その昔地鳴りで数多の本が落下した時にできた数千冊以上にも及ぶ本の山々。多過ぎて今尚放置され、儂でさえも外周のみにしか手を出せていなかった山。下手に引き抜けば本が雪崩のように落ちて圧死するそれを意図も容易く……やはり凄いな。


 一枚めくると薄汚れた無字な紙が見え、更にもう一枚めくってみる。


 その瞬間に本に書かれていた文字が光り出し、光る文字が空中に停滞した。これには流石に驚く他無い。エンデはその光景を興味深そうに見つめ、指を光る文字に突き出しゆっくりと横に動かす。するとその文字がエンデの指と一緒に横に動いた。その光景を見る限り、読み物の形式としては本よりも巻物が近いだろうか。


 エンデが更に文字を横に動かし、儂は遅れを取らないように光る文字を読み進める。空中の文字は、本の劣化具合から当然の如く古代の文字。エンデは独り言を呟くように文字を読み、儂は今までの知識から何とかこの文字を読める。だが怒神は読むのを諦め、下の本に腕を構えいつでも攻撃できるように攻撃体勢を取っている。


 誰も大きな声を出したりしない静かな空間で、そのままボソボソと黙々とその本を読み進める。




 結果として、物珍しい本ではあったが内容は然程珍しさも目的の物でもないただの植物の図鑑だった。エンデ曰く、現代の植物図鑑と全く変わらないらしい。それはそれで進歩していない気がするが、大丈夫なのか現代の植物学者。


 一冊目は収穫無し。次に二冊目。


 二冊目の本は、ヤマビコオーウムというタイトルが書かれた本。この本は本棚の裏側に挟まっていたらしい。基本的に図書塔ではその本の数ゆえに、すべての本を把握しきれていない。本棚の裏側に挟まっていたとなれば、確実に忘れ去られた物になったしまっていただろう。実際儂はこの本を知らない。


 一冊目と同じように、長い棒で慎重に表紙を開く。黄ばんだ何も書かれていない紙が姿を見せる。もう一枚捲る。またもや黄ばんだだけの何も書かれていない紙。もう一枚、もう一枚、もう一枚……


「何だこの本は。怒神、本当にこれが魔法関連の書物なのか?」

 儂の言葉に怒神はうーんと唸るだけ。怒神にとっても予想していなかったようだ。しかもエンデも意味が分からないという顔をしている。これは完全にお手上げだな。


「ナンダコノホンハ。ドシン、ホントウニコレガマホウカンレンノショモツナノカ?」


 儂そっくりな言葉が儂以外から聞こえた。怒神とエンデが一瞬儂を見て臨戦態勢となる。何に対しての臨戦態勢か。この場において一番可能性が高いのは……


「これしか無いか」

「コレシカナイカ」


 再び言葉が繰り返される。一瞬考え込み、少しだけ気を抜いたエンデが口を開く。


「あー」

「アー」


『成程!これは発せられた言葉を繰り返す魔法具ですね』

『ナルホド!コレハハッセラレタコトバヲクリカエスマホウグデスネ』


「……」

 危険性は無いようだが、普通にうるさいな。声量が無駄に二倍近く聞こえる。怒神はその声量には無反応だ。ゴーレムだからか?


 ただ、儂と同じくエンデもうるさく感じたらしい。バンッ!と本が破裂しそうなほどの勢いで閉じられた。


「あーあー」


 本が閉じられたことで、繰り返される声が再び発せられることは無くなった。儂がそのことに息をつくと、ファザーからも軽く息をつく音が聞こえた。悪魔だとしても、若干うるさく感じたようだ。


「恐らくこれは本の形をした魔法具のようだな。それにしても聞いた言葉をそっくりそのまま繰り返すオウムという鳥と、放った大声が跳ね返って聞こえる山彦という現象とそっくりだ。というか名前そのままじゃないか。一人ぼっち用の玩具だなこれは」


 なんだか悲しい玩具だな。魔法具としての神秘性も地の底にしか感じない。これを作った者はどういった精神性で作ったのか甚だ疑問だ。




 最後に三冊目。表紙に神話のような神々しい空と、空に浮かぶ大きな城が描かれた本。タイトルは無し。


 先の二冊とは一転して、まともな本に見える。だがまともで普通の本はお呼びではない。儂の予想を上回る本であって欲しいものだ。


 手慣れてきた棒の操作で表紙を捲る。


 そこには目次があった。普通である。だがそこに書かれている文章が普通ではない。目次が書かれた文章の上に、黒い何かで半分近くが塗りつぶされている。怒神が目を細める。エンデが考え込みながら覗き込む。儂はただただ息を呑む。


 一枚捲る。警告、と。三冊の中で一番古い文字で、しかも見間違いでなければ血文字で乱雑に書かれていた。先の二冊とは一転してきな臭い。


 もう一枚捲る。ようやく普通でまともな文章が来た。光る文字や言葉返しなどの本と呼べるか怪しい物が連続していたから、まともな本なようで妙に安心する。そしてずっと魔法の発生を危惧しての警戒をしているが、流石に馬鹿馬鹿しくなって来た。攻撃的な事象がこれっぽっちも起きない。エンデに視線を移すと、目があった。儂の思っていることを察したのか、今開いている本に近付き儂と怒神に手招きをした。


「流石に、警戒し過ぎたかな」

「そうだな。ファザーの言葉で無駄に警戒してしまった」

『ですが、警戒し過ぎだとしてもこの判断は間違い無いかと。実際昨日は本にやられましたから』


 その言葉を最後に、この場の全員の視線が一瞬ファザーに向かう。そして視線はその本へ。


 エンデの手によって、足早に本の内容がひた走る。作者による自伝、どこかの地図、天空城と呼ばれる地。内容的に天空城までの道を示した本のようだが、天空城と呼ばれる何かを儂は知らない。天空というのだから空にあるのだろうか。想像のつかないな。


 地図を見る限り、その場所はこの大陸、ここから一つほど国を跨げば辿り着けるほど近い。しかもその方向は行こうと思っていた方向だ。


「どうする?行くか?」

「うーん。ただの妄想で書いたにしては、刻まれている魔法が生半可なもんじゃない。ぱっと見る限り爆炎に包まれても無事なくらいに頑強だぞこの本」


 一概に絵物語と断定することはできないほどだな。この際だ。次の目的地は天空城にしてもいいだろう。しかも地図を見る限りかなり近い。国一つ分しか離れていない。


 この前、暇になった時に何かは絶対にあるあの石板の方向を確認ところ、複数ある矢印のうちその一つがここからこの天空城へ向かう方向とほぼ同じ。図書塔の書物をある程度確認したら向かう予定だったのだ。他の石板を探しつつ天空城を探す。向かう方向が同じなら探す物が一つ増えるだけだ。どうということはない。善は急げとも言うし、明日には出発しよう。


 ……祖国に来てから、考古学者の友人にまだ会っていない。彼を見ると時の流れの残酷さを嫌でも実感しそうで怖い。この凍えた世界になってから、五十数年。本当に嫌になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ