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勇者が世界を救ったあと、僕は国を作ることにした  作者: あおいにじ
第二章:観測される側の論理
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人間族

数日後。


境界都市・診療所。


葵は同じベンチに座っていた。


特に依頼があったわけではない。


呼ばれたわけでもない。


ただ何となく足が向いた。



空気は穏やかだった。


患者の声は小さい。


緊張が薄い。



医師が苦笑する。


「完全に常駐扱いだな」


葵は肩をすくめる。


「たまたまです」



ジーナが淡々と補足。


「来訪頻度は規則化されています」


「言い方やめろって……」



そこへ、


新たな一団が現れる。


装備統一。


動きが揃っている。



人間部隊。



リオが即座に察する。


「軍属か」


セラも視線を向ける。



先頭の女が歩み寄る。


視線は迷わない。


観察ではない。



評価している目



「来訪個体・葵」


呼び方が違う。


エルフとは違う。



「人間統合管理局より接触要請」


妙に現実的な名称。



葵が少し戸惑う。


「えっと……何か問題でも」


「問題ではない」


即答。



「有用性の確認だ」



空気が微妙に変わる。


この世界で珍しい言葉。



脅威ではなく有用




簡易仕切りの内側。


女と葵。


ジーナ。



「報告は受領済み」


「干渉値19.2」


「戦闘値2.8」


事実だけ。


感情なし。



だが続く言葉が決定的に違う。



「極めて理想的だ」



葵が思わず聞き返す。


「……理想的?」



「高干渉・低出力」


「暴走リスク低」


「制御不能域が限定的」



ジーナが静かに補足。


「評価基準が他種族と異なります」



女は頷く。


「当然だ」



「人間は安定系ではない」



この一言が重要。



「不確定性耐性が高い」


「環境ノイズ適応型」


「多少の演算誤差では崩れない」



エルフと真逆の思想。



「よって」



「君の影響は障害ではない」



短い間。



「資源だ」




外。


リオが壁にもたれて待っている。


女が戻る。



「同行要請を行う」


「どこへ」


「人間居住圏」


即答。



リオが眉をひそめる。


「目的は」


「観測継続」


「適応試験」


少しだけ間。



「および実地運用」



猫族が小さく聞く。


「つれてかれる?」


葵は少し困った顔をする。



「強制ではない」


女が静かに言う。



「だが人間圏では君は拒絶されない」



この言葉が地味に効く。


かなり効く。



葵はしばらく黙る。



拒絶されない。


それはこの旅で初めての条件だった。



ジーナが静かに告げる。


「環境適合率は上昇します」


便利な言葉。


だが今回は事実。



葵は小さく息を吐いた。



「……行ってみます」



リオが小さく笑う。


「やっと歓迎か」



女は一切表情を変えない。



「歓迎ではない」


短い間。



「運用だ」



風が吹いた。


診療所の空気は穏やかなまま。



葵の立場だけが、


静かに変わろうとしていた。


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