各陣営の反応
計測終了から半日後。
エルフ中枢演算塔・上位層。
報告書は極めて簡潔だった。
対象:来訪個体 葵
総合干渉値:19.2
単体戦闘値:2.8
余計な形容なし。
評価なし。
ただ事実。
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沈黙。
長い。
誰もすぐには口を開かない。
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最初に反応したのは戦術系エルフ。
「……測定誤差では?」
即座に否定。
「三重計測で一致」
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別の個体。
「干渉値19は英雄級域」
「だが戦闘値は3未満」
矛盾。
だが数字は揺らがない。
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上位演算官が静かに言う。
「分類不能ではない」
全員の視線が集まる。
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「最悪種」
空気が凍る。
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「破壊者ではない」
「支配者でもない」
短い間。
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「系統汚染型」
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意味を理解した個体の顔色がわずかに変わる。
エルフ社会における最大級の警戒分類。
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「接触個体の演算精度が低下」
「未来分岐増加」
「予測安定率悪化」
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つまり。
存在自体がリスク。
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結論は早かった。
「都市滞在許容不可」
「監視対象へ格上げ」
「直接排除は?」
短い沈黙。
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「不可」
理由は単純。
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「敵対要因未確認」
「排除合理性が成立しない」
エルフの論理は冷酷で正確だった。
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「よって」
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「距離管理」
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同時刻。
公式混成第一部隊・指揮区画。
天使指揮官が報告を受けていた。
書類を読み終え、静かに目を閉じる。
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副官が言う。
「脅威指定ですか?」
「違う」
即答。
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「理解不能指定」
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「戦闘能力は低い」
「だが干渉値が異常」
副官は困惑する。
「どう扱うべきか」
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天使は窓の外を見る。
しばらくして言った。
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「接触時間を制限する」
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「影響を受けすぎる」
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別区画。
オーガ前衛隊。
報告は一言で共有された。
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「強いのか?」
「弱い」
「どっちだ」
「両方らしい」
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数秒の沈黙。
やがて隊長が笑う。
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「面倒な奴だな」
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オーガの評価は単純だった。
危険かどうかより、
使えるかどうか。
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猫族ネットワーク。
情報伝達は速い。
誤差も多い。
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「すごいやつ」
「でもよわい」
「よわいのにすごい」
「なにそれ」
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結論。
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「へんなの」
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だが猫族だけが本能的に理解していた。
この種の個体の意味を。
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「いっしょにいると、しなない」
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境界都市・市民層。
噂は歪む。
単純化される。
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「演算塔が測ったらしい」
「勇者級だとか」
「いや戦えないらしい」
「じゃあ何なんだ」
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誰も正確な意味を知らない。
だが違和感だけは共有される。
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「……近くにいると、なんか調子狂う」
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その夜。
ブリッジの簡易宿。
空気はいつも通り。
だが視線が違う。
通行人。
商人。
兵士。
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妙に目が合う。
すぐ逸らされる。
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猫族が小さく呟く。
「みられてる」
「だね」
葵は苦笑する。
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リオは低く言う。
「世界にバレたな」
「何が」
「お前の異常」
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葵は少しだけ黙ったあと答える。
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「強くなった実感ないんだけど」
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ジーナが淡々と補足する。
「数値上は高水準です」
「だからその言い方怖いって」
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セラは静かに言う。
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「干渉値は、強さではありません」
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「世界への影響量です」
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葵は少しだけ表情を曇らせた。
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「……それ、迷惑寄りの能力じゃない?」
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誰も否定できなかった。
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外では夜風。
異常なし。
平穏。
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だが世界の認識だけが変わっていた。
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葵=測定済み異常個体




