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勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
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適材適所

翌日。


境界都市・外縁居住区。


昨日とは違う空気。


ざわつきはない。


効率低下もない。



むしろ。


妙に落ち着いていた。



猫族が首をかしげる。


「きょう、へいき」


リオも違和感を覚える。


「……視線が違うな」



視線はある。


だが昨日のものと質が違う。


警戒ではない。


観察でもない。



期待に近い何か



広場。


簡素な仮設診療所。


人だかり。



セラが小さく呟く。


「医療区画」


ジーナ。


「負荷状態の個体が集中しています」



近づいた瞬間。


空気が変わる。



「あ……」


「少し楽だ」


「頭の重さが……」



人々の表情がわずかに緩む。


劇的ではない。


だが明確な変化。



葵が立ち止まる。


「……え?」



医療補助の人間が葵を見る。


目を見開く。



「君……昨日の」


覚えている。


搬送路案件の救助対象のひとり。



「近くに来たら、痛みが引いた」



リオが目を細める。


ジーナが静かに告げる。



「干渉効果の正方向反応を確認」



「正方向?」


「はい」


短い間。



「認知負荷・精神緊張の緩和が発生しています」



葵は理解が追いつかない。


「……何もしてないけど」



だが現実として、


人々の呼吸が整っていく。


表情が落ち着く。



セラが小さく言う。


「揺らぎの吸収……」



ここで構造がはっきり現れる。



昨日の集積区:


高精度・高同期・高効率系


→ 干渉がノイズ化



診療所周辺:


疲労・不安・痛み・緊張


→ 干渉が緩和作用化



リオがぽつり。


「……環境依存か」



ジーナ。


「はい。安定系では異常。

不安定系では補正として機能」



猫族が嬉しそうに言う。


「なんか、きもちいい」



診療所の空気が静まっていく。


ざわめきが減る。


不思議な均衡。



医療補助員が思わず言う。


「もう少し……ここにいられないか」



葵は少し戸惑う。


「いや……依頼が」


言いかけて止まる。



リオが葵を見る。


珍しく柔らかい視線。



「今日は予定ないだろ」



短い沈黙。



葵は苦笑した。


「……まあね」



ベンチに座る。


何もせず。


ただそこにいる。



時間だけが流れる。



騒ぎなし。


派手さなし。



だが、


診療所の空気は明らかに安定していた。



夕方。


人間医師が静かに言う。



「これは魔法ではないな」



ジーナが即答。


「分類不能干渉です」



医師は苦笑する。


「便利な言葉だ」



葵は空を見る。


今日も勇者の光は遠い。


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