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勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
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異物

数日後。


境界都市・物資集積区。


荷車。


木箱。


人の往来。


いつも通りの光景。



だが妙な空気が漂っていた。


小さな違和感。


誰も言語化しない類のズレ。



商人が苛立つ。


「……さっきから噛み合わねえな」


荷運びの男。


「数、合ってたよな?」


別の声。


「合ってたはずだ」



帳簿に誤りはない。


計算も間違っていない。


だが現場が回らない。



天使監督官が眉をひそめる。


「報告では遅延要因なし」


副官。


「はい。しかし実作業効率が低下しています」



その原因は単純だった。



少し離れた場所。


ブリッジの姿。


葵たちは通常依頼で立ち寄っていただけ。


特別な介入は何もしていない。



それでも。



「……またズレたぞ」


「いや今合ってた」


「おかしいだろ」



小さな判断齟齬が連鎖する。


本来一致するはずの認識が揺れる。



ジーナが静かに告げる。


「周辺演算安定率の低下を検出」


葵は顔をしかめる。


「またそれ?」


「はい」


短い間。


「今回、原因はあなたです」



「……え?」



リオがすぐに理解する。


「干渉値の副作用か」



ジーナ。


「計測以降、葵の影響半径が拡張しています」


「拡張って……」


「未分化干渉の波及距離が増大」


便利な言葉。


だが意味は明確。



何もしていないのに周囲が揺らぐ



セラが周囲を見る。


人々の小さな混乱。


事故ではない。


だが効率が崩れる。



猫族がぽつり。


「なんか、ざわざわする」



葵は黙り込む。


否定できない。


現実として起きている。



少し離れた指揮区画。


天使監督官が低く言う。


「……やはり影響個体か」


副官。


「排除しますか?」


「違う」


短い否定。



「距離を取れ」



公式混成の動きは速かった。


区域分離。


動線再調整。


葵たちを遠ざける。


露骨ではない。


だが明確。



リオが苦笑する。


「嫌われ始めたな」


「始めたじゃなくない?」


葵は乾いた声で返す。



ジーナが淡々と補足。


「評価ではなく物理的対応です」


「その言い方も怖いんだよ」



区域を離れるにつれ、


集積区の作業効率は回復する。


数値も正常化。



誰も歓声を上げない。


誰も謝罪もしない。


ただ処理される。



帰路。


猫族が聞く。


「わるいの?」


葵は少しだけ考えて答えた。



「……たぶん、相性が悪いだけ」



ジーナが静かに訂正する。


「相性ではありません」


短い間。



「影響です」



葵は何も言わなかった。



夜。


簡易宿。


空気は静か。



リオがぽつり。


「便利な能力じゃなかったな」


葵は苦笑する。


「だね」



セラは外を見る。


都市の光。


遠ざけられた距離。



「世界は合理的です」


静かな言葉。



ジーナが続ける。


「高干渉個体は安定系と衝突します」



葵は天井を見上げる。


しばらくして小さく呟いた。



「……強さじゃないって、こういうことか」



誰も答えない。



外では異常なし。


平穏。


だが確実に変化は始まっていた。


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