8章 謝家での準備
謝家の門弟たちは修錬所ではなく竹林で体を鍛えだして体格がたくましさを磨いていた。
「謝砂様も一緒に鍛えませんか?」
「えっ? 体を動かすのにほぐしてないから時間がかかる」
謝砂は一人で星星から招功の場所を聞いて探しにきただけだった。
帳家から帰るまえに帳荻の先生と稽古をしていた。
何を学んできたのか招功と門弟たちは謝家に帰ってきてすぐに鍛え方を見直し変えて竹林で体を修錬しだした。
それに伴って門弟たちも筋肉を鍛えることを競い合いだした。
星星は竹林の奥に室を招功が用意されて謝砂とは別の一室に住んでいたが最近は賑やかで眺めがいいと言っていた意味が分かった。
星星のもとに女子たちも集まって鑑賞会をしているらしい。
「悪鬼を祓いにいくのに門弟も連れていきますか?」
「やめておく。桃家の管轄地の問題だから謝家は行けても待機かな。星星は連れていかないけど仙筆から離れても常に人の姿で存在できるようになったから筆だけ持っていくよ」
「私も行きましょうか?」
「招功は連れていけない。星星が怒るんだ」
謝砂と招功が話していると家人たちが蜜柑の皮を天日干しているのが目に入った。
「蜜柑の皮を剥いて干してるの?」
「はい。陳皮といって薬になりますから」
「そうだな。準備もしておかないと。妓楼にいくのに身なりも気を付けないと少し鍛えようかな。妓楼ってどんなところ? 万歓楼って知ってる?」
「そうですね。行ったことないですが師兄たちがいうには風流なところらしいです。書や楽などのにも精通し話題事にも町の情報がすべて集まります。仙家でも訪れるのはどこで害を出している鬼や妖怪などの情報も集まりますから修仙が尋ねることもあります」
「でも爛は気乗りしてないんだ。仕方ないか。柳家とは色々ありそうだしな。親戚関係って疲れるのは同じだな」
「そうですね。謝砂様が宗主になったときというより、理理殿の成婚のときにすでにも揉めましたから記憶が消えるほどでしたね。謝家として口出しできないように傍系から一斉に整理しましたよね」
招功と門弟たちは目をすっと逸らす。顔色が一気に青ざめていて何をしたのか聞きたくない。
招功がふっと空笑いを溢す。
「謝砂様に使われすぎて私も記憶が曖昧ですよ。門弟たちもいるのは謝砂様と私と育ったものが多く師兄たちは勝手に届いた伝符を受け取るとすぐに祓いにいき逃げ出してますし、ふらっとしてから自由に飛びまわり謝家に戻ってきます。年長者の方々は隠居するように謝砂様が押し出しましたから」
「謝家の傘下ってみんな嶺家や帰家みたいな感じ?」
「謝家は他の世家と違ってると言われてます」
「揉め事は少ない?」
「はい。代替わりするときに傘下から抜けるものはすでに抜けさせたじゃないですか。傘下に入った仙府の管轄地は口出しをしません。争いごとの相手にもされない小仙家が多いのも謝家だけですね。門弟たちはその家の出身者が多いですし謝砂様は信頼されてます」
「嶺家もそうなの?」
「理理様が桃家に嫁がなければ知られてもないでしょう」
「招功たちってみんな謝家の師弟であってるよね?」
謝砂は思い切って聞いてみたが招功は目を丸くして肩を震えさせた。
「あははは。昔すぎて忘れてますね。私は同じ謝家でも前宗主の従弟の叔父の子ですよ。傍系の傍系ですが謝家は気に留めませんから宗主の補佐として命じられたまま使われてます。謝砂様には黙っておこうと決めてましたが師兄たちになんて言われたか知ってますか?」
「分からない」
「おめでとう。師弟よ、俺たちが宗主に捧げたんだ。恨まないでくれ。家のことは一人で引き受けるんだ。代わりに自由を守るのは俺たちだというんです」
「謝家は他と違って親戚とかの関りがなくて助かった。息が詰まりそうだ」
「聞いてないのですね。分かってますよ。謝家の家紋である燕は魂を運ぶ燕だといいます。仙府は燕の巣。雛たちをお忘れなく」
「遠回しにいわなくても帰ってくるよ。塵昌から知らせがきたらすぐに教えてくれ」
「分かりました」




