8章万歓楼
謝砂は爛から柳鳳がもってきた書を報告書を受け取った。
挟まっていた伝符に触れると妓楼の様子が文字をなぞるように情景が見えてしまった。
その晩のうちに墓荒らしの生気を吸い妓楼に姿を現すと逃げ惑う人の魂を吸った。
妓女も客も同じように叫ぶ声とガシャンガシャンというすさまじい物音が響いていた。
その夜は嵐のような突風の風が万歓楼の中に黒く煙を引き連れていくつも無縁塚から飛び出してきて一斉に中に入ってきた。
黒い煙が飛び交い襲われていく。黒い煙は人にまとわりつき邪気を浴びせたのか通り過ぎた後は生気を吸われて干からびたミイラのようだ。
ひときわ濃い闇のような黒い煙は魂を食い人の影のような姿に形をなし額が赤黒く光る。
首に絡みつき吐かせた血しぶきは一枚一枚花びらで占うように美しい赤い花びらを撒いた上を歩くように裾を引いて歩いているようだった。
謝砂の意識が強い邪気に引っ張られそうになる。
「謝砂、謝砂!」
爛に呼ばれても反応がなかったのか袖を引っ張られた。
はっと意識が飛んでいたのを実感した。白昼夢の中から目覚める感覚はまだ慣れない。
「何か見たのか?」
「ああ。妖丹を持った鬼の仕業で間違いないと思う」
「そうか。殺しているのは妓楼に強い怨念を抱いているが妖丹も得ているなら害は必ず広がる。祓うなら今でないと邪気が強くなると違うものも呼び招いてしまう」
「爛さまがいかれるのですか?」
「うん。柳鳳だけでは無理だろう。柳家の管轄地とはいえあそこは曖昧だ」
「曖昧? 柳家の管轄じゃないの?」
「細かいことを言えば今では管轄しているのが柳家の土地というわけでもない。桃家のもとの仙府よりで柳家から最近譲渡されて桃家と管轄地になったんだ。そして謝家の管轄している土地にも近いから邪鬼が出たら影響は多少なりともあるだろう。曖昧な州だから放置はできない」
相談は爛と姜に任せた。
謝砂を柳鳳が手招きした。
「ちょっと兄さん」
「うん?」
謝砂と柳鳳はすっと後ろを向いて頭を寄せ合う。
口元を隠し聞えないよう字を宙に書き意思の疎通をする。
『兄さん、妓楼に行ってみたくはありませんか?』
『行きたい。でも姜の監視がある』
『一緒に行きますか?』
『連れていけないよ』
『大丈夫です。任せてください。考えがあります』
『その妓楼は害が起きてるんだろ?』
『別の屋敷に出向いていた妓女たちがいます。邪鬼を祓ってしまえばすぐに妓楼は復活しますよ。楽しみませんか?』
『分かった』
『どうすればいい?』
『引き受けてくれたら何とかします』
謝砂は単純に祓ってしまえばいいと思っていた。
「引き受けるよ。えっと謝家にも影響があるんだろ」
「いいのか? 怖いなら無理をしなくても断ってくれていい。桃家の問題に巻き込みたくはない」
「爛も一緒にきてくれるだろ? 一人なんて無理だよ」
「謝砂兄さんが引き受けてくれるというのに爛様は? 兄さんがいるので私と師弟たちをつれて向かったほうがいいですか?」
「私も謝砂と行く」
「やった。ありがとうございます。伝符で宗主に連絡しておきます」
柳鳳は桃家の伝符を飛ばした。




