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日本の魔王は異世界でも魔王だったようです  作者: 森田季節


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26話 魔王、城で頭を撫でる

 オオカミがこちらを見つめてくる。


 さて、まずは説得をはかってみるか。

 幹部が何人もいるんだし、おそらく今回は説得もできると思うんだが。


 ただ、その前にザフィーラが言った。


「どきなさい。このお方は前代の魔王様に代わって降臨なさった魔王ルシア様よ。この城もルシア様が接収するわ。この元第7軍団長のザフィーラ、第11軍団長ベルクがそれを間違いないと誓う!」


 誰がこの城を支配しているかわからないが、軍団長の名前でなんらかの反応を示すだろう。納得しないなら、わからせてやればいいだけだ。


 オオカミの一匹が人間みたいな笑い声をあげた。


 こいつ、思ったより上級の魔族だな。


「そうか、そのような偽物が現れたのか」


「偽物とは何よ!」


「我らは新魔王ダグラス様に仕える者である。前代の魔王がいなくなってから、この城を支配しておる」


「魔王ダグラス? ベルク、知ってるか?」


「いえ、幹部にそんなものはいなかったかと……」


「もしかして俺みたいによそから来た奴かな……」


 そうじゃないとしても、腕に自信のある奴が魔王を名のることはあってもおかしくない。免許制とかじゃないからな。言ったもん勝ちだからな。


「魔王は何人もいらぬ! ここで叩きつぶすのみ!」


 その声とともに様々な魔族が押し寄せてきた。


 ああ、こういう展開は予想してなかった。


 さて、久しぶりに俺の力を見せてや――


「すべてを焼き尽くせ! ヘルファイア!」


「絶命せよ! エディクト・オブ・デス!」


「ぶん殴るウサ!」


 みんなが頑張って敵を倒していってしまった。


 みんな、それなりにレベルが高いので、当然ながら血祭りにあげている。


 ピョンタンだけが打撃攻撃ということもあり、多少苦労していたが、それでもオッドアイみたいな奴の目玉に拳を打ちつけて、撃退していた。


 で、三人が俺を守る態勢なので、こっちに敵が来ない。


「あの、俺もやらせてほしいんだけど」


「ルシアさんは魔王なんだから、どーんと構えていてください!」


「軍団長として、魔王様の手を汚すわけにはいきません!」


 まあ、正論ですね。


「じゃあ、俺は何をしたらいいんだ?」


「ルシアさんは何もしないでください!」


 また正論が飛んできた。


 魔王、暇だぞ!


 普通、王様だと政治とかで忙しいはずなのだが、現状、政治的なことに割く時間がまるまる余っているのだ。


 しょうがないので城の間取りでも確認するか。

 なんか全体的に薄暗いんだよな。そもそも石造りで、窓が小さすぎる。


 でも、戦争用の城ならしょうがないか。

 日本家屋も昔は光が弱かったはずだし、現代人の家屋に慣れ過ぎているのかもしれない。


 そんなことをやっている間に、敵はあらかたやられていた。


「くそっ! 一度撤退するぞ!」

「グオアーッ!」「ガウーッ!」


 敵たちは一度撤退していく。

 うれしくはあるが、少しは戦いたかった。


「みんな、おつかれさま」


 三人をねぎらう。

 とくにピョンタンはペットという扱いらしく、


「頭をなでなでしてほしいウサー!」


 と言ったので、撫でてやった。

 まさに「減るもんじゃないし」というやつだ。


 魔王の役目は頭撫でるだけなのかという気もするが、案外これが真実なのかもしれない。


 ウサ耳少女の頭を撫でるだけの簡単なお仕事だ。


 ピョンタンの耳がぴょこぴょこと動いている。


「これは耳は撫でていいのか?」


「耳はダメウサ。絶対にダメウサ」


 どんなことになるのか、すごく試したい。


 俺がピョンタンを撫でている間、ザフィーラはずっと俺の顔を見つめていた。


「あ、あとで私もお願いします! 魔王軍の幹部として力の回復が必要です!」


「回復って、これでは魔力も体力も回復しないと思うぞ……」


「いいからお願いします!」


 言われたとおりにした。


 なでなで。なでなで。


 ザフィーラの顔がマッサージを受けているようなものになる。


「はう~、ルシアさん、とっても素晴らしいです……」


 微妙にいやらしい顔で、夫として少し恥ずかしい……。

 この場にはベルクもいるからな……。


 幸い、ベルクは敵が来ないかを真面目に見張っててくれたので、まだマシだった。


 さて、休憩終わり。


「あぁ~、自分の家とは違うところで頭を撫でてもらうって、独特の快感がありますね……」


「ザフィーラ、微妙に発言が変態っぽいぞ……」


 嫌われるよりは100倍いいけど。


「それじゃ、あらためて仕事を再開しましょう!」


 ザフィーラがいつにもなくテンション高く言った。

 頭撫でたら回復するというのはあながちウソではなかったのかもしれない。


 そうだな、この城の攻略ははじまったばかりだもんな。


「このお城の間取りを確認しますよ!」


「えっ?」


「ここがもうすぐルシアさんと私の新しい愛の巣……いえ、魔王様の世界征服の拠点となるんですから、じっくり間取りを確認しましょう」


「いや、まだ敵が残って――」


「とくに魔王様の部屋、夫婦の寝室などをどこにするかは真剣に考えなければなりません」


 困ったことに、ザフィーラは全然ふざけてなかった。


 住宅展示場にガチで来た主婦みたいな目だった。


「わかった……。間取りを見よう」


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