勇者vs幹部2
爆ぜた魔力が戦場を覆う。
黒炎の残滓。
焦げた大地。
揺れる空気。
⸻
ゼルヴァ=グランの魔力が再び膨れ上がる。
だが先ほどとは質が違った。
⸻
濃い。
重い。
歪んでいる。
⸻
ミアが息を呑む。
「……魔力圧が変わった」
⸻
ゼルヴァが低く呟く。
「適応完了」
⸻
片腕を掲げる。
巨大魔法陣展開。
⸻
「勇者専用戦術」
⸻
空間そのものが軋む。
魔法陣が幾重にも重なる。
⸻
拘束ではない。
固定でもない。
⸻
干渉阻害
⸻
アルテリオの周囲の空気が歪む。
⸻
未来収束の流れに、
わずかな濁りが生じる。
⸻
ガルドが目を見開く。
「何を……」
⸻
ゼルヴァが笑う。
⸻
「力比べなどしない」
⸻
「貴様は怪物だ」
⸻
「ならば」
瞳が細まる。
⸻
「世界の方を削る」
⸻
魔法発動。
⸻
視界が乱れる。
感覚がズレる。
距離感が狂う。
⸻
勇者の特権領域。
そこへ意図的なノイズが流し込まれる。
⸻
アルテリオが初めて踏み込みを止める。
⸻
ほんの一瞬。
⸻
だがそれで十分だった。
⸻
側面。
後方。
上空。
⸻
高機動魔族部隊が同時突入。
⸻
「囲め!」
「収束を崩せ!」
⸻
通常なら意味を成さない攻撃。
だが今回は違う。
⸻
ミアの顔色が変わる。
⸻
「未来固定が……読めない?」
⸻
完全な霧ではない。
だが確定性が薄い。
⸻
ゼルヴァが呟く。
⸻
「これで対等だ、勇者」
⸻
次の瞬間。
⸻
アルテリオが動く。
⸻
速い。
やはり異常な速度。
⸻
だが今度は、
斬撃がすべて最短解ではない。
⸻
わずかな修正。
わずかな判断。
⸻
勇者が「選択」を強いられている。
⸻
魔族兵が吹き飛ぶ。
障壁が砕ける。
それでも攻勢は止まらない。
⸻
ゼルヴァが笑う。
⸻
「そうだ」
⸻
「それでいい」
⸻
「絶対など」
魔力を噴き上げながら告げる。
⸻
「壊してこそ価値がある」
⸻
爆発的衝突。
剣と魔法。
咆哮と閃光。
⸻
戦場は完全な激戦へ変わっていた。
⸻
それでもなお。
⸻
勇者は倒れない。
⸻
どれだけ干渉されようと、
どれだけ未来が揺れようと。
⸻
アルテリオの剣は止まらない。
⸻
だが確かに、
戦いの性質が変わり始めていた。
⸻
ミアが静かに呟く。
⸻
「……世界が揺れている」
⸻
誰にも聞こえないほど小さな声だった。




