敵幹部襲来
南方戦線。
魔族前線拠点ヴァル=グレア。
焦土の上。
重い空気。
⸻
高位魔族が前へ出る。
黒い外套。
赤い瞳。
⸻
「……来るな」
低く呟く。
名は――
ゼルヴァ=グラン
前線統括幹部。
⸻
側近が問う。
「撤退命令を出しますか」
ゼルヴァは首を振る。
⸻
「不要だ」
静かな声。
⸻
「勇者は観測済みだ」
「問題は」
わずかな間。
⸻
「揺らぎの方だ」
⸻
空が裂ける。
光。
⸻
勇者アルテリオ。
⸻
着地と同時に爆風。
最前列が吹き飛ぶ。
⸻
アルテリオは一言も発しない。
即座に踏み込む。
⸻
斬撃。
障壁ごと魔族兵を断つ。
⸻
ゼルヴァが静かに笑う。
⸻
「相変わらずだな」
⸻
両手を広げる。
魔力展開。
⸻
「だが――」
⸻
側面転移。
瞬間移動魔法。
⸻
完璧な奇襲。
⸻
「アルテリオ!」
ミアの警告。
⸻
アルテリオが振り向く。
斬る。
⸻
だが。
⸻
浅い。
⸻
ゼルヴァの障壁がわずかに耐える。
衝撃が散る。
⸻
ゼルヴァの瞳が細まる。
⸻
「やはりな」
⸻
「固定が甘い」
⸻
次の瞬間。
至近距離魔法炸裂。
⸻
爆炎。
衝撃。
⸻
勇者が初めて後退。
半歩。
⸻
魔族軍がざわめく。
⸻
ゼルヴァが静かに告げる。
⸻
「恐れるな」
⸻
「無敵ではない」
⸻
「だが」
薄く笑う。
⸻
「依然として怪物だ」
⸻
アルテリオが無言で踏み込む。
今度は容赦のない斬撃。
⸻
ゼルヴァの障壁ごと吹き飛ばす。
大地へ叩きつける。
⸻
それでも笑う。
⸻
「それでいい」
血を拭う。
⸻
「その方が」
⸻
「戦いになる」
⸻
戦場の温度が一段跳ね上がった。




