無縁塚の邪鬼
塵千が蛇妖から魂霊丹を抜き精怪を帳家に送ったあとだった。
少し離れた山の中の無縁塚に男たちが数人いた。
蛇妖を精怪に変えるのに霊力を使い回復に少し時間が必要だった。
始末してしまうか考えながら気配を消して様子をうかがう。
見た目は山賊と言うよりも墓荒らしだった。
まだ腐ってない新しい遺体を探していた。
手には松明を持ち鍬や棒、剣なので土を掘り返していた。
「さっさと見つけて立ち去ろう。近頃はどこにでも鬼がでるという」
「こんな平和な村ではみんな弔われて出やしない。彷徨っている屍ぐらいだろ。何回もあったが狂鬼でないし餓鬼ぐらいは弱すぎて生気を吸われたって死にはしない。匂いがひどいだけだ。口と鼻を布で覆っていたらいい。ここは罪人を捨てる塚ではないし妓女が近いから女や捨てた赤子や子供ばかりだ。恐れるに足らずだ」
「そうだよな。祟りなんて一度もないから仙家だって知らぬふりをしているんだし」
「きちんと弔われてはいる。未練なんて残さずに消えているさ。望んでいるのだから魂は散ってるよ。大昔にここに身投げして死んだという妓女がいる。それから自害した妓女たちは死に場所に選ぶんだ」
「今晩はやけに不気味だ。はやいところ探そう」
「そうだな」
「今回の依頼はなんだった?」
「骸をひとつ用意するんだ。死んだことにして駆け落ちするらしいから大金を詰んでるらしい」
「自害した遺体を埋めたばかりだから簪と腕輪や所持品の金目の物は取っていこう。死んで数日まだ腐食してないし高値になるはずだ。ここには昔名声の高い妓女が埋められてるんだろ。蝶のように舞い花のように散ったという妓女の誇りで無縁塚に埋められるようになったたから妓女たちの骸はここに埋めれれる。どうせなら綺麗なら遺体でも顔を拝んでみたいぐらいだ」
「恨みをかったりはしないのか?」
「死んだ人間に金目の物は必要ないだろ」
ひゅっとした黒い邪気が霧のように地面から出ているが邪気はすごく弱い。
人を捕まえれるぐらいの力もなく夜だから黒く見えるのだという程度で恐れもされていない。
「俺は何度も来てるが悪鬼など見たことがない。ほら!」
「うわぁ。やめてくださいよ兄貴」
一人の男が威張って怖がって怯える新人の肩を掴み脅かしてからかっていた。
邪気を出している根源を探ると塚の奥に呪符がいくつも重ねてはられた場所があった。
屍は朽ちていても強い怨念を抱いた魂が消えていないのが見えた。
だが鬼となっていないのはきちんと弔われていて呪符に押さえつけられているからだ。
塵千は触れずに手から一撃を放ち呪符が燃えて消えた。
封じられた怨念を募らせた邪気が一気に噴き出す。
妖丹を投げると強い怨念に引き寄せられて地面から邪気が渦巻く。
指先で印をつくり操るとすぐに怨念の強い女の魂が邪鬼となり傀儡となった。
「おさえていた怨念を解き放て」
邪鬼は黒い煙となり墓を荒らす男たちに飛んでいく。
松明を持った男の首に煙が巻きつきすぐに魂を吸った。
そして墓を荒らすお琴の目の前に人の姿で現れるとぐっと男の首を手でつかみ絞めた。
尖った爪は首の肉に刺さりそのまま骨を折って殺した。
影響を受けたのか彷徨っていた鬼は次々に墓荒らしに襲い掛かる。
「回復するまでの暇つぶしだったがちょうどいい。では帰るとしよう」
妓楼には毎晩害が起きるようになり絶叫する声が響きわたるようになった。
邪鬼になったのを見届けると塵千は塵家の屋敷に戻った。
帰宅に気づいた塵辰が室を訪ねてくる。
「塵宗主お帰りなさいませ」
「父上霊力が戻ったのですか?」
「蛇妖の魂霊丹だ」
床に書かれた陣の上にのせると魂霊丹が淡い光を放ち砕けるとサラサラの砂に変わる。
砂は塵千に降り注がれて霊力の一部と吸収される。
「蛇妖の魂霊丹で霊力も八割回復した。半年前に発動させた蛇蠱毒魂呪術陣の跳ね返しもなかった。大量の霊力と鼎に集めた大量の妖丹を消耗したがやっと回収できた」
「ですが精怪を駆除されたら蛇魂術も解かれてしまうのでは?」
「魂に刻み込まれた呪詛はすでに発動した陣だ。解かれたとしてもすでに魂に亀裂が入っているはずだ。今の謝家には解ける霊力はない」
「報告があります。塵昌からの連絡で丁家は誰もいないが気にったので自分が丁家荘の門主になりたいと言っています。門弟に片付かせているようですがよろしいでしょうか?」
「いいだろう。あの家ぐらいがちょうどいい」
「帳家からも傘下を抜けて塵家の門弟になりたいとやってきた者たちが大勢いますがどのように?」
「招き入れろ。手数は多いほうがいい」




