決着
攪乱結界の中心。
土煙。
魔力の残光。
崩れた大地。
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ゼルヴァ=グランはゆっくりと立ち上がる。
脇腹の傷から血が流れている。
それでも表情は崩れない。
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「……見事だ」
小さく呟く。
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周囲の魔族たちがざわめく。
幹部が追い込まれている。
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だがゼルヴァは視線を逸らさない。
ただ勇者を見る。
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「やはり貴様は異常だ、勇者」
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両腕を広げる。
魔力が収束し始める。
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今までとは明確に違う。
質が違う。
密度が違う。
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ミアの背筋が凍る。
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「……まずい」
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ゼルヴァが低く告げる。
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「ならば――」
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巨大魔法陣展開。
戦場全域を覆う規模。
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「すべてを均す」
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発動。
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空間が沈む。
光が鈍る。
音が遠のく。
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未来収束強制分散術式
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勇者の特権領域。
そこへ直接干渉。
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アルテリオの周囲の空気が重く歪む。
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未来の流れが引き裂かれる。
固定が揺れる。
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ゼルヴァが笑う。
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「絶対を殺す魔法だ」
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「これで――」
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言葉の途中。
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アルテリオが動いた。
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爆発的な踏み込み。
今までで最速。
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結界も術式も無視。
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ゼルヴァの瞳が見開かれる。
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「……な――」
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斬撃。
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魔法陣ごと両断。
術式崩壊。
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衝撃が遅れて爆ぜる。
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ゼルヴァの身体が吹き飛ぶ。
大地へ叩きつけられる。
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静寂。
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誰も動けない。
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未来収束を殺すための魔法。
それを力で突破。
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ゼルヴァは仰向けのまま空を見る。
口元に笑み。
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「……なるほど」
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「貴様は」
血を吐きながら呟く。
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「最強ではない」
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「最悪だ」
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アルテリオが無言で歩み寄る。
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ゼルヴァは抵抗しない。
できないのではない。
しない。
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「敗北だ」
静かな声。
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周囲の魔族軍へ視線を向ける。
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「総員、撤退」
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誰も逆らわない。
即座に離脱が始まる。
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ミアが小さく息を吐く。
戦闘終了。
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ゼルヴァの視線が再び勇者へ戻る。
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「覚えておこう」
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「揺らぎの中でなお立つ存在」
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薄く笑う。
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「それが真の脅威だ」
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光。
転移。
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幹部消失。
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戦場には静寂だけが残った。
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ガルドが呟く。
「……終わったのか」
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ミアは空を見る。
小さな違和感。
まだ消えない。
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「いいえ」
静かな声。
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「何かが、始まっている」
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アルテリオは何も言わない。
ただ遠くを見ていた。




